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本日紹介いたしますのはこちら、「藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編」第1巻です。
小学館さんより刊行されています。

100巻に向けて着々と刊行されている本大全集は、「藤子・F・不二雄」のテーマに紹介をまとめておりますので、よろしければご覧くださいませ。

さて、本作は69年から74年にかけてビッグコミック誌およびその増刊に掲載された青年向けの短編を集めた作品集です。
「ドラえもん」「オバQ」など、学年誌等に掲載される児童漫画で名を馳せているF先生ではありますが、その児童向け作品でもハッとさせられるネタやギャグなどを見せてくれることも多いわけで。
読みきりでもその素晴らしいアイデアや演出を存分に見せつけてくれるのです!!

17編もの短編が収録されている本作。
F先生初の青年向け読み切り作品にして、名作の呼び声も高い「ミノタウロスの皿」。
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アレから十五年後、懐かしくも寂しい再会を描く「劇画・オバQ」。
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あの小池さんが突然スーパーマンになるものの、ままならない世の中にストレスを感じまくってしまう「カイケツ小池さん」
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などなど、どれをとっても注目せざるを得ない短編ばかりです。
そんな中今回紹介したいのは、「アチタが見える」と言う短編。
本作は今まで「藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版」第1巻にしか単行本には収録されていなかったようで、やや珍しい作品となっています!

いいお天気のある日。
チコちゃんは出し抜けに傘を三本抱え、お外へと走っていきました。
パパをお迎えに行くとのことですが、それを見たお母さんはいい天気だから傘なんていらないよと止めようとするのですが、チコちゃんは一切かまわずそのままかけていってしまいます。
するとその道中、雨が降り出してきました!
ちょうどパパが利用しているバス停に着いたとき、雨は本降りになってきて、パパも到着したバスから降りてきたところ。
しかもその後ろには、パパの会社の同僚である五十嵐さんもおりまして……彼もどうやらチコちゃんちに来るようなのです!
雨も降っていない中、傘を三本もって家を出たチコちゃん。
傘だけなら天気予報を見たとかで説明もつこうと言うものですが、いきなりやってきた五十嵐の分まで持ってきたと言うのはあまりにも不思議。
お母さんはその事実に驚きを隠せません。
なぜならば、その不思議は今回に限ったことではないのですから!

時々あるという、チコちゃんの「見えた」お話。
山登りに行こうと言うお父さんに浮き輪をもって行けとせがんだその時は、パパが川でおぼれそうに。
赤ちゃんころ、お気に入りのおもちゃを抱えて放さなくなったと思ったら、その夜そのおもちゃをパパがふんづけてしまった。
そんなことがちょくちょくあるようなのです。
そういうオカルトっぽい話に興味があるらしい五十嵐は、チコには予知能力があるんじゃないかと大盛り上がり。
霊感占いの看板を出してみたら?とか、競馬に連れて行こうか?とか、株なんかを買う時に……とか、勝手に盛り上がるお母さんと五十嵐。
そんな二人を冷ややかに見つめていたお父さん、結構いい時間になってきていたのに気がついて、お絵かきに夢中なチコちゃんにそろそろ寝なさいと語り掛けました。
その言葉を聞いて、五十嵐もすっかりお邪魔しちゃってと帰り支度をするのですが、帰り際に覗き込んだチコちゃんのお絵描きの内容が
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五十嵐自身が車に轢かれている絵だったからたまりません!!
チコちゃんも楽しげに「それおじちゃんよ!車とドカーン!」と言うのですからもう確定。
五十嵐はすっかり青ざめて家に帰るのでした。

その翌日、五十嵐は会社を休みます。
心配になったお父さんは五十嵐の家を訪ねるのですが、休暇がたまってたから使っただけさ、と明るく出迎えてくれました。
ですが、外に出歩かなければ惹かれないだろう、と冗談めかして吹いたりもして……気になってはいるようです。
確かに五十嵐さんちの前の道路は車どおりが多いようで、あの予知も結構現実味を感じさせてしまっています。
気にするなといっていたお父さんもなんだかんだその予知を信じているところがあったようで、チコちゃんの言うとおり宝くじを買っていたり、ママはすっかりその気で五十嵐のつてで取材に来ると言う新聞社の依頼を受けて見たりもしていました。
やはりみんなチコちゃんの予知が気になってしまっているようです。

翌日も五十嵐は仕事を休みました。
たずねてみれば、こだわっているわけじゃないと言う五十嵐の顔は明らかにやつれています。
このままじゃよくないと感じたお父さんは、チコに直接あの予知の場面なんかを詳しく聞こうと決心。
帰り道の途中でチコちゃんと出会い、そのことを詳しく聞こうとするのですが、出てくるのは「見た」「嘘じゃない」「おじちゃんが血だらけ」と言ったようなそれはもう絶望的な情報ばかり。
思わずエキサイトして声を荒げてしまい、チコちゃんは泣いてしまいました。
そこにタイミングよく通りがかったのは、例の新聞記者の人。
彼はオカルト肯定派じゃない、ありのままに記事を書くよとはっきり宣言して取材に取り掛かってくるのでした。

記者は政治のこととか、社会情勢のこととかを予知してもらおうとするのですが……チコちゃんはぽかんとするばかり。
子供にそんなこと聞いてもしょうがない、と身近な質問をすることに切り替え、記者は「チコちゃんのパパとママはこれからどうなる?」と聞いてみたのです。
五十嵐のこともありまして、お父さんは血相変えてその質問は余計なお世話だと怒ります。
チコちゃんは何か見えるが良くわからない、とのことで。
聞きたくないと言うお父さんは置いておいて、記者は自分にだけその事実を耳打ちさせました。
するとどうでしょう。
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記者の顔は見る見ると青くなり、どうしたと聞くお父さんに、何でもありませんと言い残してそそくさと帰っていってしまうではないですか!!

そのことを聞きたくても、信じないと公言しているお父さんは五十嵐のことも脳裏によぎるのでしょう。
あえて聞かないことにしました。
ですがそこへお母さんが飛び込んできて、宝くじが当たったと大喜びしたのです!
さらにテレビでは、五十嵐の家にダンプが飛び込んできて、五十嵐は会社を休んで自宅に居たため轢かれてしまった、と言うニュースが流れていて……!!
総毛立つお父さんとお母さん。
チコが予知しなければダンプに轢かれなかったんじゃないか?とお父さんは考えます。
お母さんはそれじゃチコが殺したみたいだ、五十嵐の轢かれる運命は、予知を見ることも織り込み済みの運命だったんだとフォローするのですが……
ともかく同僚としては、とりあえず五十嵐の容態なんかを確認しに行かなければいけないところ。
慌てて着替え、家を飛び出ようとしたその時にチコちゃんはまた一枚のお絵かきした紙を見せてくれたのです。
「これがパパとママよ!」。
そう言って差し出されたそのお絵かきに描かれていたのは、
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明らかに自分達ではない「パパとママ」と手をつないでいるチコちゃんの絵だったのです……!!

というわけで、言い様の無い恐ろしさを感じさせるこの一編。
このあと何らかの原因でお父さんとお母さんはチコちゃんの両親ではいられなくなってしまう。
何かの不幸があって離散するのか、あるいは死んでしまうのか……
チコちゃんの年恰好がほとんど変わっていないことから、その日はそれほど遠くないはず。
予知を知っていても回避することができないことだけがわかってしまった今、これからこの家族はどうなってしまうのかを考えただけでも恐ろしいではないですか!!
ニコニコしながらその予知を見せるチコちゃんも恐ろしく、もしかしたらこれは予知ではなく、チコちゃんによって強制的にもたらされているのではないか?というよからぬ妄想も生まれてしまいます!
こう行った、なんともいえない居心地の悪さのような怖さを感じることができるのです!

この他の短編も、社会風刺的な内容だったり、現実とは僅かに違う違和感や異常性が描かれていたり、様々な要素がオチでカシリとはまるパズルのような物語だったりと、名作ぞろい。
青年向けと言うことで、以前発売された「少年SF短編」とは違い、良い人なのにこれっぽっちも報われなかったりするビターな味わいが思う存分楽しめますよ!!

F先生の真の(?)魅力が味わえる、「藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編」第1巻は好評発売中です!
F先生の毒がたっぷりと放出された短編がお腹いっぱい楽しめる本作。
「少年SF短編」よりも更にバラエティに富んだ作品集となっていますので、児童向け作品しか知らない方ならばより一層楽しめることうけあいですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1 (藤子・F・不二雄大全集 第3期)
小学館
2011-10-25
藤子・F・ 不二雄

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