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本日紹介いたしますのはこちら、「ゲゲゲの素」です。
徳間書店さんのトクマコミックスより刊行されました。

作者は水木しげる先生。
水木先生に関しては「水木しげる」のテーマにて紹介をまとめておりますので、そちらもあわせてご覧くださいませ。

さて、本作はたくさんある水木先生の短編を、アニメ版ゲゲゲの鬼太郎の原作となったゲゲゲの鬼太郎でない作品、というくくりでセレクションして収録している単行本です。
選者は押しも押されぬ人気作家でありながら、関東水木会の会員である京極夏彦先生。
さすが京極先生といったところか、単なる選考だけに終わらず、10Pにもわたる解説までしてくださっています!

アニメ版のゲゲゲの鬼太郎といいますと、60、70、80、90、00年代とそれぞれの年代でアニメ化し、それぞれ大人気を獲得しています。
こう書くと10年おきくらいにアニメ化しているように感じますが、第1期は68~69年、第2期は71~72年とこの2シリーズはそれほど間を空けずに放映されています。
3、4、5期はリメイク的な色合いですが、この2期に関しては1期の続編的な作られ方をしておりまして、1期で使われたエピソードの再利用といったことはされていません。
そのため原作が足りなかったのか、鬼太郎以外の水木先生作品を鬼太郎の世界に落としこんだエピソードが多数放映されました。
本単行本ではその鬼太郎アニメの原作なのに鬼太郎の出ない原作が集められている、というわけです。

多数ある鬼太郎にして鬼太郎に非ず作品の中で京極先生が選りすぐった11編。
長さも味わいも多種多様で、7Pの一発ネタ的な「妖怪自動車」というあっさり目なエピソードから、30P以上のボリュームがある「妖怪魍魎の巻 死人つき」といったがっつり楽しめる作品まで収録されています。
そんな中今回は数ある鬼太郎アニメ作品の中でトラウマになったとよくささやかれるエピソードを紹介したいと思います。
そのお話は「足跡の怪」というもの。
水木先生作品としては珍しい気がする、ストレートに恐ろしいエピソードとなっています!

信州の山奥に二人の男が足を踏み入れるところから物語は始まります。
でかでかと「いらずのやま」と刻まれた石碑を見つける二人ですが、入るなって事だろうと理解しつつもあえて園山の中に足を踏み入れてしまいます。
そういうところでお宝を見つけたっていう話もよくあるなどと話しながら歩を進めると、いわくありげな石仏がたくさん並んでいたりと確かに何かありそうな雰囲気です。
やがて立ち入り禁止と書かれた看板と、注連縄で通せんぼしてある場所へ出くわします。
それを無視してすすむと、今度は巨石が鎮座している場所へと到着しました。
何かあるだろうと探していると、今度は何かありげな穴を発見。
はいつくばって穴の中をすすんでいくと、深い深い縦穴へとぶつかりました。
これはさすがにどうにもならないと引き返すことにする二人ですが、せっかくなので(?)穴におしっこしてから帰路に着くのでした。

それから数日後、男たちは東京に帰り日常を過ごしていました。
ところがその日、山に入った二人のうちの一人、眼鏡の男が目を覚ますと、
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自分の右手の小指が忽然と消えていることに気が付きました。
痛みなどはないのですが、なんかやばいと医者へ向かうことにする眼鏡の男。
その途中、山へ入ったもう一人の男へ出会うのですが、その男は眼鏡の男の耳がないことを指摘してきました!
いつの間にか耳までなくなっていたことに驚いた眼鏡の男はとりあえず喫茶店に入って、もう一人の男に今朝小指がなくなっていたことを告白します。
原因はなんだろうと話しているうちに、今度はもう一人の男の目の前で
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右の目玉が消失!!
続けて鼻が消え、首が丸ごと消え……!
慌てふためいて喫茶店から飛び出す眼鏡(はもうありませんが)の男!
それを追いかけるもう一人の男ですが、すでに眼鏡の男の姿はどこにもありませんでした。
ですが眼鏡の男が消えたと思われる場所から今まで見たこともないような足跡が残されていて、それはどこかへ向かって延々続いています。
もう一人の男がそれをたどっていくと、足跡は例のいらずのやまの穴まで続いていたのです!
この穴の中に目には見えない何かがいるのか?と覗き込むもう一人の男。
その時、男は自分の右手の小指が消えていることに気が付き……!!
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東京から長野まで足跡たどっていったのかよ!と突っ込むのも忘れてしまう、理不尽なまでの不可避の死を恐ろしく描いた名エピソードであるこのストーリー。
妖怪かなにかはわかりませんが、死を与える存在が足跡のみで姿を現さないというのがまた恐ろしさを倍化!
表紙を含めてわずか8Pの中に凝縮された恐怖は水木先生のすごさをまざまざと感じさせてくださいます!
また、妖怪的なものがいるのに姿を見せないということも水木先生作品では珍しく、そういった面でも興味深いエピソードとなっています!

このほかにも、トラウマエピソードとして名高い「地相眼」や、
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鬼太郎は出ないのにねずみ男は出る「幸福という名の怪物」「心配屋」などなど、
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読み応えある作品を取り揃えています。
鬼太郎が出ない作品のため、悪事を為す妖怪を退治してすっきり解決!というお話は少なく、もやもやしたまま終わったり、謎が謎なまま終わったりする作品が多いのも特徴。
水木先生ファンや鬼太郎ファンのみならず、後味悪い話好きの方にもお勧めな内容です!

ゲゲゲの名を冠しながら鬼太郎は表紙にしかいないという「ゲゲゲの素」は好評発売中です!
鬼太郎のいないアニメ鬼太郎の原作という作品群を集めた本作。
どんなコンセプトでどんなセレクトをしてもあふれ出てくる水木エキスが堪能できる一冊となっています!
水木先生って鬼太郎以外にどんな話描いているの?というライトなファンや最近の女房関係で水木作品に興味を持った方にお勧めです!
濃いファンの方にとっては水木先生関係単行本ではつきものの再録地獄はこの本でも味わえてしまうのが難ですが、ファンにとってA5版と言う大サイズで堪能できるのはやっぱり魅力的。
更に京極先生の解説が付いているのも見逃せない要素でして、なんだかんだいって抑えておきたいところです!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


ゲゲゲの素 (トクマコミックス)
徳間書店
2010-08-21
水木 しげる

ユーザレビュー:
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