3階の者だ!!

DEBがお送りするネタバレありのコミックス紹介ブログです。 短編物では一話にスポットを当てて、長編物ではこの後どうなるの?と言うところまで紹介しているつもりです! ※作品記事につきまして、権利者様が問題があると感じられた場合はご一報ください。対応いたします。

2012年07月

画像

本日紹介いたしますのはこちら、「ぶかつ麺!ジロリアンはじめました」です。
集英社さんのホームコミックスより刊行、webサイト「ぷら@ほーむ」にて連載されています。

作者は原作がボブ吉村先生、漫画が吉田健二先生。
ボブ先生はフリーの編集者で漫画原作者だそうですが、本作以外の活動は不明です。
吉田先生は週刊少年マガジンでデビューした後、03年よりコミックバンチで「日本国大統領桜坂満太郎」を連載、こちらは16巻を数える長期連載作となりました。
その後様々な歴史漫画、ドキュメント漫画などを描いてきた後、11年よりホーム社さんのweb漫画サイトにて「がっつりラーメン戦記 ふろむJ」を連載開始。
その「ふろむJ」が単行本にまとまるに当たり、改題したのが本作となります。

さて、本作は改題前のタイトルが示すように大盛り系、がっつり系のラーメン店のレポート漫画です。
近年ではメガ盛りだのといってこのような超大盛り系のお店が話題に上るようになってきましたが、らーめん業界では古くからとある店が伝説のように崇められて(?)おりました。
リビングレジェンドガッツリラーメンストア……ラーメン二郎。
本作はそのラーメン二郎に代表される、様々ながっつり系ラーメン店に突撃していくのです!

とある喫茶店で、ボブ先生と吉田先生が打ち合わせをしておりました。
ラーメン好きですよね、とふってくるボブ先生に対し、好きっすよと答える吉田先生。
吉田先生は山口出身なんだそうで、白濁スープにつるりとした細めん、紅しょうがをアクセントにゴマと辛子高菜でまた一段と味が引き立つ、トンコツらーめんが大好物なようです!
確かにあの独特なクセにはまる人の多いトンコツらーめんもなかなか乙なもの。
ですがボブ吉村が提案したのはまったく別のジャンルのラーメンだったのです。
画像

そう、それこそが……がっつり系ラーメン!!

吉田先生が連れて行かれたラーメン屋は、人々がずらりと行列を作っていました。
こんなに並んでいるラーメン屋は初めてだと漏らす吉田先生ですが、ボブ先生はいつもここはこんなもんだ、この並びなら一時間待ちと言うところか、と冷静な分析をしてくれました。
一時間も並んでラーメンを食うのか……と、未体験の行動に不安を募らせる吉田先生。
さらにその不安をさらにかきたてる、謎の出来事が襲い掛かって来るではないですか!!
行列のお客さんひとりひとりに、店員らしき人物が何か質問しています。
「大と小、どちらですか?」。
並んでいるお客さんは当然のように大だの小だのと答えていまして。
これはどういうことかとボブ先生に尋ねると……
ラーメンの大きさだ、少しでも行列を早く捌くために見込みで麺を茹でるんだ、と解説してくれました。
初めてなら小の方が飯田ロウと言うアドバイスに従い、「小で」と力いっぱい店員さんに告げる吉田先生。
これで何とか、一見さんには敷居の高いラーメン屋さんの第一関門を突破することが出来たのでした!

ようやく店に入ったかと思うと、食券の販売機がまた謎です。
「小ラーメン」「小ぶた」「小ぶたダブル」「大ラーメン」「大ぶた」「大ぶたダブル」。
また良くわからない名称ばかりが躍っているのです。
迷う吉田先生に、ボブ先生が与えたアドバイスは「腹減ってるなら小ぶた、そうでないなら小ラーメンにしておけ」と言うものでした。
なんだか良くわからないまま、小ラーメンを購入する吉田先生。
すると出てきたのは、なんかプラスチックの小さな板でした。
これが食券……?
とにかくわけのわからないことだらけですが、その食券らしき板をカウンターのちょっと高くなったところにおいて座るのです。
すると、またまたわけのわからない質問が投げかけられます。
店員さんが尋ねる、「ニンニクは?」と言う問いかけに対し、常連と思しき皆さんは口々に「ヤサイ」「ヤサイニンニクアブラカラメ」「ナシで」「ヤサイマシ」などと、別々のぜんぜん違う答えを返すではないですか!
これは、こういったガッツリ系では定番のトッピングの有無を問う呪文詠唱なんだそうで。
アブラは背アブラの追加の是非、ヤサイはその量の増減、カラメはラーメンの味を濃い目にするかどうか、ニンニクはそのままにんにくを追加するかどうか……
画像

そういった無料のトッピングをどうするかその場で聞いているのです!
初心者はとりあえずにんにくだけ入れとけと言うボブ先生の言葉に従い、ニンニクと答える吉田先生、そして自信満々に「ヤサイニンニクマシマシアブラカラメ」と、いわゆる全マシを頼むボブ先生!
程なくして目の前に運ばれてくるラーメン。
それは
画像

山のように野菜が積み上げられた、それはもう見事なガッツリ系ラーメンです!
そしてボブ先生の前のそれは
画像

さながらどんぶりの上のチョモランマ……!
そんなの食えるんですかと素朴な疑問を口にする吉田先生ですが、ボブ先生はモタモタしてると全部食えないぞと質問をシャットアウト!
周りを見れば確かに他のお客さんは一心不乱にラーメンをすすっていまして……
吉田先生も意を決してそれに倣うのです!!

チャーシューと言うにはあまりにも荒々しい、分厚い肉塊。
小麦の味を感じさせるぶっとい麺。
そしてこれでもかと言うぐらいのアブラ、濃すぎるんじゃないかと言うくらいのしょうゆ味。
それらは決して高級さや、お上品さと言ったものは欠片も感じられない、B級、C級感の迸る代物です。
ですがそれだと言うのに不思議とバラバラに見えるそれらの味や食感が調和し、不可思議なハーモニーを醸し出す癖になる一品になっている……!!
不思議と箸は進んでしまい、ひたすらに食べ進める吉田先生。
ボブ先生は若いころはいけたのにと言いながら、どんぶりの中に色々残った状態で店を出てしまいました。
じゃあオレは完食しなければ!!
そんな思いに背中を押され、必死に箸を進めて行くうちに
画像

とうとう完食!!
満腹感や味の感想を超えた、えも言われぬ達成感を味わうことが出来たのでした!!

というわけで、名前こそ言及されていないものの明らかにあの二郎と思しき店舗でスタートを切った本作。
これをきっかけに、多くのガッツリ系ラーメン店に挑んでいくことになります!!
意外なくらい多くの店が出ているガッツリ系ラーメン店を、その見せ独自の注文方法や味の傾向なんかを解説しながらレポートする。
そのため、二郎しか知らない生粋のジロリアンも、興味はあってもなかなか足を運ぶことの出来ない初心者の方も楽しめる1冊になっているのです!
ラーメン二郎は二郎と言う食べ物であって、ラーメンではない……そんな言い方をされる時代もありましたが、今となってはすっかりガッツリ系ラーメンも市民権を得てきました。
既に体験済みの方も、これから体験してみたいと言う方も、この一冊で背中を押してもらうのもいいかもしれません!!

ガッツリラーメン入門書、「ぶかつ麺!じろりあんはじめました」は全国書店にて発売中です!!
巻数表示はないものの、執筆側の方々はまだまだ続巻を出す気まんまんで、webサイトではバリバリ連載中の本作。
良くも悪くもガッツリ系らしい、女っ気が悲しいくらいにない本作ではありますが、表紙だけでなく本作最後のほうで女性レギュラーの参入も示唆!
画像

うまいこと本作が売れれば、彼女の活躍する第2巻が発行されることでしょうが、果たして……!?
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


ぶかつ麺! ジロリアンはじめました (ホームコミックス)
ホーム社
2012-07-20
吉田 健二

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ぶかつ麺! ジロリアンはじめました (ホームコミックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



画像

本日紹介いたしますのはこちら、「それでも町は廻っている」第10巻です。
少年画報社さんのYKコミックスより刊行、ヤングキングアワーズにて連載されています。

作者は石黒正数先生。
本作は「石黒正数」のテーマにて紹介記事をまとめておりますので、ご一緒にご覧くださいませ。

さて、歩鳥と愉快な仲間達の日常を描く本作。
歩鳥のほほえましいアホさ加減もまた乙な物ですが、他にも多くの魅力的なキャラクターが登場します。
その中で今回は、紺先輩の新たな一面が垣間見れる「フタバ・デッドエンド」を紹介したいと思います!!

夏休みも終わりが迫ったある夏の日。
歩鳥は夏らしいイベントがなかったなぁ、などと客ゼロ状態のシーサイドでぼやいておりました。
みんなで旅行行ったじゃない、とタッツンに突っ込まれるのですが、埋蔵金探し(第4巻参照)は秋でもできるよと時事イベントとしては成立していないと反論するのです。
とは言え歩鳥が求めている時事イベントと言うのは、常夏のリゾート地でサーフィンして殺人事件に巻き込まれて解決する、と言ったようなまぁありえない出来事でして。
夢物語にもほどがあるお話をしているうちに、今日もまたアルバイトは終わるのでした。

帰り際、いきなり歩鳥はタッツンにゲームソフトを手渡されます。
なんでも紺先輩からの借り物なんだそうですが、今日中に返さなければならないんだそうで。
ですがタッツンは今日急いで帰らなければならないらしく、代わりに今日中に返しておいてくれとお願いされてしまうのです。
基本的にヒマヒマな歩鳥は承諾するのですが、同時に後ろからばあちゃんが声をかけてくるではないですか。
急いでやることを思い出したからちょっと手伝ってくれ、と!
良くわかりませんが、タッツンが急いで帰るからには手伝えるのは自分だけ。
仕方なく手伝うのですが……ばあちゃんのやらなくてはならないこととは、毛糸の片付けと言うどうでもいいとしか思えないことだったのです。

最後の一仕事を終えて紺先輩の部屋を訪ねる歩鳥。
ノックして返事を聞かないままドアを開けると、そこには驚きの光景が広がっていたのです!!
画像

血を流して倒れる女と、その前で呆然と膝をついている紺先輩……
まったく事態が把握できない歩鳥ですが、声をかけると紺先輩は歩鳥に泣き付いてきて事情を説明してくれたのでした。

帰宅してドアを開けたら知らない女がいて、襲い掛かってきた。
思わず置物を手にして殴ったら、女は死んでしまったんだ。
いつになくしおらしい紺先輩の説明を聞き、歩鳥は紺先輩の肩を掴んで先輩は悪くない、悪いわけない!と力強い言葉を投げかけてきました。
そして何たることか、歩鳥は死体を隠そうと言い出すのです!
殺人事件と言うのはしたいが見つからなければ起きていないのと同じなんだ!自分も手伝う!
共犯になってしまうと言う紺先輩の心配にも動じず、とりあえずコンビニに行って縛る紐なんかを買ってきてくれと促す歩鳥。
紺先輩は大人しくそれに従うのですが……歩鳥の狙いは死体を隠すことではなかったのです。
寝ている女にこう語り掛けました。
画像

「タッツン、バレてんだよ」と!
程なく起き上がる女……そう、この女はタッツンの変装!
すべてドッキリだったと言うわけです!!

タッツンや紺先輩は歩鳥のことを甘く見ていました。
付き合っている身からすれば恐らくイヤになるくらいアホの子な歩鳥ではありますが、なんと言っても彼女はミステリマニア。
殺人事件ネタの違和感には過敏に反応するのです!
突然ふって湧いた「今日中にゲームを返す」と言う用事と不自然なばぁちゃんの時間稼ぎ。
そして、ドアを開けたら女がいてびっくりと言う割には、奥のほうにおいてあるはずの置物が凶器なのか。
人殺しをしてしまって放心していたはずなのに、クーラーも電灯もついている……
そのすべてが、この殺人事件が狂言であることを導き出す要因となっていたのです!!
しかし歩鳥もこれでおしまいじゃ面白くなかろう、とドッキリ継続を提案します。
このまま騙されたふりをして、紺先輩に逆ドッキリを仕掛けよう、と!!

間もなく帰ってきた紺先輩をうまいこと誘導し、死体の手足を縛って寝袋に放り込む歩鳥。
そして海に捨てるか、と亀井堂の静さんに車を出してもらうことになりました。
静さんは深い詮索もせず車を出してくれ、海へと無事たどり着きます。
そして歩鳥と紺先輩は寝袋の両端をそれぞれ掴んで、大きくスイングさせながら放り込もうとすると……
画像

ここで流石の死体役がギブアップ!
歩鳥は紺先輩より先にタッツンがネを上げたか!と笑うのでした。

これも歩鳥の作戦でした。
紺先輩はどこまで死体遺棄に付き合うのか?タッツンはどこまで大人しくしているのか?
どちらに転んでも楽しめる、逆ドッキリを催していたのです。
ひとしきり勝ち誇り、優越感に浸ったあとにいい加減タッツンを助けてやろうと寝袋をあける歩鳥。
中から出てくるのは暑さとしてやられた顔でげっそりしたタッツン
画像

ではなく、まさかの針原さんだったのです!!
紺先輩と針原さんは大成功と大喜び!
歩鳥が車を呼ぶためにそとにでたスキに、最初からクローゼットに隠れていた針原さんがタッツンと入れ代わる。
実はここまでが、静さんも含めた全員グルのドッキリ大作戦だったのです!!
やっぱりぎゃふんと言わされたのは予定通り、キャラにも合った歩鳥だったわけで。
歩鳥は覚えてろと三下の捨て台詞を吐き、紺先輩たちはにっこにこ。
忘れられない夏のイベントになっただろうと、一同はおなか一杯楽しんだのでした!!

……で、家に帰ってきた紺先輩。
楽しかったと言いながらクローゼットを開けると、そこからは
画像

謎の女が……!!
まぁこれは展開上中座したタッツンの変装姿なわけですが。
思わず悲鳴を上げてしりもちをついてしまう紺先輩。
歩鳥の参った顔を見るのが大好きなはず(?)のタッツンが、なぜ決定的シーンが見られない途中退場ルートを選んだのか?
密かにこの紺先輩へのオマケドッキリを狙っていたのです!
紺先輩の弾に垣間見せる乙女な姿を目撃したタッツンは、意外とかわいい悲鳴上げるんですねと破顔一笑!
最後のドッキリも大成功だったわけです。
……もちろんこういう弱い姿を見られることを嫌う紺先輩が引き下がるわけもありませんが。
部屋の奥においてあるはずの置物をその手にとって……
画像


というわけで、ドッキリからのどんでん返しが展開するエピソードを収録した今巻。
色々な仕掛けも最後の紺先輩にもって行かれる、紺先輩ファンにはたまらないエピソードとなっております!!
このほか、意外と珍しい歩鳥の妹ユキコを主役に据えたエピソードや、歩鳥が父母の留守を預かる中タケルの様子のおかしさに気づくお話、お父さんが怪しいブツを高値で買ってしまうお話などなどが多数収録!!
この他にも、掛け値なしに歩鳥がその能力で大活躍する話などが収録され、今までの単行本の中で最も歩鳥がそのスペックを発揮している巻と言えるかもしれません!!
そしてそんな歩鳥が、正真正銘「ファーストキス」を体験してしまうお話にも注目したいところ!!
なんとあの歩鳥が後輩に告白されてしまい、流れで真田に相談すると言う色々気になるところの多い一編になっています!!
歩鳥のキスはどうなるのか?真田のゆれる思いは!?
今巻も大注目の内容となっております!!

いつにもまして歩鳥大ハッスルの「それでも町は廻っている」第10巻は全国書店にて好評発売中です!
紺先輩の照れる姿も収録した、紺先輩ファン垂涎の一冊。
それ以外のキャラも負いかわらずの調子で楽しい日常を送っております!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


それでも町は廻っている 10 (ヤングキングコミックス)
少年画報社
2012-07-30
石黒 正数

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by それでも町は廻っている 10 (ヤングキングコミックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



画像

本日紹介致しますのはこちら、「怖すぎる永井豪」です。
徳間書店さんのトクマコミックスより刊行されました。

作者はもちろん永井豪先生。
永井先生の先生自筆による作品の紹介は、「永井豪」のテーマにてまとめさせていただきました。
よろしければあわせてご覧くださいませ。

さて、本作は永井豪先生が描いてきた数多くの作品の中から、「怖い」作品ばかりを選りすぐって収録している短編集です。
永井先生と言えば、エロスなお話から馬鹿馬鹿しいギャグ、熱血アクションから背筋の寒くなりお話まで本当に様々な作品を描いていらっしゃるのは皆さんご存じかと思います。
そしてそんな作品のなかで、「恐ろしさ」が際立つ作品として有名なのは恐らく「デビルマン」ではないでしょうか。
ですが短編の中で最も有名な怖い話と言えばやはり「ススムちゃん大ショック」でしょう!
そんなわけで今回は、本書で先頭に配置されている本作を紹介したいと思います!

泣きながら地下下水道を走る少年、ススムちゃん。
なぜこんなことになってしまったのか?
思い出すのも恐ろしい、恐怖の惨劇。
それでもススムちゃんは、その光景を頭に思い起こさずにはいられないのでした。

朝、学校に行こうと家を出たススムちゃん。
ですが真っ直ぐ学校に行ってしまうと、ちょっと早くつきすぎてしまうんだそうで。
公園ですこし遊んで、時間を潰すことにしたのです。
ブランコを漕いでいると、小さい子供と遊んでいる母親が二組いることに気がつきます。
高い高いをして子供をあやしている母親。
ですがその時、突然眼を疑うような事件が巻き起こったのです!!
その母親、高い高いと頭上まで持ち上げた我が子を
画像

思い切り地面に叩きつけたのでした!!
その様子を見ていた、もう一組の母子の子供が驚愕し、自分の母親を振り返ります。
ですが待っていたのは、
画像

笑顔のまま容赦なく叩き込まれる蹴りです!!
幼子には強烈過ぎる攻撃を受け、その二組の子供は絶命してしまいました。
とんでもない光景だと言うのに、我が子を殺めた母親二人は、表情一つ変えずに世間話を続けているではないですか!
慌てて警察に駆け込もうとするススムちゃん。
しかしそのたよるべき警察官のいる交番では

その時まさに子供が射殺されていたのです!!
街を見てみれば、また別の子供が車にひき殺されており……
この光景を見て、ススムちゃんは思い知らされます。
これは殺人事件なんて生易しいものではない、「異変」なんだ。
なぜかはわからないけど、大人たちが僕達子供を殺しはじめているんだ!
この異変を知らせなければ、友達たちは皆殺しにされてしまうかもしれません。
懸命に走ったものの……やはり間に合うはずもなく……
校門前までだ取り付いたとき、鼻をついたのは猛烈な血のにおい。
そして耳を劈くのは、友達の悲鳴だったのです……!!

中川くんの、斎藤くんの、木村さんの。
多くの友達の悲鳴と、先生達の笑い声。
恐怖にかられて逃げ出し、地下下水道にたどり着いたと言うわけです。
どうしていいかわからず、下水道で泣き暮れていたススムちゃん。
そんな彼の方が、突然叩かれました。
思わず叫んでしまうススムちゃんですが、幸いにもそれは大人ではありませんでした。
友達ののぼるくんと東間くんでした。
どうやら彼らも大人の異変をいち早く察知し、この下水道に逃げ込んできたようです。
ですがもちろん彼らもまた、細かい事情なんて知るはずもありません。
幸い東間くんがラジオを持っていましたので、これで情報を集めようと言うことになりました。
三人は2時間ほどラジオを聴き続けます。
国際ニュース、政治のニュース、スポーツニュース、芸能ゴシップ……
様々な事件が報道される中……子供が殺されると言う事件に関しては何一つ触れられないのです!
なぜあんな大事件が報道されないのか?不思議がるススムちゃんと東間くんですが、のぼるくんには合点が行ったようです。
ニュースでやらない理由は一つだ。
それは、あの事件がニュースになる価値がないからだ!
そんな予測を突きつけられて、そうだと納得できるはずもありません!
大人が子供を殺すなんてことがニュースにならないわけがないじゃないか!とススムちゃんは反論するのですが……
のぼるくんはとどめの一言を告げるのです!
画像

「ネズミやゴキブリを殺してもニュースにはならない!」

糸が切れたんだ。
親と子を繋ぐ、一本の糸が。
のぼるくんはそう言います。
親が子を育てるのはなぜなのか?
かわいいからか?将来養ってもらうためか?
いや、違う。
恐らくそれは、本能によるものだ。
そしてその本能の見えない、細い糸が切れたんだ……!
そうなればもう苦労して子供を育てる理由なんてない。
当たり前だと思っていた親子の関係は、たった一本の糸によって支えられていたんだ……

夜になりました。
おなかがすきましたが、ここはもっとガマンして大人たちが寝静まるのを待つほかありません。
ですがそんなのぼるくんや東間くんを尻目に、ススムちゃんはフラフラと立ち上がり、家に帰ると言い出したのです!
まだわからないのか、帰ったら殺されるぞ!
必死に止めようとするのぼるくんですが、ススムちゃんは虚ろな瞳のまま、ボクのママだけは違うんだ、と絶叫。
裏切られてもいい、殺されてもいい、それでもママを信じたい。
ススムちゃんの揺らがない決意を知った二人は、涙を流しながらも握手を交わし、ススムちゃんを送り出しました。
画像

夜の街を、大人に見つからないように走るススムちゃん。
何とか家にたどり着くと、そこには夕食の支度をしているお母さんが居ました。
いつもと変わらない様子のお母さん。
おそるおそるススムちゃんが「ただいま」と声をかけると、お母さんは最高の笑顔で出迎えてくれたのです!
……が……

というわけで、突如として世界の歯車が狂う本作。
いつもはコミカルな作品を描く永井先生が時折描く、容赦のない恐ろしさが描かれています!
突きつけられる理不尽な恐怖は、読者を言いようのない恐怖に陥れてくれること間違いなしです!!
そしてこの他にも恐怖の短編が12編収録!
正統派のホラー「遺品」「雪」「乳房の思い出」、不条理な恐怖「蟲」「変身」、ほか作品を原作やモチーフにした「野牛のさすらう国にて」「シャルケン画伯」、単行本初収録にして実写を取り入れた超意欲的ショート漫画集「豪ちゃんのふしぎな世界」……
そんな中でも注目したいのはやはり前述の「ススムちゃん大ショック」、そして「おちこぼれクン」でしょう!
ホラーでもサスペンスでもないこの作品、人死にこそあるものの、それは決して血なまぐさい惨劇のようなものではない事故でしかありません。
そんな事故しかないにもかかわらず、淡々と描かれる永井先生の「容赦のなさ」。
もしかしたらこの作品こそ最高に怖い、と感じる方もいるかもしれません!
このなんとも言い難いおそろしさは、是非とも体験していただきたいです!!

永井先生のエネルギッシュな恐怖漫画が収録された、「怖すぎる永井豪」は全国書店にて発売中です!
エロスやコメディ、ロボット漫画でしか永井先生を知らない方にこそ読んでほしい本作。
コミック文庫ですので、お探しの際はお気をつけください!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!


怖すぎる永井豪 (トクマコミックス)
徳間書店
2012-07-03
永井 豪

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 怖すぎる永井豪 (トクマコミックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



画像

本日紹介いたしますのはこちら、「ひとりぼっちの地球侵略」第1巻です。
小学館さんのゲッサン少年サンデーコミックスより刊行、ゲッサンにて連載されています。

作者は小川麻衣子先生。
小川先生は05年にサンデーの漫画賞を受賞しデビュー。
読み切りを何本か発表した後、09年に同名のライトノベル「とある飛行士への追憶」のコミック版を連載しました。
無事連載を終了した後、芳文社さんの「つぼみ」にて「魚の見た夢」を連載開始。
さらに12年より本作の連載を開始し、初のオリジナル作品の単行本刊行となりました。

さて、本作は一組の男女にスポットをあてた日常ものです。
ですがタイトルからもなんとなくわかるように、単なる日常モノではありません。
アクションやSFの要素を取り入れながらも、メインはあくまで男女の触れ合いと言う作品になっているのです!

本日は入学式。
祖父と兄に送り出され、広瀬岬一(ひろせこういち)は学校にやってきました。
彼には先ほどの兄とは別の、双子の兄である凪がいるようなのですが、凪は病弱で入院しているそうです。
友人にお前の健康さを分けてやれ、などと茶化される始末なのですが……
そんなことを言われるほどの健康体のはずの彼が、近頃感じている胸の痛み。
もしかしたら自分も何かわずらってしまっているのかもしれない。
今度見舞いに行くついでに診てもらおうか。
そんなことを考えながらも歩き続けていると、その前に何か妙なお面をかぶった人物が姿を現したのです。
なんだか妙な人物の登場に戸惑う岬一ですが……
さらにその人物の発する言葉に驚かされることになってしまうのです。
画像

「お前の命を、もらいに来た。」
奇抜な格好に奇抜な言葉。
まったく心当たりのない岬一は、双子の凪と間違えてでもいるんじゃないかと予想するのですが、どうもそう言うことでもないようで。
命を狙っていると断言するその人物に危ないものを感じる岬一。
まともに付き合っていられない、と踵を返してその場から走り去ろうとします。
ところがその人物は物凄い勢いで追いかけてくるではないですか!!
さらに小柄な少女に見える体格からは想像できないほどの力を持っており……
画像

左手一本で体をひっくり返されてしまうのです!!
心臓をいただく、と言いながらにじり寄ってくるその人物。
ですが岬一にのしかかってきたかと思うと、その様子を変えたのです。
人のものになんてことをしてくれるんだ、こんなことってあるのか?
なぜか戸惑いはじめるその人物、ついにはどんな風になってるのか見せてくれと胸をはだけさせようしてきました!!
幸いそこに友人と教師の一人が駆けつけてきてくれたおかげで肌も露わになるのを防ぐことが出来たのですが、その教師によれば今の人物は結構な有名人のようで。
あの人物は、2年生の大鳥希(おおとりのぞみ)。
何でも1年生のウチはほとんどずっと入院していて、三学期に復学したんだそうですが、物凄い変わり者なんだそうです。
そんな人が、自分より足が速くて、想像できないほどの怪力を持っている……?
あの怪人物の素性がわかっても、かえって疑問ばかりが増えてしまうのでした。

本来係わり合いになりたくないはずの大鳥ですが、岬一はその日のうちに彼女をたずねることになります。
先ほど押し倒された時に、岬一の体に異変が生じていたのです!
胸にあった、小さいころ負った傷跡が消えてしまっている……
さらに、先ほど追いかけられたときに、言いようのない違和感のようなものを感じていた岬一。
どうしてもそのことを問い詰めずにはいられなかったのです。
大鳥はその質問に対し、奇妙な返答を返します。
10年前、岬一はUFOが大量にやってくる騒動に巻き込まれ、その騒動で心臓をえぐられてしまった。
そこで大鳥が岬一に別の心臓を入れて助けてあげたんだ、と。
そこまで話すと、大鳥はついにその奇妙な仮面を外します。
でてきたのは、極当たり前の少女の顔。
画像

それなのにその少女は、自分が10年前にやってきた宇宙人だと言うのです。
そして大鳥は話を続けました。
心臓を返してもらおうと思ったが、その心臓は岬一と同化してしまっている、と。
よく見せてといいながら、岬一に抱きついてくる大鳥。
思わず突き飛ばしてしまう岬一ですが、大鳥は心臓は元気みたいだ、と微笑み……私の仲間になってよ、と言い出しました!
その心臓は君の体を作り変えたから、もうこっち側存在になっている。
だから宇宙人らしく大望を果たそう。
画像

この地球を征服する、と!!

そんなわけのわからない言葉に同意するほど、岬一の受信能力は鋭敏ではありません。
勝手に色々まくし立てた上に仲間になれだなどととんでもない、自分にはやりたいことがあるんだ。
そう毒づきながら自宅に帰ると、敬愛する祖父が出迎えてくれました。
いずれは祖父のあとを継いでこの喫茶店を商う。
それこそが岬一の夢なのですが……
不注意で負ってしまったやけどがすぐさま治癒してしまう、という現実を体感してしまうのです。
本当に自分の体は「そっち側」なのか?
嫌な予感が滾る中、ゴミ捨てに行く岬一。
寒気のようなものを感じながらもどると、そこには
画像

謎の物体に祖父が飲み込まれている姿があるではないですか!!
一体この物体はなんなのか?
大鳥の言っていた「宇宙人」と関連があるのでしょうか?
岬一の日常は音を立てて崩れ、その後にはまったく別の日常が待ち構えていたのです!!

と言うわけで、得体の知れない少女との出会いから始まる本作。
岬一はこの事件を経て、地球征服が云々と言うのはとりあえず置いておきながらも大鳥との付き合いをすることになるのです。
ですが前述の急展開からは想像できない日常が待っていまして……
不思議な日常生活が淡々と描かれます。
ところが実はその日常の裏にはまたまた驚きの事実が隠されていまして。
本巻の最後にてそのあれこれが明かされることとなり、それが本作の本当のスタートになるのです!!
不思議な少女と、数奇な運命に翻弄される少年。
二人の物語はこれからどんな展開を迎えるのか、そして二人の距離はどうなっていくのか。
宇宙人の侵攻(?)とともに、二人の関係にも注目しなければならなそうです!!

自称宇宙人との地球侵略、「ひとりぼっちの地球侵略」第1巻は全国書店にて発売中です!
この一冊で第一話とも取れる本作。
独特の物寂しげな雰囲気と、アクション、少年少女の心の雰囲気が混ざり合った味わいが楽しめますよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


ひとりぼっちの地球侵略 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
小学館
2012-07-12
小川 麻衣子

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ひとりぼっちの地球侵略 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



画像

本日紹介いたしますのはこちら、「てんむす」第7巻です。
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスより刊行、週刊少年チャンピオンにて連載されています。

作者は稲山覚也先生。
本作は「てんむす」のテーマで紹介記事をまとめておりますので、ご一緒にご覧くださいませ。

さて、口内に火傷と言う大食い競技の洗礼を受けてしまった天子。
幾度もくじけそうになりながらも、遂にはその試練を乗り越えて最後まで戦い抜きました。
天子は負けてしまったものの、部長の奮闘もあり試合には勝利。
次に勝てば決勝進出と全国大会出場が確定します。
その相手は強豪、尾張大付属。
前年の中部地区予選大会で優勝した、折り紙つきの強敵です!!

尾張大付属でひときわ注目を浴びているのが、エースの赤西陽菜。
普段は凛とした彼女ですが、病弱な弟のことを溺愛する面もあります。
そしてその弟こそが、彼女の大食いの強さの源泉でもあるのです。
天食祭本戦で優勝し、天娘になれば神様に直接願掛けが出来る。
弟の病気が早くよくなるように、とお願いするため赤西は戦っているのでした!
画像


そんな相手もまた負けられない戦いをしているとわかった天子たち。
だからこそ、こちらも手を尽くして戦おうと考えます。
注目の準決勝、その先鋒として抜擢されたのはなんと
画像

部長!!
作戦を立てたのは結日のブレーンともいえる忍足です。
例え部長と言えど、大将に出てくるであろうエースの赤西とまともにぶつかっては勝てるかどうかわかりません。
そこで先鋒に出てくるであろう、比較的御しやすい相手に部長を当て、確実な勝利をゲット。
チームにも弾みをつけようと考えたのです。
奇襲と言うか、正々堂々とは言いにくい作戦ではありますが、これもまた戦術。
勝つためには策もまた大切といえましょう。
……ですが、あらゆる策を弄してくるのは相手もまた同じだとは考えなかったようで……
尾張大付属の先鋒は、
画像

エース赤西だったのです!!

前年大活躍し、他校にも注目されていた赤西。
今まで戦ってきた3戦の相手校は、赤西を警戒してすべて大将に一番格下の選手をあてがってきました。
強い選手を赤西以外に当てて一勝を確実に拾おうと言う作戦は流石に厄介だ。
そう感じていた尾張大付属のブレーン、黄桜メイ子が対策を打ってきたのです!
メイ子の策略はズバリ的中。
強いであろう相手の大将格に、最強の赤西があたる……
エース対決がいきなり行われることになってしまいました!

先鋒戦のメニューはお好み焼き。
その熱々の料理に、天子は3回戦でのトラウマがよみがえって恐怖心を感じてしまいます。
ですがその気配を感じ取った部長は、お好み焼きは麻婆豆腐ほど熱くないし、毎試合メニューが変わるから天子が食べることはない、安心して、と諭します。
そして今日は何でもがつっと食べないようにね、とアドバイスを残して戦場に向かう部長。
その際、みんなを振り返ってこう微笑むのです。
私が赤西さんを倒しちゃうから、応援よろしくね。
いつもと変わらない調子で語る部長。
その様子に一同は平常心を取り戻し、部長を送り出すのでした!!
……もちろん部長がいつもどおりなは図はありません。
3年である部長は今年が最後のチャンス。
相手は去年の地区優勝校のエース。
部長としてチームを引っ張らなければならない自分が負けたら。
画像

いつも以上の重圧がのしかかりながらも、部長はそのそぶりを微塵も出さずにいたのです……!

その重圧を感じていたのは、赤西も同じでした。
冷静に見えるその内心では、体が硬直するほどの緊張に襲われています。
ですがメイ子は、そんな彼女の緊張を一発で吹き飛ばす魔法のアイテムを持っていました。
頑張れと赤西を励ます、弟の画像。
その思いを背負うことによって、彼女は並ならぬ集中力を手に入れることが出来るのです!!

そして始まる先鋒戦。
画像

赤西も、部長も、あたりの応援や喧騒がまるで聞こえないほどの集中を見せての接戦を繰り広げることになります。
この戦いが、この後の3戦に影響を及ぼすのは間違いないところ。
果たしてどのような結果を迎えるのでしょうか!?
そして次鋒に出場するのは二子。
結日きっての緊張しいの彼女ですが、この大一番でもその悪癖が出てしまうのでしょうか?
白熱の準決勝、開幕です!!

というわけで、またまた苦戦の臭いがする準決勝が始まる今巻。
この戦いさえ勝てば、決勝進出。
2校が出場できる全国大会の切符が手に入ります。
ここは是が非でも勝ちたいところですが、今回の相手は今までとは違って下馬評からしてマルのつく強豪校なわけで。
部長だけでなく、全選手が余すところなく実力を発揮することが出来なければ、勝利を手にすることは難しいでしょう……!
苦戦続きの大会ですが、この戦いもひと時も目の離せない熱戦になるようです!!

準決勝戦開幕の「てんむす」第7巻は全国書店にて発売中です!
部長VS赤西、エースの名に恥じぬ二人の戦いが収録されている今巻。
本作の今までの中で、最もレベルの高い戦いが繰り広げられますよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!


てんむす 7 (少年チャンピオン・コミックス)
秋田書店
2012-07-06
稲山 覚也

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by てんむす 7 (少年チャンピオン・コミックス) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



↑このページのトップヘ