本日紹介いたしますのはこちら、「まじめな時間」第1巻です。
講談社さんのアフタヌーンKCより刊行、アフタヌーンにて連載されています。
作者は清家雪子先生。
清家先生は00年に銀峰瑞穂名義で四季賞大賞を受賞し、デビュー。
その後10年に現在の名前に改名し、「秒速5センチメートル」のコミック版の連載をした後、12年より本作の連載を開始しました。
さて、本作は死後の世界について描いた作品になっています。
とはいっても単純な天国なり地獄なりといった異世界の話ではありません。
独特のアプローチで新たな死者の形を描く作品なのです!
路上で目を覚ます女子高生、一紗(かずさ)。
彼女の視界の端に、衝撃的なものが飛び込んできました。
地面に横たわり、頭から大量の血を流している……自分が!
状況が理解できないまま立ち尽くしていると、空に浮かんでいるおじさんが声をかけてきました。
キミ、死んじゃったんだよ。
受け入れ難いその言葉ですが、周りで騒いでいる野次馬も「あの子は携帯を身ながら横断歩道を歩いていた」「わたり終えるころドーンとはねられた」と会話しており……
そのはねられた衝撃で吹っ飛ばされ、頭を電柱に強く打ち付けてしまったようで。
頭の中身まで地面に飛び散ってしまっていまして……どう見ても即死です。
ですがそんな決定的とも言える証拠を突きつけられても、自分が死んでしまったなんて事実が簡単に受け入れられるはずがありません。
頭の中を必死に整理していると、なんと一紗の体を当たり前のように周りの人々がすり抜けて歩いていくではないですか!!
さらに先ほど話しかけてきたおじさんがアドバイスするとおりに落ち着いて周りを見てみると……
そこかしこに自分と同じ、いわゆる幽霊になった死者達が漂っているではないですか!!
しかも皆さんお亡くなりになっていることもありまして、一紗の死をそれほど悼んだりするでもなく、苦しまないですむ即死でよかった、なかなか出来ないことだなんて会話をしておりまして。
現実館の薄すぎる度重なる出来事に、一紗はイマイチ実感が湧かないのでした。
そんな一紗のすぐ近くには、結果として一紗を殺してしまった車の運転手がへたり込んでいました。
ですがその運転手も幽霊になってしまっています。
しかもこの事故の衝撃で死んだわけではなく、運転中に心臓発作か何かを起こして急死してしまい、コントロールを失った車が一紗を轢いてしまった、と言う流れだったようで。
運が悪かった、としか言いようのない不幸な事故……
一紗の心境は、複雑と言う言葉では表せないほど複雑で……
病院で、自身の死を確認する家族達の姿を見て、自分が死んだことをようやく確かに実感するのです。
自宅の屋根の上で、膝を抱え込んでふさぎこむ一紗。
そこにあのおじさんに連れられた運転手がやってきて、すみませんでしたとあやまってきたのです。
ですがこの運転手さんも運悪く死んでしまっていたわけで、彼が悪いわけではないことは一紗もわかっています。
どうしてもそのいらいらは抑えきれず、大きな声を出してはしまうものの、その怒りを完全にぶつけることは出来ないのです……
そんな時、5年ほど前に死んでしまったとなりの家のおばあちゃんがその姿を現しました。
そのおばあちゃんは、なにやらひかってます。
何でも死んでからしばらくすると、幽霊はだんだん現世への執着が薄れて消えてしまうんだそうで。
その消える直前になると、光を放ち始めるとのことで、そのひかりが幽霊達には心地よく感じられるのだとか。
幽霊が光を放ち、消えて言った後どうなるかはわかりませんが……
ともかく、幽霊もいつまでもこの世に張り付いていられると言うわけではないようです。
やがて、一紗は自分の葬式を見ることとなります。
身近なものが死んだと言う経験の薄いクラスメイト達は、悲しんで泣いてくれたりもするものの、比較的すぐ立ち直って日常に戻っていってしまうのです。
そんな光景に寂しさを感じざるを得ないものの、これはこういうものだと受け入れるしかないようで……
またまた一紗は複雑な心境に陥るのです。
そんな中、一紗は付き合ってこそいなかったものの、自分と好きあっていた光晴の様子をのぞき始めます。
他のみんなよりは自分のことを悼んでくれている様子の光晴を見て、何で早く告白しなかったのか、と後悔の念が募るのです。
そしてそのあと、一紗はおじさんに「黒い影のようなものが集まって見える場所には近づくな」と言うようなアドバイスだけ受けて日常を過ごします。
その黒い影はいわゆる怨霊のようなもので、現世に負の感情を抱いていたものが強い憎のカタマリのような存在に変貌。
そういった怨霊同士が集まって、よりよくない場所になってしまうんだそうです。
おじさんは、新入りの幽霊さんたちがこういった怨霊になって欲しくない一心で世話を焼いてくれているのでした。
そんなアドバイスを守りながら、生前の習慣をなぞるように日常を過ごしていく一紗。
ところがそんなあるとき、一紗はショッキングな現実に直面してしまうのです。
実は好きあっていると思っていた光晴は、一紗のことを親しい友達としか思っていなかったようで……
本当は別のクラスの蘭子と言う女子に思いを寄せていたのです!!
その事実を知ってたまらなくなってしまった一紗は、その蘭子の様子を確認しに行きました。
見てみればその蘭子さん、美人だわ優しいわ、ピアノの腕前はグンバツだわとそりゃもうステキすぎる子でして。
言いようのない嫉妬に駆られた一紗は、敵意むき出しにしまくりで彼女を睨みつけるのです!!
するとどうでしょう。
今まで誰一人知覚することのなかった自分の存在を、蘭子は感じ取ったようなのです!!
求めてやまなかった自分のことを感じ取れる生者が、あろうことか恋敵(一方的ですが!)。
この事実が、一紗の幽霊ライフをどう左右するのでしょうか……?
と言うわけで、死んだ人が成仏するまでのお話を描く本作。
本作独自の設定が多く目を引く作品となっています。
今回紹介しなかった部分でも見所は多数存在。
突然亡くなってしまった一紗、残された家族達の悲しみ。
そんな悲しみをすぐ近くで見つめながら、その気持ちもいずれは消えてしまうんじゃないかと苦悩する一紗、と言った家族にまつわるドラマ。
近寄るべきではないとされている怨霊ですが、その中でも群れずに1人で引きこもって怨霊をやっている、通称タマちゃんとの交流。
何かとアドバイスしてくれるおじさんの過去。
そして、近づいてくるタイムリミット……!
様々な要素が物語を形作り、一つの大きな流れを作り出していくのです!
幽霊の日常を描く、「まじめな時間」第1巻は全国書店にて発売中です。
ただ見ていることしかできない幽霊として、一紗はどう動くのか。
運転手さんの心情などの要素もふくめ、これからの展開に目が放せません!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
コメント
コメント一覧 (2)
初めまして
たまに覗かせていただいています。
レビューが面白い!
読みやすい。
文章に引き込まれます。
私は、
自分の考えや気持ちを
文章にするのが下手くそです
書くコツはありますか?
星の数ある、
コミックの中でレビューをされている
コミックは
どんな基準で選んでいるのか気になります。
『まじめな時間』のレビューを読ませていただきました。
レビューがなければ
コミックに出会う事も
読みたいとも思う事も
なかったです。
一紗は死んでるのに
いつもの日常を過ごしてしまうのは切ないですね
そもそもこのブログをはじめた動機の一つが「文章力を付けたい」と言うものでしたので、どうやれば文章がうまくなれるのかと言う質問にはなかなか明確な答えが用意できません!
とりあえず、あまり同じ文末を連続させないようにはしていますが……
レビューする漫画の基準も、なんとなく面白そうだと思ったコミックを買って見てレビューしているだけですので……
下手な鉄砲も数打てばなんとやらと言うやつなんです!
こんないい加減な返事にもあきれず、よろしければまた当サイトを覗いてやってくださいね!