本日紹介いたしますのはこちら、「月光条例」第17巻です。
小学館さんの少年サンデーコミックスより刊行、週刊少年サンデーにて連載されています。
作者は藤田和日郎先生。
本作は「藤田和日郎」のテーマにて紹介をまとめておりますので、そちらもあわせてご覧くださいませ。
さて、アラビアンナイトでの戦いも激化の一途をたどる本作。
月光は修行を終え、魔法を引っさげて戦いの場に戻ってきました。
ですがその時、エンゲキブは石化の呪いをかけられてしまっており、月光に触れられていないとどんどん石化が進行して死んでしまうという状況に追い込まれてしまっていたのです!
月光は、エンゲキブが石化仕切る前に全てを終わらせようと飛び立ちました。
その別れ際、月光が帰ってくるまで死なないし石にもならない、と空元気ながら力強い言葉を残してくれたエンゲキブが知りたがっていた、「チルチルが岩崎月光になったわけ」について想い起こします。
たいした話じゃない、と月光は言うその話。
かつてのチルチルが巻き起こした騒動が、一段落したその直後から始まるのです……
「雉も鳴かずば」のお菊も、「マッチ売りの少女」の少女も助けられずじまいで終わってしまったチルチルは、結局誰も救えなかったと涙を零しながら月を眺めていました。
やがてチルチルの体は透明になり、浮き上がり始めます。
これはキャラクターがそれぞれの物語に変える兆候。
気がつけばチルチルは、今まで幾度となく繰り返してきた物語の冒頭シーンへと戻ってきていたのです。
早速、目を覚ました満ちるに第一声を投げかけ、物語を再開しようとしたのですが……
その第一声を発したのは、チルチルではなかったのです!
……いや、チルチルではありました。
まるで自分そのもののような、もう1人のチルチルがミチルの横に座り、物語を当たり前のように進行し始めたのでした!!
物語が混乱するかもしれない。
そんなためらいと、もしかしたら自分よりもミチルと意気があっているかもしれないそのチルチルの呼吸に、チルチルは見入ってしまいました。
やがて物語は、見事なエンディングを迎えます。
もう1人のチルチルは、チルチルから見ると自分よりもずっと立派に「チルチル」をこなしているように見えました。
そういえば、月打された主人公が物語を離れ、主人公不在のまま5日間がたつと物語りそのものが消滅してしまうはず。
それなのにこの「青い鳥」は消滅していない。
つまりはあのチルチルが主人公をこなしていたから、ということになるのです。
本作の読者ならば、「シンデレラ」のときのように何者かが代役をしていたことが推測できるのですが……
チルチルからすれば、「青い鳥」が愛想をつかして代わりの主人公を立ててしまったのだ、と決め付けてしまいます。
誰も助けられなかっただけでなく、物語の主人公ですらなくなってしまった。
父、母、そしてミチル。
大切な家族さえ自分のものではなくなってしまったような感覚を覚え、チルチルはもはや何も言えず、その場を去っていくしかなかったのです。
そのとき、どこからかあのうちでの小槌をふる音が聞こえてきます。
あのお菊と、マッチ売りの少女がかけた願い。
どうかチルチルが、自分自身をいつかきっと助けられますように……
その願いが、チルチルの体を再び透明に変え、いずこかへと運んでいったのです……
気がつけばそこは、「青い鳥」の世界ではありませんでした。
どうやらここは読み手の世界であるようで。
三日月が照らす、夜の線路の上。
そんなところに佇むチルチルに、1人の男が声をかけてきたのです。
それは、黒い外套に黒いハットをかぶった物静かな男性。
あの、ランプの中での月光の修行の際に姿を現した男が!!
そして彼はついえらそうにお説教をしてしまうくせから土地の人にこう呼ばれていると言い出します。
「センセイ」、と……!
自然とそのセンセイの下で、読み手の世界の生活を送ることになったチルチル。
チルチルは素直に自分が「青い鳥」のチルチル本人であると告げるのですが、当然そう簡単に信じるはずもありません。
センセイとともに農業に従事するチルチル。
チルチルは貧しいきこりの息子という出生もあり、時としてセンセイにアドバイスをするくらいしっかりと働いています。
そして、チルチルの体は打ち出の小槌の効果でしょうか、明らかな変化が訪れています。
まだ年若い子供であったはずのチルチルが、十数日のうちに筋骨隆々とした少年の姿へと変じていたのです。
その姿は我々の良く知る岩崎月光そのもの。
チルチルは、センセイが今まであってきたアンデルセンたちと同じような「作者」であることも知ります。
ですがチルチル。、今までのような作者への憎しみはなりを潜めており、なによりこのセンセイは今まであってきたどの作者とも違うムードを持っており。
もはや帰る場所も無いチルチルは、諦めのような感情を瞳に湛えながら、農作業に打ち込む日々を送るのでした。
そんなある日、チルチルの前に露と名乗る女性が姿を現しました。
美しく、ただひたすらに先生を慕っているらしいその女性。
しかし何よりもチルチルの心をざわつかせるのは、その目でした。
何かに疲れきった、自らの希望を諦めたかのようなそのくらい瞳。
チルチルはその瞳を、どこかで見ているような気がして……
ですがセンセイは、その露が尽くしてくれるあれこれを一切受け入れず袖にするばかり。
夜、露に関してセンセイが何かを語ろうとするのですが、その時に話の腰を折るように来客がやってきます。
その話題の的であった露と……鉢かづきが!!
鉢かづきとチルチルは以前戦っているわけですが、チルチルの姿が変わっているためか、鉢かづきはまったく気づきません。
それよりも驚くべきことは、センセイが月光条例の執行者であったと言うことです!
執行者の役目を果たすため、きっと役立つとチルチルを帯同させて家を飛び出すセンセイ。
露も手伝うと申し出たのですが、私を手伝ってくれるものはもう見つかった、とセンセイはまたまた袖にするのです!
露は手伝ってくれるものとして指名されたチルチルを、恨みのこもった瞳で睨みつけてきます。
その瞳を見て、チルチルは理解しました。
どこかで見たことがあるその瞳。
そうだ、露は……かつての自分に似ているのだ、と!
というわけで、センセイとであったチルチル。
前巻で敵のチルチルが言っていた、「読み手のふりをしたキャラクター」だと言うことの意味がわかってきました。
まだまだチルチルが岩崎月光になるにはしばらくの時間がかかりそうですが、何より気になるのは突然姿を現した露の存在でしょう。
謎の多い彼女は何者なのか、そしてセンセイとチルチルにどんなものをもたらすのか?
このセンセイ編のキーパーソンであることは確実のようです!
チルチルが月光に変わるはずのシリーズが開始される、「月光条例」第17巻は好評発売中です!
アラビアンナイト編は一時中断し、過去編が紡がれる本巻。
物語最大の謎であった月光の過去が、徐々に徐々に明かされていくようです!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!