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本日紹介いたしますのはこちら、「シュセンドー」です。
集英社さんのヤングジャンプ・コミックスBJより刊行されました。

作者は原作が金成陽三郎先生、漫画が安達哲先生。
金成先生といえばかの「金田一少年の事件簿」の原作が有名な漫画原作者です。
ですが98年ごろから金田一の原作を外れ、集英社を主な活動の場所に移しました。
その後も「ミステリー民俗学者 八雲樹」などのヒット作を生み出していらっしゃいます。
安達先生に関しては09年5月18日、「キラキラ」の記事にて簡単に紹介させていただいておりますので、そちらもよろしければご覧ください。

さて、本作は詐欺に引っかかった青年がある人物と知り合い、アドバイスを受けながら金を取り戻すため奮闘するという物語です。
金成先生らしい騙しあいと、安達先生らしいコミカルとシリアスの交じり合った作風が融合した作品となっています。

主人公の航太は記帳した通帳を見つめて喜びに小躍りしていました。
田舎のおばあちゃんにお願いして振り込んでもらった300万が確かに入金されていたからです。
それもこれもすべて航太のもとへ突然一通の手紙が来た為。
高校時代、片思いの末たった一度だけデートをしてもらった少女、麗子。
その時冗談交じりで語り合った、
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麗子が上京してスターになり航太が映画監督になるという夢を実現したら、主演をしてあそこを撮らせてあげるというやりとり。
彼女だけはそれを実現し、芸能人になったという知らせが届いたのです。
ならば約束を果たさねばと映画のシナリオを猛烈な勢いで書き上げ、祖母から300万を借りて映画制作に取り掛かることにした航太。
その映画がいきなり高評価を得てスターダムにのし上がり、やがては麗子と結婚……そんな成功の青写真を脳裏に描きながら、麗子との待ち合わせ場所につっ立ちます。
そこへスポーツカーを駆って颯爽と現れた麗子は
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当時のみつあみ眼鏡な面影は欠片もない、派手派手な女性へと変貌していました。

同乗してお互いの身の上なんかを語っているうち、映画制作には300万じゃ足りるわけがないという方向へと変わっていきます。
芸能界は金のスケールが違うと落ち込む航太に、簡単にお金を増やせる方法があると切り出す麗子。
簡単にお金が儲かる、と言う売り文句はほぼ9割9分9厘9毛詐欺なわけですが、純真かついっぱいいっぱいな航太はあっさりと騙され、導かれるまま付いていきました。
その行く先はCOMファンドなどという簡素な看板が張られたマンションの一室。
この会社に300万ぶち込み、株式投資で増やそうというわけです。
流石に最初はそんなギャンブルじみたことにはお金をかけられないとためらう航太。
ですが担当の雨宮という男の丁寧な対応やら麗子の成功例なんかを聞き、
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とうとうお金を渡してしまうのでした。

しばらくたち、その後お金がどうなったのかと期待を隠せない顔でマンションを訪ねる航太。
ところがその部屋はもぬけの殻。
オマケに麗子にすら連絡が付かなくなり、マンションの前にある公園のベンチで途方にくれていました。
するとそこへふらりとホームレス風の男が現れ、
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あなたもやられたのか、COMファンドの雨宮という男は詐欺の常習者だと言い出すではないですか。
おそらく麗子もグルだったのだろうと教えられ、金を取り返さなきゃと慌てて警察へと駆け込もうとする航太。
ですが男は警察に行っても「金は全部使ってしまった」と開き直られたらお金が返ってくることはないとまで告げてきます。
両親が離婚したあと自分を引き取って育ててくれた、大事なおばあちゃんに借りた300万。
詐欺師に騙し取られたなどといったらショックで寝込んでしまうかも、と泣き叫ぶ航太。
そんな航太に男は自分も昔詐欺にあって会社を潰してしまった、人事とは思えないから自分の知っている弱者に優しい弁護士に相談してみる……そういって航太から相談料の一万円を受け取り、にこやかにそのビルへと消えていったのです。
彼は航太の元へは帰ってこず、裏口から出て行ってしまったのですが……

ですが航太は運良く近くのスーパーで酒を買い込む先ほどの男を発見します。
追いすがってとっつかまえ、詐欺にあったばかりの自分を騙すなんてヒドいと責め立てます。
ですが男は詐欺にあったばかりだから、つまり騙されやすい体質だから騙したんだと開き直るではないですか!
さすがにブチ切れた航太、どこからともなくナイフを取り出して大暴れ。
すっかり怯えきった男を警察へ突き出してやると追いつめるのです。
警察は勘弁してくれと後ずさる男に、じゃあお前を殺して代わりに自分が殺人罪で刑務所に入る、などとむちゃくちゃなことを行って襲い掛かる航太。
ですがその時、
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男は「詐欺師から金を取り戻す方法を教えてやる」と口走ったのです!

奇妙な出会いから協力して詐欺師から金を取り戻すことになった航太とホームレス風の男、原。
ですが雨宮と麗子は更なる詐欺を仕掛け、小唄の祖母からも直接金をふんだくってきます。
そんな彼らから金を取り返すには騙してふんだくり返すしかないと語る原。
驚きの知識を持った原と、祖母の為になりふり構わない行動を起こす航太、そして雨宮に騙され大金を騙し取られた美女の百合子を加え、詐欺師を騙すというアウトローにも程がある心理戦が始まるのです!!

というわけで、なにやらそこかしこで聞く詐欺事件の被害者となった航太がプロの騙し手を騙すというストーリーが展開する本作。
謎過ぎるおっさん、原のもちいる様々な裏技や、雨宮も簡単には騙し返されない、ワルの駆け引きが最大の見所です。
出てくるキャラも無駄のない配置で、ストーリーの流れ自体もだらだらした部分はなく見事に1巻で纏め上げられたストーリーはさすが。
更に騙しあいの中ひとり正義感(?)を持つ航太が、時には金がすべてじゃないといったような熱い主張を振りかざすのですが、作中のほとんどの人物が全然とりあわないというある意味でのリアルさも注目です。
それでいて漫画でなくてはなかなかありえないハッピーエンドを迎えるというのも、こういった作品には付き物の後味の悪さがなくてステキなのです!

詐欺師との騙しあいを描く「シュセンドー」は全国書店にて発売中です。
安達先生久々のリアル路線(?)作品の単行本である本作。
題材からしても地味さは否めませんが、地味でも楽しめるしっかりとした作品に仕上がっていますよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


シュセンドー (ヤングジャンプコミックス BJ)
集英社
安達 哲

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