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本日紹介いたしますのはこちら、「藤子・F・不二雄大全集 中年スーパーマン左江内氏/未来の想い出」です。
小学館さんより刊行されました。

好評刊行中の本大全集は、「藤子・F・不二雄」のテーマにて紹介をまとめております。
他作品の紹介にもご興味がございましたら、ご一緒にご覧くださいませ。

さて、本作は77~78年に「週刊漫画アクション」にて連載した「中年スーパーマン左江内氏」、91年に「ビッグコミック」にて連載された「未来の想い出」、2作を収録しています。
F先生としては非常に珍しい、青年誌での連載作品を、一気読みできる贅沢な一冊なのです!
で、今回は「左江内氏」にスポットを当てて紹介したいと思います。

週末、とある会社でのみにも遊びにも行かず、まっしぐらに帰宅する人物がいました。
係長を務める左江内です。
土曜の夜は何を言ってもまっしぐらに帰宅、そしてどんなときでも基本的に部下を飲みに誘ったりしない。
誰しもがそんな左江内の人となりを知っていまして、帰宅を急ぐ彼に何も言わず見送るばかり。
左江内はまわりの諦めめいた視線には一切気がつかず、まっすぐ帰るのですが……
なぜか帰宅している道々で、同じ人物と何度も何度もすれ違うのです。
しかも最初は社内ですれ違ったのに、電車に揺られて帰り着いた駅にも、果ては自宅のすぐ近くにもいるのですから驚くしかありません!
とうとう最後には左江内も我慢できず、その男に質問を投げかけます。
ところがその言葉を待っていたかのように、男の方から左江内をつけていた理由を言い出すではないですか!
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自分はスーパーマンだ。そして、左江内をスーパーマンにするため付け回してるんだ、と!!
もちろんそんな言葉を信じられるわけもありません。
ですがその男もその反応は予想済み。
駅前で一杯やりながら話しません?と食い下がってくるのですが、左江内は土曜日はまっすぐ帰ると決めているんだそうで。
男を無視して帰宅するのです。
が、自宅はもぬけの殻。
何でも義母が突然来たようで、奥さんは家に鍵をして買い物だか食事だかに出て行った様子。
しかも家の鍵を置いていき忘れている上、子供たちも遅くなるとか。
家に入ることも出来ず、やむなく先ほどの男とでも飲んで時間を潰すことにしたのでした。

男は愚痴り始めました。
亭主なんて今みたいにぞんざいに扱われるもんだ。
自分はスーパーマンの仕事にかまけすぎて本業がおろそかになり、かみさんに逃げられてしまった。
そのスーパーマンの仕事も、縁の下の力持ちに過ぎず、誰かに褒められたりもてはやされたりすることなんてナイ。
隙でなきゃできない仕事だが、年だしそろそろ引退したい……
そんな心境から、次代のスーパーマンを探しており、そこで左江内に白羽の矢が立てられたんだそうです。
とは言え左江内も宮仕えの身。
スーパーマンにかまけて首になっても困るというものです。
ですが男はなおも続けます。
スーパーマンが一人で頑張ってもこの世の悪が根絶できるはずはない。
昼休みとかトイレのついでとか、空いた時間で出来る範囲でやればいいんだよ、と。
そして男は一枚のハンカチを取り出しました。
ですがそのハンカチ、
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パッと広げてみればあのスーパーマンが着ているタイツ&マントに早変わりするのです!
スーパーマンの正体は秘密なのに、そんなにいろいろ話したり見せたりしてもいいの?と店のおやっさんまで参加して話は盛り上がりますが、所詮は酒の席。
冗談としか思ってないだろ?と男は語り……事実、そのまま冗談として受け止めつつ、左江内は別れて帰宅するのでした。

家に帰ると、奥さんは左江内にご飯食べてこなかったのかとぶつくさ。
長男のもや夫は夜中にもかかわらず大音量で音楽鑑賞、と、左江内にはいまひとつ面白くない環境が待ち構えています。
長女のはね子はというと、もう遅いのにまだ帰っていないようです。
女の子がこんな遅くまで!と怒りつつも、心配になった左江内は娘を迎えに行くことに。
すると先ほどの男が現われ、急いだ方がいいといつも娘が通る道とは違う道に案内をし始めます。
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遅いからと近道したのがまずかったんだと導いた先には、バイクに乗った男に強引に連れて行かれてしまいそうになっているはね子の姿が!
慌てて左江内が飛び掛りますが、敢え無く返り討ちに……
息も絶え絶えになりながら、誰か娘をと助けを求める左江内。
するとその顔を例の男が見下ろし、スーパーマンになりたいか?と問いかけてくるではないですか!
ここで断る人などそうはいないでしょう。
男の差し出すスーパーマンの服に身を包むと、左江内はなんと空に浮かび上がります!!
戸惑いはするものの、今は娘を助ける方が先。
男のバイクの行く先に先回りし……
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パンチ一閃!!
その一撃でバイクはばらばら、はね子は無傷で助かるのでした!!

はね子は無事家に逃げ帰ったそうで。
これで娘は親父を見直すかな?と笑う左江内ですが、このスーツからはなんか知らない光線が出ていて、スーパーマン関連の記憶を消してしまうんだとか。
残念ではありますが、男の先代からそう伝えられており、これはそういうものと諦めるしかないようです。
男との別れ際、左江内はどうしても自分がスーパーマンに選ばれた基準が知りたくなってしまい、思い切ってたずねてみました。
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「最大公約数的常識家」。
「力を持っても大それた悪事の出来ない小心さ」。
「ちょっと見、パッとしない目立たなさ」。
その三条件が、これまた先代から伝えられたものなんだそうで……
結局のところ、自分がどうと言うことのない人だと言うことで選ばれたと言うことで。
なんだか狐につままれたような面持ちで家に帰ると、家では娘が暴漢から逃げてきた話題で持ちきりでした。
ですがその内容は、バイクが電柱にぶつかって事故り、それで帰ってきたんだと言う記憶に改ざんされておりました。
あのことは夢だったんじゃあるまいか?
そう思い悩んでも、朝目が覚めたら枕元に例の変身スーツがあるわけで。
信じられないなぁと考えていると、奥さんがまだ寝てたの?会社は?と声をかけてきました。
日曜ではありますが、どうやら左江内は今日出勤だったようで……
今から電車に乗っていては到底出勤に間に合いません!
頭を抱えた末、左江内は
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スーパーマンスーツに身を包み、超人力を私用に使うことにいいわけをしながら会社に向かうのでしたとさ……

というわけで、突然スーパーマンになってしまった左江内の日常を描く本作。
完全に縁の下の力持ちであるスーパーマンになり、いまひとつパッとしない日常にくわえ、いつでもかかる呼び出しに煩わされながら頑張るおじさんの活躍が描かれています。
大事件もあるにはあるものの、基本的には周りの小さな出来事を解決していくのですが、スーパーマンの活動だけでなく、会社の方でもいろいろいざこざも絶えませんで。
左江内は様々なことに頭を悩ませ、苦悩しながらも日常に、非日常に頑張っていくのです!
そんなストーリーも十分以上に面白いのですが、やはりびっくり仰天するのはその際周回ではないでしょうか。
思いもよらないゲストキャラが登場し、左江内を思いも寄らない方向に導くことに!!
びっくり仰天の最終回は、必見と言う他ありません!!

そして同時収録の「未来の想い出」もかなりの面白さです。
かつて大ヒット作を生み出したものの、今はすっかり落ち目の漫画家が主人公が送る日常、と言った雰囲気で物語は始まるのですが、あることがきっかけで物語は彼の過去にさかのぼります。
若き漫画家の奮闘を描く物語になるのか?と思いきや、またまた物語は違う方向に!
二転三転する物語構成に、読者は引き込まれること必至でしょう!
そしてこちらもそんなストーリー展開はもちろんのこと、興味深い点が他にもあるのです。
なんと言ってもこちらの目玉は、F先生の実体験も多分にあろう、70年代、80年代の漫画家たちの生活風景ではないでしょうか!
貧しくも充実していた漫画家たちの、楽しく、切ない日常。
そんな毎日にくわえ、物語に用意された大きな仕掛け、そしてリアリティを感じさせる数々の描写。
F先生ファンならずとも、引き込まれざるを得ない物語になっているのです!!

珍しい、F先生による青年誌連載作品が2作収録された「藤子・F・不二雄大全集 中年スーパーマン左江内氏/未来の想い出」は全国書店にて発売中です!
F先生の児童漫画とは一味違う、大人の生活の寂しさと楽しさを描いた作品を収録した本作。
児童漫画も大変よろしいのですが、いつもと違うF先生が味わえる本作も是非体験していただきたいところです!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!