本日紹介いたしますのはこちら、「走馬灯株式会社」第2巻です。
双葉社さんのアクションコミックスより刊行、漫画アクションにて不定期連載されています。
作者は菅原敬太先生。
本作第1巻の紹介は10年2月2日の記事にて記載しておりますので、お暇などございましたらご覧ください。
どこへでも、どこからともなく現れ、求める人物にその人自身の人生を見せてくれる走馬灯株式会社。
自身の人生をはっきりとした映像を見ることによって、ある者は救われ、ある者は破滅し、ある者は衝撃的な真実を知って運命を大きくかえ……
様々な人物が、いや、様々な人物に訪ねて来る走馬灯株式会社、今巻の訪問者はどんな人物なのでしょう。
人生を振り返る作品ということで、その設定が活きる物語といえばやっぱり感動ものかサスペンスでしょう。
本作ではどちらの傾向のストーリーも用意されていますが、この第2巻ではサスペンス分多目。
いいお話にもサスペンス要素が散りばめられており、読み手をドキドキさせてくれます!!
そんななか今回取り上げたいのは第2巻の最初に収録されているお話。
結婚の決まった幸せなカップルに突然突きつけられる、知らない方がよかったかもしれない過去が描かれています!!
結婚することが急に決まり、取り急ぎ実家の母親に挨拶に行くことになった隆広。
妻となる予定の結子は義理の母親となる人物にその時始めて会うことになっていて、気に入られるかとドキドキしています。
自分の母親は気さくな人だから大丈夫だと答える隆広。
その時、明日実家に帰るというのに地元の友人から奇妙なメールが届きます。
「走馬灯株式会社って知ってるか」とだけ書かれた奇妙なメールが。
実家に帰ると、母はニコニコ顔で出迎えてくれました。
結子が考えていたような難しいあれこれもなく、和やかなまま顔合わせは終わります。
とりあえず仲良く出来そうな母親と結子に隆広は一安心。
今まで女で一つで気丈に自分を育ててくれたものの、時々仏壇の前で寂しそうにしていた母にやっと孝行が出来ると胸をなでおろすのでした。
翌日、結子に地元の案内をすることにした隆広。
ですが、昨晩疲れからか早々に眠ってしまった隆広はなんかもう辛抱たまらなくなってしまい、家の裏手にある納屋の中で結子にセクロスしようと迫りました!!
なんのかんのいって熱々のお2人さん、納屋の中でおもむろに行為を始めようとするのですが、隆広の脳裏に恐ろしい記憶が蘇ってきました。
それは、かつてこの納屋の中で恐ろしい女の幽霊を見たという記憶です。
忘れかけていたトラウマをありありと思い出してしまった隆広と、怖い話が苦手な結子は気分がなえてしまい、逃げるように納屋から出て行くのでした。
その後、亡くなった方の紙人形を作って供養するというこの地方独特の風習を説明しながら仏壇を拝む隆広と結子。
いつか自分が母の紙人形を作らなきゃいけないのかと感慨深げな隆広と、1人アルバムを見て思い出に浸っている母を見て、結子は今日一日義母の手伝いをして過ごすことにしました。
折角なので親交を暖めてもらうためにも二人きりにして、隆広は先日走馬灯株式会社のことをメールしてきた友人に会いに行くことに。
友人の家に行くと、なんとその友人は実に3日ぶりに帰宅したちょうどその時らしく、奥さんと大喧嘩しています。
なんでも友人はその走馬灯株式会社に入り浸っているんだそうで、最初は懐かしくも楽しかった過去を振り返っていくことに辛さを感じ始めているんだそうです。
以前隆広と2人で河童を見た、という記憶も走馬灯株式会社の映像で見ればただのゴム手袋の見間違いでしたし、子供の時祖母が事故死したのも自分の心無い一言がきっかけだったという辛い真実も突きつけられてしまったのだそうで。
人生は真実なんて知る必要はなく、思い出のままの方が幸せなんじゃないか。
友人はそうぼやくのでした。
話半分で友人の話を聞いていた隆広。
ですが、その帰り道になんと件の走馬灯株式会社を発見してしまいます。
吸い込まれるように中に入り、手続きをして早速映像を見始める隆広。
まずはじめに大概の赤ん坊が最初に認識する人物、つまり母親の顔が大きく映し出されます。
そこに映ったのは
どうみても自分の母親ではない女性。
しかも自分であるはずの赤ん坊を「和也」と呼んでいます。
誰か別人物の人生が間違えて再生されてしまっているのかと思った隆広、他人の人生なんて興味ありませんし、今頃家では最愛の母と恋人が夕餉の準備をして待っているから時間があまりないと思い、内線で映像が間違っていると指摘しようと思い立ちました。
ですがその瞬間、映像に変化がおこりました。
和也と呼ばれた赤ん坊が寝たと思った両親が、何か用事があったのかそっと部屋から出て行きます。
しばらくして入れ替わるように入ってきた別の女性……
どうやらわかかりし自分の母親です。
そしてなんと母らしき女性はその赤ん坊をさらい、自分の家へと連れ去ってしまったではないですか!
更に母は「子供の生めない自分を捨ててあの人は他人と結婚した」「この子はあの人の子供」「これで私にも子供が出来た」「あんな女に育てられたらこの子がかわいそう」「死んでもこの子は守る」と、恐ろしげな言葉を並びたてます!!
そして和也は「隆広」と名づけられ、すくすくと成長。
隆広の記憶とも一致する出来事がちらほらと映し出され始めます。
そんなある日、「怖いお化けが出る日」だから今日は早く寝ろと言い出す母。
そんなことを言われたら逆に眠れないというもの。
暗い部屋で天井を見つめていた隆広の耳になにやら喋り声が聞こえ、その声を辿ってドアをそっと開けると、「和也」の母と「隆広」の母が口論しているではないですか!
物凄い剣幕で喧嘩している2人に言い知れない恐怖を感じた隆広は踵を返して布団に直行。
見てはいけないものを見てしまったと、記憶の奥底にこの日の出来事を封印していたのです。
そしてまた別の日。
トンボを追いかけて例の納屋の扉を開けた隆広少年。
すると中には
首を絞められて殺されている和也の母と、その横に立つ隆広の母が……!!
そう、隆広のトラウマだった幽霊とは苦悶の表情で事切れた女性の姿だったのです!
ショッキングすぎるシーンに隆広は気絶。
母は恐ろしさのあまり記憶の混濁する隆広に「納屋にはオバケが要るから近付くな」と思考を誘導。
隆広は何も知らないまま母親と暮らし続けます。
そして母は髪の長い女性型の紙人形を作り、こうすればこの世の未練や恨みを忘れると仏壇の端に置きました。
隆広が何故それだけ端に置くのかと聞くと、母は「父の横に置きたくない」とだけ答えるのでした……
母親が恐ろしい犯罪者であるという事実を目の当たりにさせられてしまった隆広。
ですが優しい母親を信じたいという気持ちが先行し、事実をありのままには受け止められません。
フラフラと家路に着く隆広の下へ迎えにやってきた母親。
母親はやはり優しく、懐かしい思い出話なんかをしながら2人は並んで帰ります。
今までの思い出がよぎったのか、隆広の胸にこみ上げる熱い気持ち……
今日見たことは忘れ、優しい母と結子がいる今を生きる決意を固めるのでした。
ですが家のどこにも結子の姿はありません。
どこに行ったのかと母に尋ねると、母から帰ってきたのはつい先ほど見た、聞いた、あの言葉だったのです!!
というわけで、幸せな話と思わせて一気に背筋の凍るようなサスペンスとなるエピソードを収録した本作。
このほか、働きもせず親にたかり、友人らしいものもおらずにチンピラ紛いの人物に金をたかられているのに世話してやっているつもりになっているという絵に描いたような最低男が恐ろしい報いを受ける話や、教育実習生に襲われたというのに誰にも信じてもらえないという女性とが苦悩する話などの人間の醜さや恐ろしさを描いたお話が収録。
更にハッピーな感じではないもののいい話系のエピソードも2編収録し、硬軟(?)織り交ぜた内容を取り揃えています。
どのお話にも共通して言えるのは、どれもが意外な展開をするということ。
こう来るの?こんな展開なの?と驚く、先の読めない物語が全編で展開!
しかも不自然でとっぴな展開ではなく、無理の無いものなのです!
人生を鮮明に振り返ることがもたらす功罪を描く、「走馬灯株式会社」第2巻は好評発売中です!!
派手さはないものの、そのストーリー展開は読み手を驚かせてくれること必至!
サスペンス的な味も強いので、夏に読む一冊としても重宝するかもしれませんよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!