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本日紹介いたしますのはこちら、「アーサー・ピューティーは夜の魔女」第1巻です。
メディアファクトリーさんのMFコミックスより刊行、コミックフラッパーにて不定期に連載されています。

作者は木々津克久先生。
木々津先生の「フランケン・ふらん」など、他著作の紹介は「木々津克久」のテーマにまとめておりますので、よろしければそちらもご覧くださいませ。

さて、本作は木々津先生が得意とする、クリーチャーなどが登場するホラー風味の漫画となっています。
続々と増殖する敵から隠れ逃げ回るというゾンビの類の作品ではあるのですが、そこはさすがの木々津先生。
一味もふた味も違う、新たな切り口の作品となっているのです!!

息を切らせながら、森の中を走る青年、アタル。
彼が帰りついた洞穴には、一人の少女が待っていました。
彼女はアーサー。
アーサーはアタルに町の様子はどうだったかと尋ねます。
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アタルから帰ってきたのは、ひどいものだ、今日も広場で死体がさらし者になっていた、町の連中は化け物だ……という絶望感の漂う答え。
二人はその町の連中から隠れ、おびえながらここですごしているのです。

事の起こりは一月前。
ある種のバクテリアが発見されたことがすべての発端です。
感染した人間は初期症状として悪寒や発熱、激しい嘔吐を発症し、その後こん睡状態へ以降。
そこから彼らは豹変してしまうのです。
未感染者を襲い、捕食するわけでもなく、ただただ殺すという恐怖の存在に……
しかもそのバクテリア、最初は南米の一部でのみ存在していたのですが、突然変異を起こし世界中へ広まってしまったのです。
感染者の強襲から命からがら逃げ出したアーサーとアタルは人目につかないところに隠れ住み、サバイバルのような生活を強いられていたのでした。

テレビやラジオ、さらには携帯の電波も一向に入らず、情報も一切手に入れられない二人。
ですがまだ自分たちと同じような境遇の仲間はいるはずだと考え、何とか通信手段がないかと考えます。
そこで思い当たったのは何らかの通信機類を使用すること。
アタルは思い切って町へ降り、民家に侵入して小型のハム無線を見つけ出しました。
ところが運悪くそこで感染者の子供に遭遇!
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ものすごい勢いで襲い掛かってくる子供から逃げるアタルですが、その背中に子供が投擲してきた鉛筆を食らってしまいます!
痛みに耐えてアタルは一目散にアーサーの下へ!
やつらを見くびっていた、ここも危ないから逃げ出そうとアーサーを連れ出すのです!

大荷物を背負って足を進める二人。
姿を見られてしまったことで存在が知られてしまったらしく、感染者に山狩りをしているような動きが見られます。
二人はとりあえず人の少ない場所に行こうということになり、郊外の廃病院へ向かうことにしました。
ああいった心霊スポットなら他に隠れているものがいるかもしれないという望みも兼ねて。

廃病院にいくには街中を通るしかありません。
ですが、今はまさに山狩りの最中ということで、おそらく町に感染者はほとんどいないはずです。
警戒しながらも大胆に町を歩く二人ですが、実はこの行動こそ感染者の思う壺!
いつの間にか多数の感染者が二人を包囲しているではないですか!!
二人は巣穴からいぶりだされ、まんまと敵の只中におびき出されてしまったというわけなのです!!
アタルはまだアーサー一人なら逃げられると、アーサーに指示しながら必死に抵抗します。
ですが後頭部に痛打を受け、あえなくダウン。
アーサーは感染者にもみくちゃにされ、
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その衣服をずたずたに引き裂かれてしまいました!!
絶体絶命かと思われた矢先、アーサーに異変が起こります。
いきなりえづき、ゲロゲロと嘔吐を始めるアーサー。
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ですがそれはいわゆる吐瀉物ではなく、大量のねずみです!!
そしてまるで空気の抜ける風船のようにアーサーの体はしぼんで行き、代わりに現れたのは天を突く巨人のような形に固まったあまりにも多くのねずみ達!
そのねずみの巨人は手近な感染者を握りつぶしながらこう言います。
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「我が名はアーサー・ピューティー」「夜の魔女が命じる!!」「下がれ化け物どもめ!!」と!!
一瞬の隙を突き、ねずみの巨人は鳥のような姿へと形を変え、アタルを背負って空へと逃げ出して行きます。
それを見送るしかない感染者。
感染者のリーダー格らしき男は苦々しい表情で、「あんなものが我々の社会に溶け込んで搾取していたとは」とつぶやいたのでした。

バクテリアに感染したものに起こる変化。
それは、知能・身体能力の大幅な向上という大きなメリットでした。
ですがそれよりも重大な変化が起こっていたのです。
今まで誰も気がつくことのなかった、世界各地の有力な人物の正体に気がつくという能力の目覚めが!
あるときは神と呼ばれ、あるときは悪魔と呼ばれ、あるときは妖怪と呼ばれているような、人間の能力をはるかに超越した高次の生命体。
彼らの多くは人に擬態し、その能力を駆使して人類を先導し、甘い汁を吸っていました。
人々は気がつかずそれに従っていたわけですが……自分たちを統率していたような偉い人が人間ではない存在であることがわかったら?
知能・身体能力も上がっている上、数で圧倒的に勝っている人間が団結すれば、その人外の存在を駆逐するなど造作もないことです!
こうしてそういった人間ではない人間の支配者だったアーサーと、その忠実な部下でゾンビであるアタルは感染者=人間に追われる生活に追い込まれてしまったというわけで……
アーサーは逃げながら人間たちを無能な猿めと罵り、霊長類とは自分たちのことなのにと憎憎しげに恨み言を吐き捨てるばかり。
アーサーとアタルは安住の地を求め、放浪生活を続けるしかないのでした。

というわけで、ゾンビものの新たな形式を生み出したといえる本作。
本来のゾンビものの、ゾンビに当たる存在が知恵も力もある一般の人間で、それから逃げ惑う人間に当たる存在が化け物(しかも一人はきちんとゾンビ!)という、逆転した設定が目新しい作品となっています!
そして設定は逆転していても、逃げるものと追うものの立場だけは逆転していないというのも面白いところ。
恐るべき能力を持っている恐怖の対象であるアーサーたちが、ある程度のパワーアップをしているとはいえ普通の人間から逃げ惑うというこれまた珍しいストーリーが楽しめるのです!
この後のストーリーはというと、そこかしこにひそかに暮らしている高次の生命体仲間に出会って行く展開がメインとなります。
実にさまざまな種類の仲間に出会い、それぞれがいかにして生き延びているかが描かれるのです。
さらに根幹の最後に収録されているエピソードでは、バクテリアが発生することとなったきっかけであろう事件が語られます。
それだけでも十分興味深いお話ではありますが、なんとこのお話にはあの「ヘレンesp」のへレンが登場!
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しかも単なるファンサービスの類ではなく、ガッツリとお話に絡むのです!
あの木々津先生作品中最高のいい人であるへレンがどのように作用してアーサーたちにとっての破滅を招くのか!?
ファンならずとも必見の内容となっています!

新世代ゾンビストーリー、「アーサー・ピューティーは夜の魔女」第1巻は全国書店にて発売中です!
グロ要素は多いものの、「ふらん」に比べればエロスやブラック度は幾分薄い感じとなっている本作。
ですが勝るとも劣らない独自の設定がきらりと光る作品となっていますよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


アーサー・ピューティーは夜の魔女 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
メディアファクトリー
2011-03-24
木々津 克久

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