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本日紹介いたしますのはこちら、「まほう少女トメ」第1巻です。
エンターブレインさんのビームコミックスより刊行、コミックビームにて連載されています。

作者は原作が武内優樹先生、漫画がおおひなたごう先生。
武内先生は本作がデビューとなるようで、本作がデビュー作で初単行本となります。
デビュー仕方も特殊で、どうやらおおひなた先生が担当編集さんにいきなりこの作品のネームを持って行って見初められた様子。
なかなか得体の知れない、注目すべき作家さんです!
おおひなた先生は、91年のデビュー後「おやつ」「犬のジュース屋さん」「特殊能力アビル」など、様々な雑誌でショートギャグをメインに発表してきた漫画家です。
一見すると児童向け漫画のような絵柄ながら、シュールとブラックジョークにあふれた作風が印象的。
近年ではギャグ漫画かを一堂に集めて大喜利を行う企画、「ギャグ漫画家大喜利バトル」を主催するなど、意欲的に活動されています。

さて、本作はある程度の制限はあるものの、基本的に何でも願い事を叶えてくれるまほう少女のトメと出会った人物がさまざまな恐怖体験をしていく作品となっています。
タイトルになっているものの、トメは基本的に願い事を叶える以外ほとんど物語には介入せず、各話のゲストキャラが主役となる方式。
続々巻き起こる惨劇の中で、今回紹介したいのは、今巻の中でもひときわおぞましい「指輪」というエピソードです!

ホテルのレストランで、セレブなイケメンとオサレなデートを楽しむ玉美。
車で来ているのにワインを楽しんでいる彼を見て、このままお泊りになるんじゃないか?などと期待に胸を躍らせます。
ですがそのイケメンはどうも玉美が左手人差し指にしている、大粒のダイヤの指輪が気になるようです。
イケメンはその豪華すぎる指輪の出所がどうも気になってしまっているようですが、どうも玉美はそのことについて話したくないようです。
ですが追求を逃れるためには仕方ありません。
彼女は「母の指輪」でありながら、「形見といえば形見だが、単なる形見とはいえない」その指輪について語り始めたのでした。

玉美が高校三年生の冬。
弟の正太郎が全教科のテストで100点満点を取った、と喜び勇んで帰ってきました。
正太郎はいつもせいぜい60点くらいの微妙な成績のはず。
不正でもしたのかと尋ねる玉美ですが、正太郎はしてないと余裕の表情で返答。
100点ひとつでお小遣いがもらえるから、これでがっぽりだとばかりに鼻息を荒くして大蔵大臣の母の帰宅を待つのでした。

程なくして帰ってくる母。
ですがその姿は見るも無残な姿になっていました!
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トラックにひかれたとのことで、折れた肋骨は飛び出し、首は折れ、顔面の半分は潰れていて……
大慌てで救急車を呼び、病院へ急行。
しかしどう考えても助かるとは思えず、絶望しながら駆けつけてきた父親と三人で手術室の前で待つのでした。

手術中のランプは意外なほど早く消えてしまいました。
これはすなわち手術が早々と終わった=手の施しようがなかった、と考えるのが自然です。
出てきた医師もその予想を裏付けるかのように、先ほど心停止が確認されたと打ち明けるのでした。
突然ふって湧いた絶望に、これは夢に違いない、と崩れ落ちる父。
するとどうでしょう。
医師も「そうなんです!これは夢なんですよ!」と言い出すじゃありませんか!
それもそのはず、後ろを振り返り、震える指で医師が指したそこには
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心停止が確認されたにもかかわらず、立って歩く母の姿があったのですから!!

母はまるでゾンビのように動き続けました。
医学的には間違いなく死んでいるものの、自宅に帰り今までどおり生活しようとする母。
あまりにも不思議で、あまりにも不安なこの出来事に戸惑うばかりの家族ですが、母には心当たりがあったようです。
先月、正太郎と母で祖母の様子を見に老人ホームに行ったときのこと。
祖母は元気ではあったものの、すっかりボケが進んでしまっておりました。
そんな姿を見た母は寂しさを感じながらも、自分は体は不自由になっても自意識は保っていたいなともらすのです。
その帰り道、通りがかった談話室で老人達に混じって一人だけ少女が習字をしているのが見えました。
少女は墨で全身汚れていたのですが、ちょっと目を放した隙にその汚れがきれいさっぱり消えているではないですか。
不思議に思っていると、いつの間にかその少女が近寄ってきていて、母の服のすそを掴んでいました。
そしてこういうのです。
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「アタシはまほう少女トメ」「あなたたちの願い なんデモひとつ叶えてアゲル」。
子供のごっこ遊びだろうと軽く考えた二人は、付き合ってあげることにして願い事をしてみました。
正太郎は「テストで満点取れるようになりたい」。
そして母は「ボケずに不死身でいたい」……!
トメは「とぐろめからもい」と不思議な呪文を唱え、去っていきました。
その時発したすごい光は不思議そのものでしたが、今のおもちゃにはそういうのもあるんだろう、と納得して二人は帰って行ったのです。

この母の不思議な体は、そのときのまほうが原因だったのでしょう。
母は喜んでいつものように家事をこなすのですが、体は死体ですから細かい動きができず、指を落としてしまいその縫合を玉美に頼んだり、体が腐り始めてきたりと今までどおりの生活などできようはずも無いのです。
やがて家族は母にこれからはこれ以上からだが崩れないようにしてもらおうと、業務用の大きな冷蔵庫を買って、その中で好きな推理小説でも読んですごしてもらおうと言うことになりました。
ですがその腐敗はもう止めることはできません。
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体はどんどんと崩れ落ち、家族からは疎まれていきます。
父は腐り果てた母を見捨てて不倫に走り、正太郎は母があんな体にもかかわらず参観日に来てしまったことで完全に切れてしまいました。
ただ一人最後まで味方でいようとした玉美ですが、母もとうとう我慢の限界を迎えてしまい、「火葬されてやる!」と言い出したのです!
ですが母はただ焼かれるだけでは終わりません。
死者の遺灰を加工し、人工ダイヤにしてくれるサービス。
それを実行し、今は二目と見られないほど醜い自分を、死後はせめて美しいダイヤの指輪にしてくれと玉美に懇願したのでした……

そうして生み出されたのがこのダイヤの指輪。
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現実とは到底思えないそんな話を聞かされては、基本的にそれほど人格者ではなかったらしいイケメンはドン引きするしかありません。
ましてやそれが本当の話だなどと必死で主張してくるのですから、まあ引いてもしょうがないかも……
手切れ金だと金をばら撒いて、逃げるようにタクシーを呼んで自宅へ帰るイケメン。
タクシー代を払おうとポケットをまさぐると、なにやら指が締め付けられるような感触がありました。
手を出してみると、その左手薬指にあの指輪が!!
先ほど玉美にすがりつかれたときに紛れ込み、偶然指にはまってしまったのか?
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……そんなはずはないじゃありませんか。
その指輪は紛れもなく、「不死身でボケない」母で……

と言うわけで、あまりにも理不尽でおぞましいエピソードを収録した本作。
腐り行く母の気味悪さと、それでも家族のためになりたいと言う思い、そして離れていく家族の心は、気味悪くもあり、切なくもある不思議な恐ろしさを感じさせてくれます!
なにより望みがかなったにもかかわらず、不幸にしかならないこのやりきれなさは相当!
その望みがかなったにもかかわらず不幸になってしまう、と言うのは本作の基本形ともなっておりまして、別にそういうことを狙っているわけでもないのに悲劇を招いてしまうトメの掴みどころのなさもまた恐ろしいところ。
さらにこの願いはどんな悲劇を招くのか?あるいは、この悲劇はどんな願いが引き金となって起こったのか?そこを探りながら読むと言う楽しみ方もできるのです!
その上叙述トリック的な仕掛けも施されており、ホラー的な要素だけでない様々な方向から読者を驚かせくれる本作。
ホラーでありサスペンスであり、ブラックジョークも盛り込んだ、贅沢な作品になっているのです!!

新鋭の意欲作にしておおひなた先生の新境地、「まほう少女トメ」第1巻は好評発売中です!
オカルト要素をふんだんに盛り込みながらも人の恐ろしさをしっかり描写している本作。
あの手この手で襲い繰る狂気を体感しませんか!?
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


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