画像

本日紹介いたしますのはこちら、「グラゼニ」第3巻です。
講談社さんのモーニングKCより刊行、モーニングにて連載されています。

作者は原作が森高夕次先生、漫画がアダチケイジ先生。
本作のほか、森高先生ことコージィ城倉先生の作品は、「コージィ城倉」のテーマにてまとめております。
よろしければ併せてご覧くださいませ。

さて、年俸1800万円の中継ぎと言う、微妙なポジションで頑張る凡田。
自分以外のプロ野球選手の年俸をほぼ覚えており、自分より年俸の低い相手や、話にならないほど高い相手に対してはいい勝負が出来るものの、自分より適度に(?)年俸が大会相手にはめっぽう弱い……と言う特徴を持っています。
いつに軍に降格を命ぜられても、不慮の事故で引退を余儀なくされてもおかしくない厳しい世界を、今日も凡田は必死に泳ぎ抜くのです!!

夕暮れの町を一人歩く凡田。
お目当ては大衆定食屋、「キッチン味平」。
夜の12時までやっているありがたい店で、遅い時間にたずねても客の途切れることの無い人気店なのです。
スタンダードな定食と言うやつは一通り揃っており、そのどれもがなかなかの味を誇っているのですが、凡田が最近お気に入りなのはコレ、から揚げチャーハン。
特にこそこそともせずに席に座り、堂々と注文をしても店内に反応はありません。
回りは男性客ばかりだというのにこの反応……誰も気がついていないだけなのか、はたまた有名人を見たからと言って騒がないスマートさを持った客ぞろいなのか、あるいは凡田の顔なんて誰も知らないのか。
ともかく、このお店は凡田にとって居心地のいい空間になっているのです。

やがて運ばれてくる唐揚げチャーハン。
画像

唐揚げ六つにしっかり盛られたチャーハン、そして中華スープにザーサイが付いてくるボリューミーな1品です。
肉汁多目の唐揚げを口に入れてから、チャーハンを蓮華に山盛りいっぱい頬張る。
一見すればあぶらっぽそうなこの組み合わせですが、なぜかこの組み合わせが最高に合うのだそうで。
かつての凡田もこの組み合わせが合うのか疑問だったようで、ごく当たり前の唐揚げ定食を頼んでいたそうなのですが、一度食べてみたらもうすっかりこの唐揚げ×チャーハンの組み合わせにメロメロになってしまったのでした。

そんな至福の時を彩るのは、店内に垂れ流されているニュースです。
流れてきたのは、他球団の年俸1.5億円を誇る花形選手と、女性タレントとの結婚を報じるもの。
凡田には関係の無いお話ではありますが、華々しいプロ野球界でも芸能人との結婚はひときわ目立つ話題です。
凡田が所属するスパイダースで華々しい結婚と言えば、年俸2億のエース、椎名。
奥さんは元女子アナ、住まいは港区の超高級マンション……と、非の打ち所のない華やかっぷりです!
他には1億強の年俸で、ファッションモデルと結婚した野手、5000万弱の年俸でCAと結婚した投手……と、華々しいプロ野球界にふさわしい結婚をした選手は枚挙に暇がありません。
ただ、やはりこうやって見ると高年俸の選手であればあるほど比較的派手な結婚をする傾向があるように見えます。
そうなってくるとやはり気になるのは、今年26で年俸は1800万、と言う自分の結婚でしょう。
何歳まで現役を続けられるのかもわからない現状、そしてトレーニング用具の購入なんかの雑費や、それなりの収入があるからとそれなりの飲食なんかをしているお金を差し引くとたっぷり貯金できるほどでは無い年収。
老後のことも考えた貯金が出来るのは年俸4000万超えたあたりから、と凡田は考えます。
とはいえ今年は今までの年に比べると大分活躍していることでしょうし、このまま行けば年俸は3000万を超えるかもしれません。
ですがもし明日怪我をしてシーズンを棒に振ってしまえば、おそらく逆に給料ダウンしてしまうことでしょう。
そんな世界ですから、よほどタフで野球がうまく無いとおよめさんも安心してこられないよなぁ……と凡田は半ば諦めに近い境地に達してしまっているのです。

そんな凡田ですが、実は目をつけている女性がいます。
この定食屋にいる従業員の女性、ユキちゃん。
画像

派手な結婚とはかけ離れた地味な獲物ですが、一般人レベルで見れば地味なんてとんでもない美人さんの彼女。
ですがだからと言って競争率が低いわけではありません。
ちょっと関西なまりがあり、大学を出た後料理の専門学校に通っていると言う彼女、その見た目だけでなく、さっぱりとした性格もまた魅力的でして……
画像

来店していたサラリーマンの集団客なんかにも声をかけられている、狭き門だったりするのです。
ですが、その声をかけられている、サラリーマンのお誘いは思いもよらない展開になりました。
画像

なんと、彼女のあまり良く知らないなりにひいきの球団と、スパイダースの試合を見に行くということになったのです!!
野球の話になったというのにお店の人は誰一人として凡田には気がつかない……と言う悲しい事実の判明はともかくとして、その彼女が観戦に来た日。
あろうことか彼女、凡田がグランウンド内で一番長くいるとも言える場所、ブルペンのすぐ傍の席に座っているではありませんか!!
画像

流石に地味な凡田といえど、この近距離で投げれば正体がばれてもおかしくありません。
顔バレした後、出番が来たらどうなるでしょう。
打たれてしまえば情けない男として見られてしまうかもしれませんし、何より食い扶持に直接響きかねません。
そしてもしバッチリ抑えちゃったりなんかしたら、知識は薄いなりにしっかりした相手球団ファンであるユキちゃんに嫌われてしまうかもしれないじゃないですか!!
凡田のおよめさん候補(?)ユキちゃん。
そのまだ始まる予感すらない恋の行方は、いかなる結末を迎えるのでしょうか!?

と言うわけで、現実世界でも話題に事欠かない、プロ野球選手の結婚をモチーフにしたお話を収録した今巻。
プロ野球を題材にした漫画は数あれど、ここまで試合とは関係無い部分を生々しく掘り下げた漫画はないかもしれません!
目立たないポジションにいるプロ選手の、目立たないなりの打算。
そんな様子がいやみなく描かれており、すんなり楽しめる内容になっているのです!
この他にもそんな独自の視点で描かれたお話が盛りだくさん。
引退後バッティングピッチャー兼スコアラーになった先輩投手から是か非か判断できないアドバイスをされてしまう話、高校野球で脚光を浴びた大物2人が高卒と大卒別々のタイミングでプロ入りする話、14年間も中継ぎを勤めてきた中継ぎ界のビッグネームの生き抜き方……と、どれもが本作ならではのお話となっているのです!!

地味な選手の必死な毎日を描く、「グラゼニ」第3巻は全国書店にて発売中です!
今までに無い野球漫画と呼ぶにふさわしい本作。
次巻予告では、どうも凡田に大きな転機が訪れるような展開を予感させる内容が記されていまして。
今まで無かった大きな動きもあるかもしれませんよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


グラゼニ(3) (モーニング KC)
講談社
2011-12-22
アダチ ケイジ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by グラゼニ(3) (モーニング KC) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル