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本日紹介いたしますのはこちら、「空が灰色だから」第4巻です。
作者は阿部共実先生。
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスより刊行、週刊少年チャンピオンにて連載中です。


さて、少年少女達の不安と希望の日常を描く本作。
今巻でも心温まる話から、心にグサグサと来る物語まで、様々な方向から描かれた物語が収録されています。
そんな中から今回は、「初めましてさようなら」を紹介したいと思います!

とある中学校で囁かれる噂があります。
3年前自殺した生徒が、幽霊となって現れる。
先日も、夜に用事があって噂のある南校舎に入った生徒が、女の子の泣き声を聞いたんだとか。
こわーい、などと会話に花を咲かせる女子生徒たちですが、その中にいる一人の少女だけ様子が違います。
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一人物憂げな表情をしている彼女。
彼女はなぜこんな表情を浮かべているのでしょうか?

先ほどの少女、なにやら噂の夜の後者を歩いていました。
怖いなあ夜の学校って、一人は辛いよ。
そんなことを一人呟いていた彼女の耳に、とんでもないものが飛び込んできたのです!
女の子の、泣き声が!!
おっそろしいシチュエーションですが、少女は恐る恐る屋上に確認に行くことに。
いつもはしまっている屋上の扉が開いていました。
そして夜の闇に包まれた屋上で……
女の子が座り込み、すすり泣いていたのです!!

出た!!とびっくりする少女!
ところが、女の子の方もわあああ!!と驚いているじゃありませんか!
いち早く冷静になった少女は、ああ、生きている人間?と落ち着いて女の子に話しかけました。
女の子の方も冷静さを取り戻したのでしょう。
私も幽霊だ出たのかと……と、取り乱した気恥ずかしさから視線を外しながら呟くのです。
が、少女はこう返してくるのです。
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あっ、うん私は幽霊だよ、と!!

そう打ち明けられた瞬間は驚きまくりですが、その少女のあまりの普通っぷりにすぐ落ち着きを取り戻しました。
少女の体は触ろうとしてもスカスカと手が突き抜けてしまい、ウソ偽りなく幽霊であると言うことを教えてくれています。
ですがなんだか二人とも人と話すのが苦手とか、でも1対1ならわりとしゃべるけど調子に乗りすぎて引かれたりする、と言う性格の共通点があったりしてすぐに意気投合!
二人は「磯辺っちょ」「宮もっちゃん」と呼びあうくらいに仲良しになっちゃうのです!

幽霊の少女は磯辺、泣いていた女の子は宮本。
そもそも宮本がこんな夜中にこんなところにいたのはなんでなのか?
宮本はぽつぽつと語り始めました。
親が離婚するから、遠くに転校しなければならなくなった。
人見知りな自分が、中学2年生にもなってまた人間関係をリセットしてやっていく自信は無い。
だから離婚をやめてもらうか、この世から逃げるしかないと思った。
ところが先ほど大量服薬したものの、こうやって意識は戻ってただなくことしか出来なかったのだ……
そこまで聞いた直後、
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磯辺は宮本におもいっきりジャンプキックしてきました!!(素通りしますけど!)
そんなノリで自殺するんじゃない、自殺は後が辛いぞ!
そう語る磯辺は、噂どおり3年前自殺した経験者(?)です。
中学生になった途端、空気を読むことが大切になって、それが苦手な磯辺はひとりぼっちになってしまい、世の中がいやになって復讐のように自殺した。
だが予想外だったのは自縛霊になってしまったこと。
最初は無関心だったり冷ややかだったりしたクラスメイトたちがすごく悲しんでくれているのを見て、物語の主人公のような気分になれた。
ですが学校が終わればひとりぼっちで夜の学校に取り残され、出ることが出来ません。
自分が幽霊にもかかわらず、基本人間気分の磯辺は夜の学校と言うホラー空間に怯えまくることになったのです。
……しかし本当の問題はそこではないのです。
次の日になったら、もうクラスメイトみんな笑顔。
テレビの話や音楽の話し、スマホアプリの話などに興じており、もうバッチリ切り替えがすんでしまっているではないですか!
みんな前向きなんだなぁ、人間って強いなぁ。
複雑な思いを抱きながら、クラスメイト達を眺める昼間。
そして夜は、ひとりぼっちのがっこうぐらし!
どうせ死ぬなら24時間営業のスーパーとかで死ねばよかった!!と後悔する始末です!

確かに死んだら、生きているときよりももっとひとりぼっちになるわけで。
それはイヤではありますが、ここで死んだら磯部がいるからひとりぼっちじゃないね、と宮本は言うのです。
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命を何だと思ってやがんだ、と当たらないパンチを繰り出す磯辺ですが、その顔は嬉しそう。
ですが、すぐにお話はまじめな方向へと変わっていくのです。
お母さんはこれからも毎日自分を怒るだろうし、自分は死んだ方がいいのかも。
そんなことを言う宮本に、磯辺は語るのです。
自分もそう思っていた。
兄弟の中で頭も運動センスも美術センスも無い上に、コミュ力も無いんだから。
ところが、お母さんは今でも毎日花を届けてくれている。
それを磯辺は毎日見ているだけ。
こういうときだけ声も届かず、見えているのに、そこにいるのに、誰とも触れ合えない……本当のひとりぼっちの自分。
家族のみんなに申し訳ない気持ちでいっぱいの毎日。
後悔でたくさんの毎日。
ただひとりぼっちで、後悔を繰り返すだけは今の自分の世界だ……
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ごめん、自殺なんて私がバカだったよ。
宮本はいいました。
経験者からの忠告だ、間違いない、生きろ!
涙を浮かべながら紡がれる磯辺の言葉に、宮本もがんばる、と自身の甘えを受け入れました。
転校しちゃうけど、磯辺と友達になれてよかった、と素直な気持ちを打ち明ける宮本に、磯辺もまた人と話せるなんて思ってなかったから楽しかった、とお互い感謝と感動の言葉を交し合うのです。
屋上を出よう、生活に戻ろう、と歩き出す宮本に、磯辺は精一杯の声援を投げかけます。
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フレーフレー、宮もっちゃん!
宮もっちゃんには無限の未来がある。
人にはもっと頼れ、甘えろ!後悔するぞ!!
振り返るんじゃない、私はただの死人だ!!
宮本にわき上がってくる、なんともいえないあたたかい気持ち。
わきあがる涙をこらえながら、宮本は屋上の出口へと向かうのです。
……が……

というわけで、自殺を巡る物語を収録した今巻。
今回紹介したこのお話、切ない+心温まる話と言うお話と思いきや、最後の最後にどんでん返しが待っていたりするのです!
とは言え一転して恐ろしい展開になるわけでもありませんので、その辺はご安心ください!
この他、今巻も様々なお話を計12編収録しております。
この第4巻は、ホッコリ系、グサグサ系、ギャグタッチが程よく混ざり合い、バランスよい1冊になっています。
ニヤニヤしたりジンと来たり、抑えられない不安を感じられたり。
いろいろな意味でドキドキ
出来る1冊になっているのです!!

大注目の最新刊、「空が灰色だから」第4巻は全国書店にて発売中です!
あいも変わらず、不安、感動、笑い、恐怖、様々な気持ちを味わわせてくれる本作。
恒例となった、本編とリンクしたカバー下本体の描きおろし漫画も収録されていますよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!