本日紹介いたしますのはこちら、「囚人リク」第1巻です。
秋田書店さん少年チャンピオンコミックスより刊行、週刊少年チャンピオンにて連載されています。
作者は瀬口忍先生。
瀬口先生は、未就学児向けの児童漫画から、「劇画マッドマックス」に掲載されるような骨太の漫画まで執筆されています。
週刊誌&少年誌の連載は初めてのようですが、確かな実力を感じさせてくれる漫画家なのです!
さて、本作は無実の罪で入れられた刑務所からの逃走を計る脱出物となっています。
こういった類の作品にはある程度のテンプレートが欠かせません。
本作はそのテンプレートを踏まえつつ、しっかりと飽きさせない展開を用意しているのです!!
10年前、突如として東京へ落下した隕石。
その隕石は東京に壊滅的なダメージをもたらしました。
ですが人間と言うのはたくましい物で、わずか10年の間にみるみると復興を遂げたのです。
……ごく一部を除いて、ですが。
そのごく一部にすんでいる少年、リク。
リクの住んでいるスラム街は、院政期落下後に多発する犯罪を巨大な壁で囲むことによって一点に封じ込めた……いわば掃き溜めのようなところです。
その日の食べ物にも困るような貧しい土地で、日常のように引ったくりなんかが起こる治安。
劣悪な環境の中でも、リクはめげずにまっすぐ成長してました。
それもすべて、幼い頃から面倒を見てくれた交番のおじさんのおかげと言っても過言ではありません。
警察ですら市民の味方とは言いづらいこのスラム街。
そんななかでおじさんはリクのまっすぐな性格を信頼し、自分の警察と言う立場を省みず、まるで親のようにいつも味方をしてくれていたのです。
その日も街のいざこざから、おじさんによって救われた形となったリク。
感謝はしながらも、リクのご機嫌はちょっぴり斜めです。
なぜなら、誕生日にケーキをたべさせてもらうという約束を交わしていたにも関わらず、リクの誕生日である昨日はなにごともなく過ぎ去ってしまっていたからです。
おじさんは今日だと勘違いしていたんだと弁解するのですが……
なにせそこから始まったのが3歳の頃のリクはよくウンチもらしてたなんていう昔話なんですから信じることなんかできません。
挙句の果てに、この街ももうじき良くなる!という未来の希望を語ってお話が終わってしまったんですから、陸にとっては溜まったもんじゃないのです。
もうケーキなんかいらない、おじさんのうそつき!そういい残して交番を駆け出していってしまうのでした。
リクが走り出して行ったその入れ代わり、交番を訪ねてくる人影があります。
見るからに危険な香りを漂わせる、眼光の鋭い男。
何も言わずズカズカと交番に入り込んできたかと思うと、男はひとつのマイクロチップを見せつけながら「やってくれたな」とつぶやきます。
そのマイクロチップは、おじさんが新聞社にリークした情報がつまっているチップ。
そしてその情報とは、目の前にいるこの男が、このスラム街で密売した銃器の記録です。
その他にも麻薬製造密売、臓器売買など悪辣きわまる所業を重ねているらしいこの男、鬼道院。
彼はどうもただならぬ権力を持っているようで、おじさんがリークした新聞社とも通じており、未然に自分に不利になる情報を握りつぶしてしまっていたのです。
更にこの鬼道院、すさまじいのはその権力だけではありません。
もみ消すことができたとはいえ、自分の悪行の証拠にまでたどり着いた男。
その存在を許さない冷酷さと、それを実行する武力も持っていたのです!!
特殊部隊のような屈強な男達に取り押さえられ、銃を突きつけられてしまうおじさん。
鬼道院は用心深くもあり、おじさんに協力者がいないかを吐かせてから消すつもりのようです。
おじさんは自分ひとりでやったのだと言い張るのですが、鬼道院は念には念とばかりにしつこく尋問を続けます。
すると何と言うことでしょう、リクが交番に戻ってきてしまったではありませんか!
交番のヘルメットをかぶったまま出てきてしまったリクが、それを返しに戻ってきてしまったのです!!
いち早く陸の存在に気がついたおじさんは、見つからないうちに逃げろ!……と心の中で願うしかありません。
リクはと言うと……銃を構えた怪しげな男達に恐怖は感じつつも、持ち前の正義感でなんとかおじさんを助けようとしていました!
それでもその恐怖から、最後の一歩が踏み出せないでいるリク。
おじさんの机の下に隠れていたのですが、そこに自分のための誕生日ケーキが置いてあるのを見つけてしまいました!
おじさんをうそつき呼ばわりしてしまった先ほどのやり取りを脳裏によみがえらせるリク。
ですが感傷にひたっている暇はありません、
鬼道院がリクを見つけてしまったのです!
顔を見られたなと銃を突きつけられるリク。
ですがそこでおじさんが立ち上がり、その子から離れろと逆に銃を突きつけたました!
間髪いれず向き直り、おじさんの腹を打ち抜く鬼道院。
そのまま倒れこむおじさんの頭に銃口を押し付け、いよいよその命を奪おうと言うつもりのようです。
そこでついにリクは奮い立ちます!
先ほど拾った銃を構え、おじさんから離れろと叫ぶリク。
そしてそのまま銃弾は発射したのです!!
しかし残念ながらその銃弾は鬼道院の腹と顔をかすめただけ。
決定打にはならないどころか、怒りの導火線に火をつける結果に終わってしまうのです。
鬼道院はリクを蹴り飛ばした後、銃をしまいこみこういいます。
貴様が死ぬには一発では足りない。
いずれ殺してくれていたほうが良かったと思うほどの、特別な絶望を用意する、と……
おじさんは明日を信じて生きろと言う言葉を残し、この世から去りました。
そしてその死はスラム街の少年……リクによる凶行と言うことにされてしまいます。
それもそのはず、なんと鬼道院は
警視総監!!
その立場に加え、現場がスラム街であるなら事件のでっち上げなどたやすいことなのです!
程なくして捕らえられ、「超絶望」とまで言われる「極楽島特級刑務所」に収監されるリク。
一度は絶海の孤島にある堅牢な監獄で絶望にくれてしまいます。
ですがそこで憎き鬼道院が警視総監であることを知り、ぶん殴ってやらなければ気がすまないと闘志をみなぎらせるのです!
おじさんの思いを拳に乗せて届けるため、脱獄する決意を固めたリク。
ですがその道のりは考えただけでも気の遠くなる長く険しいものです。
最初に彼の前に立ちはだかるのは、リクが配属される工場のリーダー格であり、看守にも顔の効くこわもての大男、レノマです!
脱獄どころか、仕事場でも自分の部屋ですら安心できない状況に追い込まれるリク。
果たして遠すぎる目標を達成することはできるのでしょうか!?
というわけで、大きすぎる敵との孤独な闘いに挑むこととなったリク。
真っ当に過ごせば刑期は30年と言う重大な罪を着せられてしまい、挙句に罪状は警官殺しと看守にまでにらまれる絶望的な状態から始まる本作。
トップが腐りきっていると言う状態からして、リクができるのはおそらく徐々に囚人達を仲間にしていき、集団で行動を起こすことでしょう。
しかしリクはそういうことを考えるたちではありませんから、とにかくその時点でできることをするだけです。
ですがそのまっすぐな性格が囚人達の心に影響を与えることも考えられます。
リクの行動がどれだけの人物をひきつけられるのか?
物語はそこがかぎとなるのは間違いないでしょう!
そのようにある程度筋道が決まってしまうきらいのある脱出物。
確かにある程度その予想通りに物事は進んでいくわけですが、それでも面白いのがこの作品です。
ある種の王道的展開で進みながら、それでも熱中させてくれる正統的な熱さがこめられていまして、その熱によってぐいぐい物語に引き込まれてしまうこと間違いなし!
リクならきっとこういう行動に出てくれるだろうと期待し、その期待にこたえてくれる。
そんな楽しさがたっぷりと堪能できるのです!!
絶望からの脱出劇、「囚人リク」第1巻は好評発売中です!
絵柄は泥臭い感じで、今風とは言いがたい本作。
ですがこれでなくてはいけない、必死の物語がつむがれています!
アンケート1位は伊達じゃないそのストーリーは、きっとあなたものめりこめますよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!