本日紹介いたしますのはこちら、「ぶかつ麺!ジロリアンはじめました」です。
集英社さんのホームコミックスより刊行、webサイト「ぷら@ほーむ」にて連載されています。
作者は原作がボブ吉村先生、漫画が吉田健二先生。
ボブ先生はフリーの編集者で漫画原作者だそうですが、本作以外の活動は不明です。
吉田先生は週刊少年マガジンでデビューした後、03年よりコミックバンチで「日本国大統領桜坂満太郎」を連載、こちらは16巻を数える長期連載作となりました。
その後様々な歴史漫画、ドキュメント漫画などを描いてきた後、11年よりホーム社さんのweb漫画サイトにて「がっつりラーメン戦記 ふろむJ」を連載開始。
その「ふろむJ」が単行本にまとまるに当たり、改題したのが本作となります。
さて、本作は改題前のタイトルが示すように大盛り系、がっつり系のラーメン店のレポート漫画です。
近年ではメガ盛りだのといってこのような超大盛り系のお店が話題に上るようになってきましたが、らーめん業界では古くからとある店が伝説のように崇められて(?)おりました。
リビングレジェンドガッツリラーメンストア……ラーメン二郎。
本作はそのラーメン二郎に代表される、様々ながっつり系ラーメン店に突撃していくのです!
とある喫茶店で、ボブ先生と吉田先生が打ち合わせをしておりました。
ラーメン好きですよね、とふってくるボブ先生に対し、好きっすよと答える吉田先生。
吉田先生は山口出身なんだそうで、白濁スープにつるりとした細めん、紅しょうがをアクセントにゴマと辛子高菜でまた一段と味が引き立つ、トンコツらーめんが大好物なようです!
確かにあの独特なクセにはまる人の多いトンコツらーめんもなかなか乙なもの。
ですがボブ吉村が提案したのはまったく別のジャンルのラーメンだったのです。
そう、それこそが……がっつり系ラーメン!!
吉田先生が連れて行かれたラーメン屋は、人々がずらりと行列を作っていました。
こんなに並んでいるラーメン屋は初めてだと漏らす吉田先生ですが、ボブ先生はいつもここはこんなもんだ、この並びなら一時間待ちと言うところか、と冷静な分析をしてくれました。
一時間も並んでラーメンを食うのか……と、未体験の行動に不安を募らせる吉田先生。
さらにその不安をさらにかきたてる、謎の出来事が襲い掛かって来るではないですか!!
行列のお客さんひとりひとりに、店員らしき人物が何か質問しています。
「大と小、どちらですか?」。
並んでいるお客さんは当然のように大だの小だのと答えていまして。
これはどういうことかとボブ先生に尋ねると……
ラーメンの大きさだ、少しでも行列を早く捌くために見込みで麺を茹でるんだ、と解説してくれました。
初めてなら小の方が飯田ロウと言うアドバイスに従い、「小で」と力いっぱい店員さんに告げる吉田先生。
これで何とか、一見さんには敷居の高いラーメン屋さんの第一関門を突破することが出来たのでした!
ようやく店に入ったかと思うと、食券の販売機がまた謎です。
「小ラーメン」「小ぶた」「小ぶたダブル」「大ラーメン」「大ぶた」「大ぶたダブル」。
また良くわからない名称ばかりが躍っているのです。
迷う吉田先生に、ボブ先生が与えたアドバイスは「腹減ってるなら小ぶた、そうでないなら小ラーメンにしておけ」と言うものでした。
なんだか良くわからないまま、小ラーメンを購入する吉田先生。
すると出てきたのは、なんかプラスチックの小さな板でした。
これが食券……?
とにかくわけのわからないことだらけですが、その食券らしき板をカウンターのちょっと高くなったところにおいて座るのです。
すると、またまたわけのわからない質問が投げかけられます。
店員さんが尋ねる、「ニンニクは?」と言う問いかけに対し、常連と思しき皆さんは口々に「ヤサイ」「ヤサイニンニクアブラカラメ」「ナシで」「ヤサイマシ」などと、別々のぜんぜん違う答えを返すではないですか!
これは、こういったガッツリ系では定番のトッピングの有無を問う呪文詠唱なんだそうで。
アブラは背アブラの追加の是非、ヤサイはその量の増減、カラメはラーメンの味を濃い目にするかどうか、ニンニクはそのままにんにくを追加するかどうか……
そういった無料のトッピングをどうするかその場で聞いているのです!
初心者はとりあえずにんにくだけ入れとけと言うボブ先生の言葉に従い、ニンニクと答える吉田先生、そして自信満々に「ヤサイニンニクマシマシアブラカラメ」と、いわゆる全マシを頼むボブ先生!
程なくして目の前に運ばれてくるラーメン。
それは
山のように野菜が積み上げられた、それはもう見事なガッツリ系ラーメンです!
そしてボブ先生の前のそれは
さながらどんぶりの上のチョモランマ……!
そんなの食えるんですかと素朴な疑問を口にする吉田先生ですが、ボブ先生はモタモタしてると全部食えないぞと質問をシャットアウト!
周りを見れば確かに他のお客さんは一心不乱にラーメンをすすっていまして……
吉田先生も意を決してそれに倣うのです!!
チャーシューと言うにはあまりにも荒々しい、分厚い肉塊。
小麦の味を感じさせるぶっとい麺。
そしてこれでもかと言うぐらいのアブラ、濃すぎるんじゃないかと言うくらいのしょうゆ味。
それらは決して高級さや、お上品さと言ったものは欠片も感じられない、B級、C級感の迸る代物です。
ですがそれだと言うのに不思議とバラバラに見えるそれらの味や食感が調和し、不可思議なハーモニーを醸し出す癖になる一品になっている……!!
不思議と箸は進んでしまい、ひたすらに食べ進める吉田先生。
ボブ先生は若いころはいけたのにと言いながら、どんぶりの中に色々残った状態で店を出てしまいました。
じゃあオレは完食しなければ!!
そんな思いに背中を押され、必死に箸を進めて行くうちに
とうとう完食!!
満腹感や味の感想を超えた、えも言われぬ達成感を味わうことが出来たのでした!!
というわけで、名前こそ言及されていないものの明らかにあの二郎と思しき店舗でスタートを切った本作。
これをきっかけに、多くのガッツリ系ラーメン店に挑んでいくことになります!!
意外なくらい多くの店が出ているガッツリ系ラーメン店を、その見せ独自の注文方法や味の傾向なんかを解説しながらレポートする。
そのため、二郎しか知らない生粋のジロリアンも、興味はあってもなかなか足を運ぶことの出来ない初心者の方も楽しめる1冊になっているのです!
ラーメン二郎は二郎と言う食べ物であって、ラーメンではない……そんな言い方をされる時代もありましたが、今となってはすっかりガッツリ系ラーメンも市民権を得てきました。
既に体験済みの方も、これから体験してみたいと言う方も、この一冊で背中を押してもらうのもいいかもしれません!!
ガッツリラーメン入門書、「ぶかつ麺!じろりあんはじめました」は全国書店にて発売中です!!
巻数表示はないものの、執筆側の方々はまだまだ続巻を出す気まんまんで、webサイトではバリバリ連載中の本作。
良くも悪くもガッツリ系らしい、女っ気が悲しいくらいにない本作ではありますが、表紙だけでなく本作最後のほうで女性レギュラーの参入も示唆!
うまいこと本作が売れれば、彼女の活躍する第2巻が発行されることでしょうが、果たして……!?
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!