yl0
本日紹介いたしますのはこちら、「憂国のラスプーチン」第6巻です。
作者は原作が佐藤優先生、脚本が長崎尚志先生、漫画が伊藤潤二先生。
小学館さんのビッグコミックスより刊行されました。

さて、高村との息詰まる攻防も終わり、ついに公判の場に立つことになった憂木。
いままで様々な場所で親交を温め、時にはともに戦ってきた友人たちは次々に本当は犯していないかもしれない罪を認めていきました。
そんな状況でも1人気を吐くのが憂木です。
まったく物怖じせず、裁判官を見据えて罪を認めないと高らかに宣言するのでした!

午後4時過ぎ、第一回公判を終えた憂木は拘置所に戻ってきました。
今日で憂木の拘留も127日目。
もはやこの東京拘置所は楽しい我が家だとまで言い切っちゃうほど住み慣れてしまいました。
それはそれでどうかと思いますが!

そんな住み慣れた我が家に違和感を感じる憂木。
今までそれなりに埋まっていた部屋部屋に空室が目立つようになってきたのです。
なんでもそれは、新獄舎への引越しがすすんでいるのだとか。
となれば、盟友都築が囚われている間はここからでないと宣言している憂木も新獄舎に移ることになるのでしょう。
新しい独房のほうが快適だよと係員も言うのですが、なぜか憂木はそれを渋るのです。
今の独房のコンクリートや畳には、僕の魂の一部が乗り移っていますから。
yl1
憂木は冗談とも本気ともつかないそんなことを言うのですが……
あながちそれも言いすぎではないかもしれません。
あらゆる困難にも負けずに歯をくいしばり、あいている時間は勉強に打ち込んだ。
この空間には、単なる127日間では味わえない濃密な時間が流れていたのでしょうから!

ところで今回の公判ですが、検察冒頭陳述は予想外に低レベルなシナリオになっていました。
これほど陳腐なストーリーを、裁判官は信じるのだろうかと疑ってしまうほどに。
もし信じるのなら、高村が言ったとおり最初から「答え」が決まっていると言うこと。
やはりこの裁判は最初から都築を失脚させるためだけの舞台設定だったのかもしれない。
そう考えるとともに、あの敏腕の高村が陳腐極まりないシナリオを書くだろうかという疑問も頭をもたげてきます。
そんな答えの出ないかと思われた疑問ですが、意外にも早くあかされる時が来たのでした。

数日後、憂木の元に面会の一方が届きました。
その面会相手は意外や意外、高村本人でした。
取り調べ終了後に健二が尋ねてくるのは非常に珍しいもの。
一体どんな用事があると言うのでしょうか……?

高村には些細な用事しかありませんでした。
どの印鑑がどの通帳に対応しているかを、本人に確認してもらいに来た、と言う。
ですがもちろん高村ほどの男がたったこれだけの為にわざわざ憂木をたずねるわけが無いのです。
これは口実で、実はご機嫌を伺いにきたと言う高村。
機嫌は普通だとこたえる憂木ですが、高村は返事もそこそこに初法廷について尋ねてきます。
これはまさに渡りに船。
憂木はあのへたくそな冒頭陳述書は高村が書いたのかと尋ねると、高村は下手はきついなと頭を掻きながら答えてくれました。
yl2
書いたのは自分ではなく、若い検事だ。
いくつか、こういう話を入れろとか、聞かれたことに答えたりだとかというアドバイスはした。
検事の冒頭陳述なんてだいたいあんなもんだよ、と。
その後高村は、裁判が始まってもまだ外務省はやまないのかと質問してきます。
無職と起訴休職公務員は雲泥の差だし、有罪になったとしても辞職と懲戒免職を受け入れるのとはまったく違う、何より自分は何も悪いことをしていないんだから辞表を出すのは理屈に合わない。
淡々と憂木は答えます。
外務省がなんらかの圧力でもかけてきたなら、逆に外務省と人事院を徹底的に揺さぶるつもりだ。
そんな言葉とともに憂木の覚悟を再確認した高村は、そろそろいくよと席をたちました。
その後姿に、じゃあ法廷で会いましょうと再会の言葉を投げかける憂木。
ですがここで高村は突然立ち止まり、言っておきたいことがあると振り返ったのです!

高村の言っておきたいこととは、なんと憂木自身の今後についてでした。
ともに戦ってきた、都築が拘留されているうちは拘置所をでないと宣言している憂木に対し、もう続きへの義理は充分果たしたんじゃないかと言う高村。
yl3
都築は最低あと1年はでられない。
それでも意地を張るのか?都築の十年裁判に付き合うのか?
そう詰め寄ってきたのです。
もちろんハナから憂木はそのつもり。
その気持ちに一切揺るぎが無いことを聞いてもなお高村は続けました。
あまりストイックになるな、あなたのような人がこんなところに長くいたらダメなんだ。
1日も早く社会復帰するべきなんだ!!
さらに高村の言葉には熱がこもってきました。
国策操作に巻き込まれたって、別の方面で活躍している人はたくさんいる。
あなたなら絶対に人生をやり直せる!
yl4
真面目に保釈を考えてくれ。
取調べの駆け引きとは明らかに違う、心からの説得。
それでも憂木はここをでないと言うのですが、まだまだ高村の説得は終わりません。
外にでて、国策操作のことや外交のことをどんどん書けばいい!社会に問題提起すればいい!
yl5
そのため自分や検察に都合の悪いことを書かれてもかまわない。
憂木が外にでられるなら仕方の無いことだ。
かつての怨敵が、ここまで親身になってくれるとは。
yl6
今でも彼が敵であることは代わりませんが、この真摯な想いは少なからず憂木の心を揺るがしたのでした……

と言うわけで、憂木と高村の間に奇妙な友情が芽生えた本作。
物語はいよいよクライマックス。
憂木の過去も交えながら、裁判は進展して行きます。
彼が裁判でよい結果を得るには、彼の活動がクリーンであったことを知る人々に強力をしてもらう他ありません。
ですが相手はなにせ「国」。
ありとあらゆる取引、策略を使って、憂木と続きを追い詰めていくことでしょう!!
そして物語は判決がでたところで完結となります。
その判決内容とは?
そしてその裁きを下された時、憂木はどうするのでしょうか!?
彼の戦いはまだ終わらないのです!!

さらに本作連載時に行われた、対談全5回も収録!!
本作の都築のモデルであるあの政治家をはじめとして、あのライブドア事件のあの人から、果てはかのスポーツ平和党なあの人まで登場!!
単純な漫画として楽しんでいた方にはあまり嬉しくない企画かもしれませんが、そういう方のため(?)に伊藤潤二先生のご尊顔も拝める内容となっています!!

とうとう完結となる、「憂国のラスプーチン」最終第6巻は全国書店にて発売中です!!
あの事件の裏には何があったのか?
腐りきった国の内情とは?
そんな切り口で描かれた本作、最後まで注目必死の内容が目白押しとなっていますよ!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!