本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第2巻です。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックにて連載されています。
作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。
本作第1巻の紹介は10年12月26日の記事に、それを含めた伊藤先生作品の紹介は「伊藤潤二」のテーマにてまとめてさせて頂いております。
ご興味等湧きましたら、そちらもあわせてご覧くださいませ。
さて、佐藤先生の実体験を基にした、検察とのバトルを描く本作。
北方領土問題に挑む都築議員の部下である憂木が、彼の信念と敬愛する都築議員、そして日本を守るため検察と戦い続けます。
拘留され、様々な心理的攻撃を受けながらもまったく折れない憂木。
ですが相手もさるもの、手を変え品を変えて憂木の心を揺さぶってくるのです……
信頼していた商社マン、今田が検察によって落とされ、偽計業務妨害での再逮捕となってしまった憂木。
もちろん憂木はそんな覚えはないと主張するのですが、だからといってじゃあ無実!といかないのは当たり前です。
改めての取調べとなるわけですが、このまま黙っていてはずるずると相手のペースに引き込まれていずれは心が折れてしまいかねません。
そこで憂木はとうとう反撃を試みることにしたのでした!
憂木が試みた反撃とは、つい先ほどテレビで放送されていた憂木自身の再逮捕に関する報道に関してです。
北方四島のディーゼル事業に入札できないようにした主犯が憂木だ、と報道していたのですが、そういうガセネタを流したのは検察だろう!と噛み付いたのです。
それを聞いた検察の高村は少し慌てたような表情を見せ、ちょっと待ってと言い残して取調室を去っていってしまいました。
確かにまだ何も確定していない状況で、まるで完全に犯人扱いしているような報道は偏っていると言わざるを得ません。
血相を変えた高村を見送った憂木は噛み付きすぎたかなと勝ち誇ります。
その余裕からか、部屋に残っているもうひとりの男に高村の人となりを尋ねてみました。
ところが他の検事同様えらそうなのかい?との問いに、帰ってきたのは「真面目で仕事熱心、きっちりしていて人当たりもいい」との賛辞ばかりです。
たいていの特捜検事は時間に対して変則的で、午後から取調べを始めてとっぷりと夜が暮れるまで取調べをする。
が、高村は容疑者に対してそれをやらず、特に憂木に対してはいつも夜、短時間の取調べだけ。
その話を聞いた憂木は、冷静に高村の情報を反撃の手段にしようと分析。
それで簡単に評価を変えようとは考えません。
すると程なくしてそこへ高村が帰ってきました。
彼の口から出てきたのは、電話で文句を言ってきたと言う言葉。
検察で余計なことを漏らすやつがいるから、難しい性格をした憂木があばれて取り調べにならないよ!と告げてきたのだそうで。
きむずかしやの暴れん坊呼ばわりされた憂木はむっとした表情を浮かべますが、高村は今日の取調べはなしにするから怒らないでよとおどけて見せます。
上も暴れている=黙秘はしていない、ととってくれ一安心しているんだそうで……
そして口のすべりが良くなってきた高村は、「駐車違反と同じ」などと言い出します。
今田の起こした犯罪に対し、「なんて大罪を起こしたんだコラ!」とは思っていない、談合は日本の文化で本気で企業が価格競争なんかしたら会社がつぶれまくる、必要悪だ。
だから駐車違反のように皆やっているし、みつかったらごめんなさいって素直に謝りさえすれば問題ないよ……と!
その言葉は自分が絶対に悪事を働いていないと確信している憂木にとっては、火に油を注ぐようなものです。
いい加減にしろ、そうやって言葉巧みにだまして罪を認めさせようとするんだろう!と激高します!
高村もその様子を見て大きくひとつため息。
今日も憂木を落とすことができなかったと言うわけです。
が、今日の戦いはこれでは終わりません。
いえ、戦いではなく、憂木からのお願いというか、注意がひとつ投げられたのです。
今田を落としたとき、商社マンはアイスクリームのようにすぐ溶ける、と形容した今田。
商社マンがアイスクリームのように溶けやすいのなら、自殺に追い込むようなことはするな。
憂木は刺すような眼光と共にそう念を押すのです。
その言葉は、決して過ぎた猜疑心から生まれたものではないことが数日後にわかることになります。
裁判所に移送されるとき、たまたま見かけることとなった今田。
その姿は見る影もなくやせ細り、国益のための夢に燃えていた在りし日の彼からすると見る影間ない姿になっていたのです。
憂木はその背を見送りながら、声に出さないエールを送ります。
この拘置所が人生の終着点じゃない。
ここからが出発点なんだよ!と……!
この後も憂木は戦い続けます。
ある程度の自由があり、その間に勉強もできればデザートなんかも注文できる。
更に食事もなかなかのものが出るこの生活を完全に受け入れ、「拘置所は楽しい!」と開き直るのです!
ですが周囲の状況は良くありません。
一見話がわかるようにも見える高村は、その奥に鋭い観察眼を持っている油断なら無ない相手。
さらに悪いことに、とうとう都築議員が逮捕されることになってしまうのです。
高村は様々な材料を使って憂木を追い詰めようとしてきます。
憂木もまたハンガーストライキ等で対抗するのですが……
果たしてこの終わりの見えない検察との戦いを潜り抜けることができるのでしょうか?
事体は好転する気配すら見せないのです……!
というわけで、行き詰る攻防が繰り広げられる本作。
現実の世界でこの事件の真相がどうなのかはおいておいて、本作では絶対の正義(と本人は確信)を背にした主人公が、孤独に戦う様を淡々と描く作品になっています。
揺るがない精神力で、拘置所生活も難なく(?)すごし、絶対的不利であるはずの検察相手にも引かない憂木の姿には思わず肩入れしてしまうこと必至でしょう!!
ですが問題は着々と崩されていく城壁……周囲の状況です。
都築はともかくとして、かつての仕事仲間などははやくも憂木にすべてを擦り付けて事件を終わらせてしまおうと言う動きを見せてきています!
無論そのもと仕事仲間は国家の組織であるわけで。
もはや憂木の周りは弁護士以外、敵しかいないといっても過言ではないのです!
もちろんその敵の手は同じく拘置されている都築にも伸ばされていて……
緊迫の状況は続き、読者をより引き込むのです!!
あと注目したいのは、結構豪華な拘置所のお食事。
なんかシャバよりいいものでてるんじゃ……と思う献立は、あなたの興味をそそっちゃうこと間違い無しですよ!
敵だらけのなかでの孤軍奮闘、「憂国のラスプーチン」第2巻は全国書店にて発売中です!
伊藤先生の本職(?)であるホラー的描写はなりを潜めている今巻。
ですがその分、より人間の心理描写に力が割かれており、物語に没入できること請け合いですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!