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本日紹介いたしますのはこちら、「ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた!」です。
集英社さんのホーム社漫画文庫より刊行されました。

作者は水木しげる先生。
水木先生の作品は「水木しげる」のテーマにて紹介をまとめておりますので、そちらもよろしければご覧くださいませ。

さて、本作は水木先生が69~75年に描いてきた自伝的作品をメインに集めた作品集です。
作中ではかなり生々しいことなんかもかかれていますが、あくまでフィクションなのでご注意ください!!

収録されている作品は13編。
どれもが水木先生本人、あるいは水鬼、水又、水枕といったどう見ても水木先生をモデルとしたキャラが主役であるものばかりです。
本作のタイトルこそ「貧乏時代」とつけられていますが、貸本漫画家だったころの貧乏話だけでなく、戦前のぐうたらな生活をしていたころの話や漫画家として成功した後の話、更に江戸時代の妖怪話まで幅広く網羅しています。

先ず本作で目を惹くのが「ドブ川に死す」と「漫画狂の詩-池上遼一伝-」でしょうか。
この2作、発表されたのが73年と75年と比較的近く、そのせいではないのでしょうが非常に似通った内容の話となっています。
主役が前者は新人アシスタントの豊川と言う男、後者が水木先生のアシスタント時代の池上先生となっているのですが、作中で起きる事件がほぼ同じ。
両作でそれぞれの主人公に父親が危篤という電報が届いてあわてて郷里に帰ったり(しかも水木先生の「死んだんか」という問いとそれに返す「危篤だからまだ生きてます」と言う返しまで一緒!)、
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つげ義春先生がモデルと思われるキャラが書置きを残して失踪したり……
そんな同じような事件が起こる作品ですが、豊川が先輩を敬いもせずわがままで不遜な嫌なヤツ、池上が真面目な人物と言う点は共通しており、それ故に結末もまったく正反対になります。
アイデアの再利用がわりと多い水木先生ですがこういった視点の違う作品は珍しく、興味深く読むことが出来るのではないでしょうか!

そして本作中最新の作品(といっても97年ですが)「貸本末期の紳士たち」も注目です。
こちらの作品ではなんとあのねずみ男や吸血鬼エリートのモデルとなった人物をモデルとしたキャラ(ややこしい……)が登場!!
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水木先生ファン必見のエピソードです!
さらにつげ先生や白土三平先生をモデルにしたと思われるキャラまで登場し、なんだか貧しい生活を描きつつも豪華な感じがする作品なのです!

そんな現実的な話だけでなく、十八番ともいえるオカルティックな話「招かれた三人」も収録。
水木先生がモデルのキャラが戦友とともにかつて潜り抜けてきた南方の戦地を訪問するのですが、夢の中で戦死したかつての仲間が登場し遺族のところへ訪問するように約束させられてしまいます。
その夢の中で亡霊にかじられた部分に疥癬が発生、それが……という正統派ホラー話です。
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この作品の最大の特徴は気合の入りまくった南方の風景でも亡霊に襲われる恐怖でもなく、その終わり方!
思わず「終わり!?」と叫んでしまうこと必至です!!

他にも「なめちゃん」というこれまた水木先生お得意の誰が得するんだと言った風情のエロス要素の濃い作品も用意されています。
貧乏紙芝居絵師の水鬼と貧乏講談師の鍋底が出会い、ひょんなことから仲良しに。
そこで鍋底が水鬼を誘って「なめ屋」に行くと、そのなめ屋の女にすっかり気に入られて家に押しかけられてしまうと言うお話です。
なめ屋って何?と言いますと……まぁあれですよ。
アレをなめる商売です!!
ですがそのなめ屋のなめたちゃんがまたすごい容姿の持ち主でして。
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しかもこれが獣のような勢いでなめるんですから……楽しむどころか恐怖すら感じますよ!!
まさに妖怪!!!さすが水木先生だぜ!!!
ちなみに物語自体もやっぱり水木先生らしいオチでしめられています!!

と言うわけで「水木先生」で固められた本作。
妖怪や幽霊の類は本当にオマケ程度しかありませんが、これでもかこれでもかと盛り込まれた水木節はむしろいつもの作品集以上!
もしこれらの作品が妖怪幽霊がらみ以外全て現実に起こったことだとしたら、水木先生はそりゃぁもう壮絶な人生を送ってますよ!
実際起こったら悲惨ではすまない状況を描いているにもかかわらず、悲壮さよりもむしろユーモラスな印象が強いのがまた本作、というか水木先生のすごいところ。
思う様水木ワールドに没入しましょう!!

どんなときでもめげずにバナナを食う水木先生のたくましさを堪能できる「ビビビの貧乏時代 いつもお腹をすかせてた!」は好評発売中です。
いよいよ10年3月29日始まる「ゲゲゲの女房」をひかえ、にわかに盛り上がる(予定)の水木先生関連作品。
これを機会に水木先生の半生を垣間見るのもよろしいのではないでしょうか!!
……多分「女房」のほうはある程度イケメン描写が強くなると思いますので、こちらの水木先生とまったく一致しない恐れがありますが……!
さぁ、本屋三位にそぎましょう!!


ビビビの貧乏時代―いつもお腹をすかせてた! (HMB M 6-7)
ホーム社
水木 しげる

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