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本日紹介いたしますのはこちら、「ハナコ@ラバトリー」第1巻です。
ジャイブさんのCRコミックスより刊行、コミックラッシュにて連載されています。

作者は原作が施川ユウキ先生、作画が秋★枝先生。
秋★枝先生は同人活動などもされている漫画家で、商業誌では05年ごろから活躍されていらっしゃいます。
現在もコミックフラッパーや4コマ漫画誌などで連載するなど、精力的に活動されています。
施川先生やその著作の紹介などは「施川ユウキ」のテーマにてまとめておりますので、よろしければそちらもご覧くださいませ。

さて、本作は1話完結の事件解決タイプの漫画になっています。
ですがたんなる事件解決モノに終わらない、施川先生らしいひねりの効いた作品なのです!

1人トイレの中で携帯を弄る少女。
彼女が打ち込んでいるのはブログの文章で、ひとしきり打ち込んだあと画像を掲載してアップロードしているようです。
彼女は携帯をカメラ撮影モードにしたかと思うと、トイレの個室の扉を閉めたまま手を差し出し扉を突き抜けてレンズを外の窓に向けたではないですか!
どうやら彼女は普通の人間ではない……いわゆる幽霊のようです。
そして手を差し伸べたそのまま青い空を撮影すると
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丁度そこに空から降ってくる人影が写りこんでいたのです!!

間もなくその飛び降りた眼鏡の少女は幽霊になってふわふわと上昇してきました。
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そんな眼鏡の少女にいじめが原因で自殺したのか、と聞いてみれば、べつに自殺したわけではない、空を飛んでみたかっただけだとメチャクチャな反論をしてくるのです。
確かにいじめられそうな顔をしていると意に介さず突っ込み、すっと眼鏡の少女に携帯を差し出すと、そこには先ほどの落下している眼鏡少女の画像が表示されていました。
しかもその写真にはバッチリ少女のおパンツが写っていまして……
この画像をブログにアップされたくなかったらおとなしく成仏しろ!となんだか微妙な説得をするのです!
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ところが眼鏡少女は、幽霊の身でありながらブログをしていると言う点のほうが引っかかりました。
自分もやってみようかな、と眼鏡少女は自分の携帯を取り出してみれば、なるほど確かに当たり前のように携帯を操作できるようです。
そこで眼鏡少女はミハルと名乗り、メアドを交換しようと提案してきました!
断る理由もありませんし、普通にメアドを交換することとなった2人。
どうやらトイレにいた少女は花子という名前なようで。
こうして幽霊2人はお友達(?)になったわけですが……
いきなり会話に詰まって沈黙に包まれてしまいます。
それでもずっと花子を見ているミハル。
やり辛さを感じたのか、それとも別の理由なのか、花子は先ほどアップしようとしたブログのネタ元であった「銀河鉄道999」についての話を切り出しました。
ところが苦し紛れに言ったその言葉の頭だけ聞いて、「銀河鉄道の夜」だねとミハルは超食いついてきます。
嬉々として思い入れを語るミハルですが、そのお話が「ブルカニロ博士」なる人物の事になるとトーンダウンしてしまいます。
なんでもそのブルカニロさん、初期の発行物には登場していたものの、研究が進むにつれその存在が抹消されてしまったのだとか。
ジョバンニを導く重要なポジションにいた上、印象深い台詞を残しているにもかかわらず存在を消されてしまったブルカニロ博士。
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存在しなかったことにされるなんて悲しい、何を語ったとしても全部なかったことにされるなんて。
物憂げにそう語り終えると、ミハルは気を取り直してどこかへ遊びに行かないかと言い出しました。
ところが花子さんは「トイレの中」でしか存在できないのだそうで、1人で行けと冷たくあしらいます。
上のほうに行けば多分成仏できるから、とアドバイスするものの、どこかへ言っても1人ならばどこでも同じだと寂しげに帰すのです。
そこで花子は、それならメールしながら上に行けばいいと新たにアドバイス。
それなら1人じゃないでしょ、と言う言葉に背中を押され、ミハルは上へと上り始めるのです。

そのメールは、ミハルの心中を赤裸々に語ったものでした。
友達がいなくて寂しかった、自分が存在していないみたいに感じて、逃げ出そうと飛び降りてしまった。
でも何度飛んでも1人ではどこにもいけなかった。
次の場所にいけるのは花子のおかげだ、と言う。
そしてミハルは優しげな笑みを浮かべながら
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成仏して行ったのです……

ミハルは毎年同じ時間に落ちてくる自縛霊でした。
「何度飛んでも」と言う文章を見るに、そのことは本人もわかっていたようです。
それならばもっと早く声をかけてあげればよかった、と思いながら花子は空を見上げました。
車窓を見るだけでも銀河鉄道のたびは楽しめる。
きっと地上でも同じだ。
たまに出会いもある。
そんな思いも廻らせながら。

といったような、しんみり来たり来なかったりするお話が収録されている本作。
主人公がいわゆるトイレの花子さんであるだけに、来る人も舞台も限定されそうな設定ですが、そこはなかなか広い範囲でのトイレがテリトリーとなるようです。
あるときは動物がマーキングする電柱、あるときはトイレついてるタイプのユニットバス、あるときは仮説トイレ。
そのおかげでマンネリもなく、各エピソードバラエティに富んだ内容となっています。
その物語も、この第1話のような幽霊同士でじっくり展開する話だけでなく、叙述トリック的なものを使ったサスペンス風味なお話、まさかの幼稚園児便所飯にまつわるお話、更に花子+幽霊+生霊と言う3人(?)でなぜかお互い怖がらせあうことになるお話など、実に様々なものが展開。
どのお話も施川先生らしい台詞のやり取りと、不意をつくように現われる恐怖や感動などがふんだんに盛り込まれていまして、はっとさせられること必至です!

トイレの幅の可能性に迫る(嘘)、「ハナコ@ラバトリー」第1巻は全国書店にて発売中です!
施川先生(多分)初となる非ショート漫画で原作としての連載となる本作。
施川先生ご自身の絵も大変かわいらしいのですが、やはりああいったデフォルメの効いた絵だけで合わないなと敬遠してしまう方もいたでしょう。
そういった方には是非この作品を読んでいただき、そこからめくるめく施川先生作品世界の入り口としていただくのもよろしいのではないでしょうか!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


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