本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第3巻です。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックにて連載されています。
作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。
本作の紹介は「伊藤潤二」のテーマにてまとめておりますので、よろしければそちらもあわせてご覧ください。
さて、佐藤先生の実体験を基にして息詰まる検察との意地のぶつかり合いを描いている本作。
第2巻では交友があった人物や、ついには尊敬する都築議員も逮捕されてしまい、ますますその戦況はかんばくなくなってきてしまった憂木。
本巻でもますます執拗に攻めてくる高村との舌戦や、憂木の体験してきた外交の修羅場などを描きます!
その日の取調べは一風変わった開幕を迎えました。
開口一番高村が発したのは、深々と頭を下げての謝罪!
憂木をいろいろ理由をつけて捕まえたが、そのどれもが動機がない、リスクとリターンがまったくつりあわないと言い出すのです。
じゃあ無実じゃん、と当たり前の反応を返す憂木ですが、勿論それは高村の作戦。
それでもこれは国政捜査だから、これじゃ勇気を捕まえた意味が無い、この上都築の事件を作れないとなると申し訳ないから、「もう一件我々で何か作りたい」と言うではないですか!
無いはずの事件を作りたいと聞いては憂木も当然、アンタおかしいんじゃないかと怒らざるを得ません。
高村は一転していつものいやらしい笑みを浮かべながら、そこで憂木のことをもっと知りたいと語るのでした。
高村は憂木の行動理念がいまひとつ理解できませんでした。
女、風俗、不動産、不正蓄財。
都築の通帳も勇気の通帳もキレイなモノで、それらのよろしくない金の動きが一切なく、それどころか私生活や私財と注ぎ込んでまで北方領土問題に挑んでいたのですから。
その動機は「都築にほれ込んだから」だと憂木はいつも答えるわけですが、高村はそれだけではないだろうと突っ込んで聞きます。
すると憂木はもう二つの動機を口にしたのです。
ひとつはノンキャリアから上り詰めた事からもわかる、外交官としての野心。
そしてもうひとつは、本橋、田淵、堀の三人の総理大臣の熱意に感動したからだと言うのです。
それを聞いた高村は意外だという顔つきをします。
勇気のようなインテリなら、総理なんかと馬鹿にしていると思っていたからです。
ですが憂木はとんでもないとばかりにそのエピソードを語り始めたのでした。
まずは本橋虎太郎総理。
彼は都築から時のロシア大統領、エリツィンが彼の次女、タチアーナに裏切られていることを知りながらもあえてだまされている不利を続ける、リア王のような一番愛されたいものに愛されない喜びを知る者である、と憂木に聞かされて外交方法を再考しました。
どうやら本橋にも信頼していた部下に裏切られた過去があったようで、彼に共感を覚えて駆け引き無用の個人的信頼関係を築こうとして成功。
外交を有利に進めたんだそうです。
また、彼は会談に挑むときも官僚が用意した発言要領をほとんど見ない、抜群の記憶力ももち合わせており、明らかに外交でロシアをリードしていたのです!!
続く田淵栄三総理は、温厚そうに見えて熱血漢だったとか。
あるとき本橋とエリツィンが信頼の証にキスをしていたシーンを思い出し、どうやってやるのか教えてくれと憂木と都築の2人に再現させました。
嫌々ながらも両頬にチュッチュとキスし、最後に意を決して口同士で熱いベーゼを交わす2人。
ですが田淵はいまひとつ納得できないらしく、ついには自分と憂木で再現してみようと言い出したのです!!
一方で本橋とは違い、官僚の用意した発言要領をすべて丸読みしていた田淵。
一見すると記憶力が悪いのか、官僚の言いなりなのかと思われがち。
しかし実際は準備段階で納得のいかないことがあるととことん納得のいくまで突き詰めていくタイプだったのだそうです。
最後の堀敏朗総理。
世間では評判が悪かった彼ですが、憂木の印象は違います。
次期総理候補が堀内閣打倒に立ち上がった「古藤の乱」。
その勢いもあって総理としての地位が風前の灯となった堀。
彼がプーチンとの会議の前日に憂木に対してこんなことを言ったのです。
自分はもう駄目かもしれない。
だが主将が古藤になっても、自分に使えるのと同じ気持ちで仕えてくれ。
憂木は日ロの関係のために必要だ、古藤になった後も頼むぞ、と!
自分の地位を失っても、そのあとの日ロ関係を憂えていた堀。
そんな状態でも日ロ首脳会談を成功させ、プーチンと個人的信頼関係を築き上げた彼もまた、憂木にとっては命を懸けて仕えるべき存在だったのでした。
高村はそんな話を聞き、それほど三総理に近く接したなら嫉妬を買うよなぁ、とチクリとやった後、歴代総理の共通点ってあるのかと尋ねて来ました。
憂木はまずカリスマ性と返答。
その答えには高村はいまいちピンと来なかったようですが、憂木はさらにこう続けました。
「寂しい人たちだった」と。
自分の知る総理は誰もが国家のため身を削る立派な人たちだった。
それなのにいつもマスコミは言動や行動を揶揄し、笑いものにする。
いつも孤独な人たちだった、と……
というわけで、総理の逸話が語られた今巻。
モデルとなった実在の総理たちのイメージと照らし合わせたりすると、より興味深く読める内容でした。
勿論このあとも様々な逸話や高村との戦いは続きます。
外務省にいたと言う幽霊とその幽霊を作り出したホトケ。
世間を先導するマスコミの偏向報道。
ついに突き止められてしまった続きから渡されたある金を巡っての戦い。
エリツィンを巡る権力闘争で暗躍する謎の男、カルテンブルンナー。
様々な衝撃的な事件と、息詰まるやり取りが描かれるのです!!
今巻もグイグイと読ませる「憂国のラスプーチン」第3巻は全国書店にて発売中です。
政治を取り扱い、更に実在の人物をモチーフにしているためにとっつきづらい印象もある本作。
内容の是非はともかく、引き込まれてしまう内容であることだけは確実!
物は試し、敬遠していた方も読んでみてはいかがでしょうか!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!