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本日紹介いたしますのはこちら、「バキ外伝 創面(きずづら)」第1巻です。
作者は原作が板垣恵介先生、作画が山内雪奈生先生、原作協力に浦秀光先生。
秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックス・エクストラにて刊行、別冊少年チャンピオンにて連載中です。

さて、本作はバキシリーズのスピンオフ作品です。
主人公はバキシリーズ屈指の人気キャラ、花山薫。
花山が主人公のスピンオフと言いますと、本作と同じ山内先生の手による「疵面-スカーフェイス-」が既に第5巻まで刊行されていますが、強敵グランドマスターと、オリジナルキャラのレックスの戦いの最中に連載が中断。
既に単行本は3年半以上刊行されておらず、完結と銘打たれてこそいないものの、連載再開のめどは立っていなそうです。
そんな状況で、新創刊された別冊チャンピオンのいわば目玉作品として連載された本作。
本作はバキシリーズには欠かせない、と思われていたバトル要素をほぼカット。
花山の日常にスポットライトをあてた作品となっているのです!!

とある高校の校長室。
そこで、校長と警視庁の刑事がなにやら話し合っております。
刑事が校長に差し出したのは、「特定動物」と書かれた一枚の紙。
その紙は要するに、猛獣用の飼育許可証。
なぜこんなものを差し出すのだろう、と校長が疑問に思うのも無理は無いでしょう。
その原因は、この倉鷲高校に最近編入してきたと言うある生徒にあります。
その生徒、校長はすぐ思い当たりました。
……花山薫。

花山が「大変な暴れ者」らしいと言うことは知っていました。
あの子が猛獣並に危険だと言うことか、お気遣いいたみいりますと、とその忠告を受け入れるかのようなセリフを口に出す校長ですが、その後の言葉は声のトーンこそ変わらないものの、一転して強気なものでした。
ウチは80年を超える進学校、ひ弱に見られるかもしれないが、もうひとつの「規律が厳格である」という側面がある。
青白きインテリだけでは伝統は守れない。
確かな「力」の裏づけ、これもまた隠れた伝統である。
その言葉の通り、この学校の教師には数名の猛者が紛れ込んでおります。
柔道五段の体育教師、剣道七段空手四段の現国教師……
確かにそんじょそこらの不良学生ならば彼らには太刀打ちできないでしょう。
ですがそんなもう1つの伝統を聞いても、刑事は一切関せずといった口調で言葉を続けるのです。
不良生徒はいますか?
その子たちと花山の接触にはくれぐれも気をつけていただきたい、と。
確かに多感な時期ですから、何人かはいるわけで。
そしてその言葉の感じから言って校長は花山がその不良たちに目をつけられるとでも勘違いしたのでしょうか。
「イジメ」にはときに厳しく目を光らせています、と笑うのです。
それにこの倉鷲高校の不良、自慢じゃありませんが周辺の不良校に比べたらまったくかわいいもので、とのこと。
……もちろん読者の皆さんにはわかっていることでしょう。
花山の危険性は、そんなところなわけが無いことを!

で、そのまったくかわいい不良の一人、三年生の芳賀の前には信じられない光景が拡がっていました。
彼、1ヶ月に及ぶ停学期間がおわり、久々に学校に行こうと高校近くの駅から出たのですが
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そこにはこのあたりの「実力者」がずらりと並び、「かわいい不良」である芳賀に頭を下げていたのです!!
自分と誰かを勘違いしているのか、とびくびくしていた芳賀ですが、彼らは芳賀が芳賀であるとわかってやっているようで。
オマケに彼らは料金を支払い済みのハイヤーを準備しておりまして。
なにがなんだかわからないものの、芳賀は促されるままにハイヤーに乗り込むしかなかったのでした。

その原因は、ある日の1年A組にありました。
芳賀先輩の「出所祝い」だよ、と称して、不良生徒が1年生からカンパを募っていたのです。
かわいい不良と言うだけあって、10円はダメだよなどと吹きながら回収しているその鍋の中には、100円や500円がたっぷりと、ちらほらはいる1000円札。
こういった集り行為はもちろん悪いことで、生徒達からすれば困るもの。
ですがこの金額ですから、確かによそと比べればかわいいものかもしれないです。
調子よく集めていた彼らの目に、一番後ろの席にどっしり座っている生徒が映りました。
その一年生とは、と言うか高校生……いや、人間かもあやしいくらいでかい生徒こそ
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花山です!!
彼にとってはどうでもいいといえばどうでもいいこと、うつむいて眠っているようです。
彼のことを知らないらしい不良生徒は、寝とぼけてんじゃねえ!と花山の足を蹴っ飛ばします。
ひい、恐ろしいことを……!!
バキ初登場の頃の彼ならおそらく不良生徒の足は「パァン!」となっていたことでしょうが、本作の花山さんは一味違います。
何のカンパだ、とゆっくり立ち上がりながら尋ねたのです!
コリャやばいと直感した不良生徒は、いい、いい、気にしなくていいから!と慌てるのですが、花山は「出所かぁ」と呟きながら財布ごとその鍋にほうりこんだじゃありませんか!!
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その財布にはお札がぎっしり!
しかもあの束をキープするための帯紙まで見えている、と言うことは……!?
花山は顔色1つ買えず、こういうのです。
あいにく持ち合わせがそれだけだ。
芳賀さんにはよろしく伝えてくれ、と!!

その財布に入っていたであろう名刺を見て、芳賀は先ほどあったことを理解するのです!
不良やってるなら、「花山薫」の名前くらい覚えとけ、と先ほどの舎弟不良たちをぶっ飛ばし、花山に謝罪しないとと猛ダッシュ!!
殺される前にわびるんだ!!
散々探し回った挙句、創立者か何かの偉い人を象ったらしい銅像の前に佇む花山を発見!!
すかさず財布を差し出して土下座して謝るのですが、花山は一度出した銭は受け取れねえとそれを制してからこう続けるのです。
停学の満期も出所も同じようなものだ。
でもこういった挨拶は今回限りにしてくれ。
俺は今、この人の下に草鞋を脱いでいる。
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そう言って花山は、銅像の偉い感じの人の右手をそっと握るのでした。
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……ぐっしゃぐしゃにひしゃげちゃいましたけど。

と言うわけで、花山の高校生活を描いていく本作。
本作でも花山の「強さ」が描写されるのですが、むしろメインはその強さが招く周囲とのズレ!!
強すぎる、目立ちすぎる。
そんな花山が、何とか当たり前の高校生活を送ろうとして頑張る姿が楽しい作品になっているのです!!
これだけ「努力」している花山は、おそらくバキシリーズ本編にはなかったでしょう。
訓練を女々しいと断じ、戦いの際も策を弄さず真っ向からただぶつかっていく花山が、勝利を得るために必死になる事はありました。
ですがそんな彼が、頭を捻ってどうすればいいか考え、頑張っていく姿を披露することはなかったわけで。
そんな花山の、涙ぐましい(?)努力や天然ボケ、先生に見つかったらどうするんだと学校に持ってきてはいけないものを慌てて隠す姿が見られるなんて……!
激しいバトルを期待していた方には物足りないかもしれませんが、こういったどこかとぼけた花山の姿が見られるのも乙なもんです!!

花山君15歳、学業に励む!!「バキ外伝 創面(きずづら)」第1巻は全国書店にて発売中です!!
目だって仕方が無い花山がどう普通に学校生活を送るのかを描く本作。
生徒指導、不良生徒の名誉狙いの襲撃、そして水泳の授業。
障害はいっぱい、彼の青春の行方やいかに?
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!