本日紹介いたしますのはこちら、「焔の目(ほむらのめ)」第1巻です。
双葉社さんのアクションコミックスより刊行、漫画アクションにて連載されています。
作者は押切蓮介先生。
押切先生の他作品等の紹介は、「押切蓮介」のテーマにてまとております。
お時間などございましたら併せてご覧いただけますと幸いです。
さて、本作は架空の世界観における日本を描く作品です。
押切先生の作品は、自伝的漫画やゲームを扱った漫画でない場合、オカルト、サスペンスなどのホラー要素を強く打ち出しているものがほとんどです。
ですが本作では、ホラー要素はほぼカット!
陰鬱な世界観と、アクション要素が主成分となっているのです!!
1929年。
中央アジアに位置する小国、「ショルゴール」は、突如として世界50カ国に宣戦布告します。
歴史の裏側で、密かに戦力を蓄え続けていたショルゴールは、圧倒的な武力で各国を次々に撃破。
その敗戦国に「自由な服従」か、「無残な死」を迫り、多くの国家を手中に収めてきたのです。
日本とも1941年に開戦を迎えたのですが、健闘むなしく1945年に敗北。
多くの国々と同じ末路をたどるかと思われましたが、ほかの国と違ったのは
時の指導者が服従でなく、自ら死を選んだことでした!
日本人の誇りを見せ付けたものの、それは同時に日本国全体を滅びへと導くことになってしまうのです。
そんな日本では、みな生きるために必死になっています。
女達もその例に漏れず……ここ、「花見月」でも新たに一人の女性が雇用を求めてやってきました。
ですが彼女は、この店が何をしているか知らず、衣食住と月三万円の収入があることだけを聞いてきていたのです。
花見月があるのは、赤線地帯。
政府公認で慰安業務が行われている土地……
すなわち、公式の売春宿なのです!
と言っても相手はもっぱらショルゴールの兵達。
我が物顔で日本を闊歩する彼らを相手に収入を得ているのです。
それだけに、ショルゴールの兵達は相当高圧的な態度を取ってきて、辛い日々を強いられているようです。
仕事の内容を知り、物怖じする女性を応対していたのはこの宿の主、恭子。
今の時代、鬼だろうが蛇だろうが媚を売らなければ生きていけないよ、と恭子は冷たく言い放ちます。
ですがそんな時、その鬼であるショルゴールの兵がやって来てしまいました。
恭子は女性にもう帰りなと促し、女性もそそくさと走り去ろうとします。
ですがその兵、ガレントは女性の髪をつかみ、私の国の女性は貞操観念が低い。それに比べて日本の女性はいい……と、丁寧な言葉とは裏腹にその欲望をむき出しにするのです!
そんなガレントの行動に水を差すかのように、新たにそこへ一人の人物が姿を現しました。
ショルゴールの民のような赤い瞳を持った、まだ年端も行かぬ少女。
沙羅と呼ばれたその少女にガレントの興味は移ったようです。
彼女は孤児で、恭子が面倒を見ていおり、ここの雑用として使っているんだそうで。
あくまで雑用であり、彼女は商品ではないと恭子は言いいます。
……が、ガレントはまだ興味を失っておりません。
埋め合わせはする、と恭子はフォローし、沙羅はそのまま立ち去っていくのですが……
沙羅は自分の寝床となっている、海辺の小さな物置小屋に戻りました。
座り込んで何か物思いに耽っていたようですが、そんな彼女の平穏を崩す人物が現われます。
……そう、
ガレントです。
私は執念深いんです、と語るガレントは、わざわざ沙羅のあとをつけてこの場を探り当てたんだとか。
そして彼はその異常性を隠しもせずに語り始めます。
長い間この国と戦ってきたが、時が経つにつれて命をかけて勝ち取った勝利の余韻も薄れていく。
ならば生涯残る思い出を自分で作ればいい。
母国に戻るまでに、百人の初めてを奪う!
これくらいは神だって許すはずだ!
あまりに身勝手な告白に、恐怖して逃げ出す沙羅。
進駐軍に逆らえばどうなるかわからない。
そんなことは解っていても、こうなっては抵抗せざるを得ないでしょう!
ガレントの左手に噛み付いて暴れる沙羅ですが、それはガレントに怒りの火を灯すだけに終わってしまうのです。
容赦なく沙羅に拳を振り下ろし、まだ日本人はショルゴール人と対等だと思っているのか、貴方達の地獄はこれからだ、やがて日本人はショルゴール人相手に商売すら出来なくなる……
ボコボコに殴られ、髪の毛も引きちぎられてぐったりとする沙羅。
それでもガレントは手を休めず、ボロ雑巾にしてやる、と野獣のような笑顔を浮かべるのです。
が、その瞬間!!
ガレントの顔が大きく歪み、絶命!!
そしていつの間にかその傍らに大柄な胴着の男が立っており、このような男達に日本は敗れたのか!と言い放ったのです!!
突如として現れた胴着の男。
彼が放ったのは、一撃必滅拳なる名の必殺拳でした。
彼との出会いが沙羅の運命を大きく変えることになるのですが……
同時に日本とショルゴールの関係性も大きく変化。
沙羅だけでなく、日本中が大きな変革の時を迎えるのです!
それも、絶望への変革の時を!!
と言うわけで、沙羅と胴着の男、クロの物語を描く本作、
記事では書いていませんが、冒頭では一撃必滅拳を振るう謎の少女が日本を変えるために戦っている6年後のシーンが描かれています。
素直に考えればその少女は、沙羅が成長した姿でしょう。
まだ押さなく、無力な少女である沙羅が、クロと出会いどうやってその姿に変わっていくのか?
そのあたりを描く物語になることはおそらく確実と言えるでしょう!
どんな物語が紡がれていくのかが気になるところですが、今巻ではクロの常軌を逸した強さと、ショルゴール人の非道さ、そして荒れ果てた国でのすさんだ人々の醜さが中心に描かれているのです!
激動に次ぐ激動が予想される本作、6年後に姿のないクロの行く末も含め、先の展開が楽しみですね!!
押切先生の挑む新境地、「焔の目」第1巻は好評発売中です!
ホラー要素なしとは言え、押切先生がやはり得意とするどろどろした人間の悪意とアクション要素をふんだんに取り入れている本作。
得意分野も取り入れたオリジナルの世界観とは言え、戦後と言う難しい次代に挑んでいる、押切先生の意欲作は今後も要注目です!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!