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本日紹介いたしますのはこちら、「夢幻ウタマロ」です。
講談社さんのアフタヌーンKCより刊行されました。

作者は永井豪先生。
もはや説明不要なほどの大御所である永井先生が、今回は名作文学を下敷きにした作品に挑戦しています!

さて、本作はかの歌麿がとある女性の絵を描いたことが発端となって巻き起こる事件を描いた作品です。
お得意のモンスターの類はでず、1人の人間の運命が狂っていく様を力強く紡ぎだしています。

植物や動物といった自然に存在する美を描くことを追求する画家、北川豊章。
ある日彼の元にいつもとは違う仕事が舞い込んで来ました。
それは「美人画」。
最初は
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化粧や衣装でうわべを飾った美なんて興味がないと突っぱねる北川ですが、依頼者の熱意は本物です。
化粧は女の武器であり、最高のものを掴もうとしている女の心が現れたものだ、そこまでして作られた美がほかの美と優劣をつけられるものではない……
そんな気合のこもった説得に折れ、北川はその美人画のモデルになる花魁と会うことを決意しました。

千年に一度とまで言われる稀代の美貌を持つその花魁の名は紅蓮太夫。
あまりの人気に10日間通い詰めても会えないものがいると言います。
ですが今回はその紅蓮太夫から北川に自身を描いてもらいたいとアプローチをかけてきたそうで、特別に初めて着たその日に会うことが出来ました。
一目見るなり北川もその美貌に感嘆し、寝ずに一枚の絵を描き上げてしまいます。
最高の出来であるその絵。
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あまりに会心の出来だったためか、北川はこれからも美人画を、女の内面を描き続けることを決意します。
そしてこれを期に名前を鬼多川歌麿呂に改めるのでした!

しかし歌麿呂はその紅蓮太夫の絵だけは売り物にしないと言い出します。
なぜならあまりに出来が良すぎて魂まで込めてしまったのだそうで、この絵を持っていていいのは本人だけだと主張。
この仕事の依頼者もそれならばと諦め、歌麿呂と今後美人画で仕事をしていくことに落ち着くのでした。

そんな渾身の絵を見てはその美しさに見惚れる紅蓮太夫。
紅蓮太夫にすっかりまいっている人気役者が客としてやってくると、その絵を見せびらかすくらいなのですからよっぽど満足しているのでしょう!

別の日、先ほどの依頼者に歌舞伎に招待された歌麿呂。
仕事が好調を博し、そのお礼と言うこと。
更に紅蓮太夫も一緒に観るということで、嬉しさもひとしおです。
そしてこの舞台には先日絵を見せびらかした人気役者が登場。
彼は紅蓮太夫が太鼓判を押す美しさと演技の上手さを誇っているそうで、歌麿呂も期待を寄せます。
が、なにやら舞台の様子がおかしいです。
当の人気役者がどうやら台詞をすっぽりとばしてしまったようで、どうにもならないまま途中で舞台が中断してしまったのでした。

体調でも悪かったのだろうと気にしない歌麿呂ですが、太鼓判を押したにもかかわらずこの体たらくを曝してしまった紅蓮太夫は怒り心頭。
自分を尋ねてきた人気役者を冷たくあしらいます。
寝ても覚めても紅蓮太夫のことで頭がいっぱいで台詞も頭に入らない、本気で愛してしまったと必死にすがりつく人気役者。
それを紅蓮太夫は恋におぼれたくらいで仕事も出来なくなるような弱い男は好まない、二度と姿を見せるなと無常に追い払うのでした。

美しいと言ったって半端なやつはダメだ、自分に恥をかかせた罰だと、絶望する人気役者の気持ちも知らずほくそえみながら自分の絵を見る紅蓮太夫。
するとその絵の紅蓮太夫は
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醜くいやらしい笑みを浮かべているではないですか!
魂を込めたという歌麿呂の言葉を思い出した紅蓮太夫は、人気役者を冷たく捨てたりして自分の魂が穢れたのかと考えます。
そこですぐさま人気役者を探すのですが、時既に遅し。
舞台を滅茶苦茶にし、恋にも敗れた彼は
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首を吊っていたのでした……

取り返しの付かない罪を背負ってしまったと嘆く紅蓮太夫。
雷鳴とどろく中再び見た絵の中の自分はまるで般若のような凄まじい形相を浮かべています。
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この時点で紅蓮太夫の心中は異常をきたしていたのか、歌麿呂は人の心を見透かす妖怪変化ではないかと疑い始め……
ついには歌麿呂を亡き者にする決意をしてしまうのでした!

更に物語は裏表の顔を使い分けて蠢く黒羽幻内や、金に物を言わせて紅蓮太夫の体を求める財黒屋幸衛門が登場して不穏な空気がまして行きます。
彼らは紅蓮太夫の運命を確実に歪め、彼女をより深い後戻りできない闇へと引きずりこんでいくのです。
紅蓮太夫の狂気はどんどん肥大化し、歌麿呂への殺意も膨らみ続け……
使ってはならない手段まで使い、なりふり構わず歌麿呂を消そうとするのです!
紅蓮太夫の狂気の行く末は?
狙われた歌麿呂の運命は?
物語は悲劇的な決着を迎えます!!

というわけで1人の人間が迎える運命を描いた本作。
永井先生お得意のバトルもあるにはありますが、今回の目玉はなんといっても紅蓮太夫の心の動きです!
鬼気迫る筆致で描かれる紅蓮太夫の燃え滾る情念は凄まじいの一言。
美と醜の狭間でたゆたう非常なさだめに引き込まれること間違い無しです!

ちなみに名作「ドリアン・グレイの肖像」を原作と言うか、下敷きとして物語が作られています。
といっても舞台から設定からガラッと変えられていますので、こちらを既読の方でも新鮮な気持ちで読むことが出来るのではないでしょうか!
ただどうしてもオチが解ってしまうのがアレですけど……


永井豪先生最新作、「夢幻ウタマロ」は全国書店にて発売中です!
デーモンも機械獣もでない、人間の心に重きを置いた本作。
先生の気合を感じられる力作に仕上がっていますよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!



夢幻ウタマロ (アフタヌーンKC)
講談社
永井 豪

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