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本日紹介いたしますのはこちら、「鬼太郎のベトナム戦記」です。
徳間書店さんのトクマコミックスより刊行されています。

作者は勿論皆大好き水木しげる先生。
鬼太郎やら短編集やらの紹介は「水木しげる」のテーマにてまとめておりますのでご参照くださいませ。

さて、本作は表題作をはじめとした鬼太郎が珍しいことをしている物語を集めた作品となっています。
その表題作からしてすごい気になるタイトルですが、その他収録されているのもなかなかショッキングな油断ならないラインナップになっているのです!

まずその「鬼太郎のベトナム戦記」。
こちらは68年に発表された作品で、まさにベトナム戦争のリアルタイムにかかれています。
戦後の記憶もまだ色あせぬ時期だったこともあり、巻末に収録されている99年に行われた水木先生のインタビューでも「詳しく知らなかったが、ベトナムが大国アメリカにいじめられているんじゃないかと思っていた」とおっしゃられていて、鬼太郎がベトナム側に立ってアメリカ軍と戦うというなんか壮絶な内容の作品になっております。
水木先生も時間が経てばどっちが正義だとは言いづらいことを十分に理解しているようで、当時は一生懸命描いていたけど「いまになると、ねぇ……」とのこと。
そんなわけで今見れば非常に偏った思想で描かれている作品となっていまして、それだけにいろいろ刺激的な内容なのです!
なにせ子なき爺が原子力潜水艦にしがみついて沈めたり、
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ねずみ男が
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ゲバラに成りすましたりしますからね!!

で、今回何より紹介したいのはその表題作ではなく、「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪ロッキード」。
世界を騒がせたかのロッキード事件には妖怪の影があるんじゃないかと疑い始めるところから物語は始まります。
ねずみ男が政治家を尾行してみれば、マジで妖怪が関わってました。
鬼太郎ではわりとおなじみの、狼男、ドラキュラ、魔女のトリオです。
ですが所詮はねずみ男の尾行、あっさりと見付かってつるし上げられてしまいます。
そこでねずみ男は苦し紛れに鬼太郎の弱点教えるから助けてよと命乞い。
その弱点とは「美女」でした!
そんなわけで早速魔女は魔法っぽいもので「魔女製美女」を作り上げ、鬼太郎にけしかけるのです。
パンツに膝上までのロングブーツ、そしてあとは透明なマントだけと言うあんまりにもあんまりな格好をした魔女製美女ですが、鬼太郎はあっさりとその罠にかかってしまい、催眠術をかけられてしまいました。
すると鬼太郎はたちまち悪の手先に!
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「ボクはこの地上に悪をはびこらせたい……」とすごい目つきで物騒なことを呟くのです!
しかも魔女製美女にじっと寄り添っていたいと言いつつ
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腰に飛びつくというエロスっぷり!
即行で結婚しようよ!と言う展開にまで発展するのですが、いち早く目玉のおやじが催眠術にかけられたと気がつきこれまた即行で助っ人を呼びます。
その助っ人はあろうことか、
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皆大好きバックベアード様!
必殺……というかほぼ唯一の技である眼光で鬼太郎の催眠術を解いて魔女製美女を焼き殺し、そのまま鬼太郎を乗せて敵の本拠地へと向かうのでした!!
さすがベアード様、助っ人のみならず乗り物にまで!!
ちなみにこのベアード様、先生もお気に入りなのか「ベトナム戦記」のほうにも2コマだけ登場。
その圧巻のちょい役ぶりは一見の価値ありです!!

で、そのまま西洋妖怪トリオを全滅させ、彼らが裏で政治家を操って金を集めて何かをたくらんでいたらしい!やっぱ妖怪のせいだ!あとねずみ男はおしおきな!といういつものノリで終了。
なにより鬼太郎の助平ぶり(とベアード様のいい人ぶり)だけが印象に残る作品となっています。
前述の「ベトナム戦記」でも、はっきり「鬼太郎は他国の美女に弱い」と描かれている上、2度も美女にメロメロになっており、その俗っぽさは子供向けヒーローである営業鬼太郎とは一線を画す、元祖鬼太郎ここにありと言う姿を見せ付けてくれるのです!
そして鬼太郎の俗っぽさはエロスのみにとどまらず、同じくこの本に収録された「大ボラ鬼太郎」でも遺憾なく発揮。
全5話で繰り広げるこの「大ボラ」では、鬼太郎がねずみ男と一緒になってガチンコでお金儲けにいそしむのです!
なかでも「完全車の巻」はひどいひどい!
鬼太郎がねずみ男と一緒に世界的電気メーカーに完全車なるモノを売りこみに行きます。
専務がどんなもんかねと試しに乗ってみれば、その車の中だけで勉学から仕事、医療やエロスに至るまで何でもサポートしてくれるという超優れもの。
オマケに「骨壷」と言うボタンを押すと、火葬して完全車そのものがオートで骨壷になってくれると言うまさに完全な車でした。
……が、その骨壷機能まで専務が体験してしまったのが運のつき。
哀れ専務は骨となり、鬼太郎たちは人殺しだと他の社員達に追い掛け回され、ほうほうの体で逃げるのでした……
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って、笑い話ですませていいんかい!というそりゃもうひどい鬼太郎が拝めるのです。
しかもこの話、確かもともとが鬼太郎関係ない短編で、それを第2期鬼太郎で鬼太郎を絡めてアニメにしたネタを更に水木先生自身がリファインしたというなんか良くわからない来歴。
水木先生が過去ネタを再利用するというのは良くあるんですが、多分アニメで鬼太郎に使われていたということを忘れて(知らずに?)改めて鬼太郎に絡めたんじゃないでしょうか!

「大ボラ」やら「ロッキード」やらで俗っぽいところを見せたかと思えば、鬼太郎がタイムスリップして鑑真の助っ人をするというとんでもないにもほどがあるお話「ゲゲゲの鬼太郎 蓮華王国」ではしっかり幻の全裸美女の誘惑を振り払ったりするヒーローぶりも見せてくれるのでご安心を!
鬼太郎はなんだかんだいってもヒーローなんです!多分!
そのほか水木先生のインタビューを2本再録し、数々のレアな体験をさせてくれる一冊となっているのです!

鬼太郎が世を騒がす事件で暗躍していたり、逆に世を騒がしたりする「鬼太郎のベトナム戦記」は全国書店にて発売中です!
俗っぽい鬼太郎が拝めるレア気味な作品がぎっしりと収録された今巻ですが、とりわけ「大ボラ鬼太郎」は体操レアな作品。
あの高価な「妖鬼化(むじゃら)」初版全巻予約特典の単行本や、電子書籍にしか単行本としては収録されていなかったようで、始めて見る方も多いのではないでしょうか!
マニア垂涎、ライトなファンの方はびっくりすること間違い無しの一冊ですよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


鬼太郎のベトナム戦記(トクマコミックス)
徳間書店
2010-12-02
水木しげる

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