画像

本日紹介いたしますのはこちら、「藤子・F・不二雄大全集 みきおとミキオ/バウバウ大臣」です。
小学館さんより刊行されました。

好評刊行中の本大全集の紹介は「藤子・F・不二雄」のテーマでまとめておりますので、そちらもよろしければふぉ参照くださいませ。

さて、本作は74~75年に「小学四年生」「小学五年生」で連載されていた「みきおとミキオ」と、76年に「小学二年生」「小学三年生」「小学四年生」で連載されていた「バウバウ大臣」を同時収録した一冊となっています。
どちらも半年から一年足らずで連載を終えている作品ですが、どちらもそんなことを感じさせない読み応えある内容に仕上がっているのです!

まず「みきおとミキオ」から紹介したいと思います。
主人公のみきおの家では妙な出来事が頻発していました。
ちょっとした小物がちょこちょことなくなっていたのです。
物を隠す妖精の仕業だ!!というわけではもちろんなく、かといってうっかりどこかへ置き忘れてしまったりしたというわけでもない様子。
まさか真昼間からちょっとしたものばかり盗む泥棒がいるはずもなく、結局原因はわからないのです。
ですがある時、家の中をすばやく横切って行く怪しい影を見かけたみきお。
画像

犬かとも思いましたが、その獅子丸の亜種のようなシルエットはどうも単純に犬と決め付けるには不自然すぎる気もします。
不思議に思いながら歩いていると、その犬が通り過ぎて行った後に何かが落ちているではないですか。
パッと見ただけでは用途が一切わからないそれを拾い上げ、とりあえず枕元においたまま、みきおは夜寝床に着くことに。
枕もとの電気スタンドを点灯させたまま物思いに耽っていると、いきなり天井にみきおと両親があの犬っぽいのを抱いた写真のようなものが映し出されるではないですか!!
あまりの不思議な出来事に飛び起きて両親をたたき起こすみきおですが、両親が来たころにはすでにその映像は消えており、夢だということで片付けられてしまいました。
翌日も友達と遊んでいても、そのことが本当に夢だったのかどうかが気になってしょうがありません。
すると友達とバドミントンに興じていた最中、再びあの犬っぽいのが走って行く姿が目に入りました!
あわてて追いかけるみきお。
犬っぽいのは近所の山に掘られた防空壕後に入って行きます。
みきおがそれを追って行くと、犬っぽいのはぴょんぴょんと跳ねてにげまわり、穴なようになっているところに飛び降りたかと思うと忽然と姿を消してしまったのです!
それを見たみきおは驚きのあまりバランスを崩してしまい、自分もその穴へ転落。
そしてみきおも同じように姿を消してしまったのでした!!

みきおが目を覚ますと、そこはまるでドラえもんがすんでいるような未来都市の中の民家でした。
画像

冗談じゃない、どうやったら帰れるんだと慌てふためいていると、すぐ後ろに先ほどの犬っぽいのがいることに気がつきます。
お前のせいでこうなったと追い回していると、そこになんか未来人チックな服を着たままがいるではありませんか。
こんなところで何を?ときいてみれば、ママは当たり前のように何をしてるの、学習タイムが始まる時間よなどといいながらみきおをひとつの部屋へと連れて行きます。
何がなにやらわけがわからないままみきおは頭を抱えていると、そこに一人の少年が駆け込んできました。
その少年、
画像

どうみてもみきおじゃあありませんか!!

その未来のみきおのそっくりさん、ミキオによればこの世界はみきおのすむ世界の100年後なのだとか。
最近飼い犬のポンチが変なものを拾ってくるから妙だとは思っていたそうのですが、これでどうもみきおとミキオの時代がどこかでつながってしまったのだという事実を確信したようです。
みきおが気が着いた場所に行ってみて、エイとジャンプしてみれば、出てきた先はあの防空壕跡。
なにがきっかけかはわかりませんが、これでこの2つの世界はいつでも自由に行き来可能というわけです!
おまけに血でもつながっているのでしょう、都合いいことにみきおとミキオはそれはもうそっくり。
こりゃあ時々二人が入れ替わり、お互いにとっての異世界を楽しむしかあるまいということになるのも無理のないこと!
好奇心旺盛な二人のみきおは、こうして不思議で楽しい交換生活を送ることになったのです!

というわけで、異世界の自分との入れ替わりという題材をとった本作。
読み切りなどで近いコンセプトのお話を作っているF先生ですが、今作の目玉は二つの世界およびみきおとミキオの微妙な性能差からくる食い違いやギャップでしょう!
みきおにとっては超未来の技術でワクワク、ミキオにとっては図鑑などの知識でしか知らないナマの自然と、それぞれ体験したことのない出来事で楽しみ、未経験のことをすることで起きるトラブルが話の肝となっています。
タイムワープといういろいろ問題ありそうなことをしているにもかかわらず、ほかの作品のようなパラドックスやらタイムパトロールやら、ワープホールが消えそうになるやらのシリアスな要素は一切なく、とにかくこの境遇を満喫する様子などが描かれているだけの明るい作品であるのもまた本作の珍しいところ。
多く存在するF先生の時間移動ものの中でも、トップクラスに気楽に読める愉快な作品となっているのです!


続けて紹介するのは「バウバウ大臣」。
こちらは異世界からの同居人もので、タイプとしては「チンプイ」が近いでしょうか。

学校帰り、妙にきょろきょろしながら歩いている少年、星野大二。
ガールフレンドのウララがなぜキョロついているのかと尋ねてみれば。なんでもママに犬を飼うことを許可してもらったんだそうで、捨て犬でもいないかと探し回っていたんだそうです。
結局見つからないまま家についてしまうのですが、犬がほしくてたまらない大二は家に着くなりまた飛び出して行ってしまうのです。

町をふらふらしていると、大二はなぜか集まっていた友人たちと遭遇し、声をかけられます。
なんでも昨晩、UFOが近くの山に墜落したっぽいから探しに行くぞ!とのこと。
証拠として2つの流れ星のようなものが写っている写真を見せられるのですが、そんなことあるわけないと大二はスルー……したいところですが、相手はいわゆるガキ大将ポジション。
やむなくUFO探しに同行して山へ行くことになってしまったのです。

手分けして探そうということになり、じゃあここで犬を探しちゃおうとこっそり趣旨がえをした大二。
口笛を吹くと飛んできて、自分の後をころころとついてくるかわいい子犬。
そんな犬がいたら出ておいでとのたまいながら山を闊歩します。
すると、その呼びかけに応えるかのように
画像

不細工な犬とシンプルな顔の猫が現れるではないですか!
さすがにコレジャナイと判断した大二は踵を返してその場を去るのですが、その犬と猫はなんか追いかけてきます。
やばい、あんなの2匹もつれて帰ったらママが怒るよと全力ダッシュで逃げる大二ですが、あろうことかその2匹、
画像

空を飛んで追いかけてくるんです!
大二は驚きのあまり足を踏み外し、池に落ちてしまったのでした。

目を覚ますと大二はすっぽんぽんに向かれております。
来ていた服はきれいに干されており、目の前には先ほどの犬と猫が!
その犬と猫は当然のように人語をしゃべりだし、大二がアマンガワ星のアマンガワ王国の王子の生まれ変わりだというのです!
意味不明すぎる状況に頭がこんがらがった大二、あの二匹は頭がおかしいんだ、だから空飛べたりしゃべれたりするんだとつぶやきながらその場を離れます。
そのまま他のUFO捜索隊と合流するのですが、つい犬を探していたことをもらしてしまう大二。
そうなれば当然UFO探してなかったのかよ!とガキ大将に迫られてしまうわけで。
あわや鉄拳制裁というそのとき、先ほどの犬と猫がガキ大将の腕をつかんで食い止めてくれたのです!!
そして、自分たちを連れて行ってくれれば助けてあげるよ、というような交換条件を出してくる犬猫。
痛い目を見るのはいやですし、ペットを飼う許可は出ていますし……
画像

実際はそんな計算をするまもなく交換条件を受け入れる大二、2匹を連れて帰宅。
おかしな犬バウバウ、変な猫のミウミウとともにアマンガワ王子として王国の復権を目指す(?)生活の幕が開くのでした!!

というわけで、本人の生まれ変わりと見初められた人物という違いはあれど、口うるさいお世話役と超能力を持った生物が主人公を高貴な人物と崇めながらもいろいろとトラブルに巻き込むという、「チンプイ」に近い作品である本作。
そんな要素の他で本作中特に目を引くのが、連載三誌でそれぞれきちんと最終回を迎えているということでしょう
か。
話の形こそ一緒なものの、きちんと違った味わいに描きわけられている最終回は読み比べるとより楽しめます!
同じ話の形の、違った第1話を読み比べられるのはオバQなどでも楽しめますが、最終回が一気に3パターン読めるのはなかなかないはずです!
ミウミウのF先生らしからぬキモかわいいキャラデザインや、バウバウの王国再建のために金を稼ぐという第2の目的、バウバウたちから大二のお后にと勝手に見初められつつ、意外にまんざらでもなさげなウララなど、キャラクターも魅力的。
さらに大二のパパが漫画家で、その著作が「ボロえもん」で、意外なところで人気が爆発するなどの小ネタも取り入れられた、愉快な作品に仕上がっているのです!!

F先生の短めの連載作品を2作同時収録した、「藤子・F・不二雄大全集 みきおとミキオ/バウバウ大臣」は全国書店にて発売中です!
ややマイナーな2作品ですが、面白さはもちろん保障つき。
なかでも「バウバウ大臣」は一度しか単行本が刊行されておらず、注目度は非常に高いといえましょう!
同じく未収録話のあった「みきおとミキオ」とあわせて、必見の内容ですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!



藤子・F・不二雄大全集 みきおとミキオ/バウバウ大臣
小学館
2011-03-25
藤子・F・不二雄

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 藤子・F・不二雄大全集 みきおとミキオ/バウバウ大臣 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル