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本日紹介いたしますのはこちら、「ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~」第2巻です。
作者は原作が宮崎克先生、漫画が吉本浩二先生。。
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスエクストラより刊行、別冊少年チャンピオンにて連載されています。

さて、本作はもともとチャンピオン創刊40周年&手塚先生生誕80周年の記念企画として、発表された読みきりが元となっています。
その読みきりが好評を博し、シリーズ化。
単行本としてまとまり、各所で絶賛されました。
その作品が12年に創刊された別冊少年チャンピオンで本格連載開始!
あの誰しもが認める稀代の天才にして変態(?)、手塚先生の鬼気迫る仕事風景を再び堪能できるのです!

手塚先生が「少女クラブ」にて連載していた「リボンの騎士」が完結しました。
そこで同誌で新連載が始まることになり、それにあわせるかのように手塚先生の担当編集さんも変わりました。
今まで絵本の部署でのんびりやっていたと言う、新井善久さん。
手塚先生との初対面には、前担当もついてきてくれたのですが……

初めて合った手塚先生はとてもにこやかで、新井さんの下の名前を音読みにして「ゼンキュウさん」と呼んで親しげに接してくれました。
ですが、和やかだったのはそこまで。
いきなり始まったのが、手塚先生の原稿待ちをしていたよその編集者達との「順番会議」だったのです。
順番会議、とはそのなの通り順番を決める会議です。
当時色々な雑誌でたっぷり連載を抱えていた手塚先生ですが、ご存知の通り職人気質でありながら気分屋なところのある手塚先生ですから、なかなか原稿は完成しません。
そこで編集者たちが集まって、そのつきに執筆する原稿の順番を決めることにしたのです!
新井さんの少女クラブ、今月の順番は三番目に決定。
一旦前担当とともに帰ろうとした新井さんですが、「君は帰らなくていいんだ」と言われてしまいました。
3番目だと言うのに、なぜここにいなければいけないのか?
そんな疑問に、前担当は衝撃的な順番のシステムを教えてくれたのです!!
編集者を一人にすると、目を離したスキに手塚先生が行方をくらます。
編集者を二人にすると、一人が目を離したスキにもう1人の編集が手塚を連れ出して独占する。
だから、常に二人以上の目があるように、3人必要なんだ!!
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オマケに「3日に1本はあがる」とのことで、いきなり10日間ほどの泊り込みをさせられるハメになってしまうのですからたまりません!
新井さんはいきなりの試練を課せられてしまうのでした!!

その泊り込み中も、手塚先生のすごさを垣間見せられる新井さん。
原稿はともかく、ネームはすばやくて2~6時間で描き上げてしまうとか、「2時間だけ眠らせてくれ」と言って眠り始めたら本当に時間通りに自分で起きてくれたりだとか……
そんなすごい手塚先生、やっぱり一番すごいのはなんだかんだいって3日に1本ペースで原稿を仕上げてくれていること。
予定通り10日後、下着を変える余裕も無いまま新井さんは原稿を抱えて帰ることになったのでした!!

そんな手塚先生、時には弱音を吐くこともありました。
もうイヤだ、もっとボクを自由にしてください、自由にしてくれたら意欲が湧いてもっといいものが描けるのに!
頭を抱えてそう呻く手塚先生ですが、そんな手塚先生にこんなことを言ってくれる編集者も現われたのです。
「わかりました!私は先生を信用して張り付きません!」「原稿が出来たときご連絡ください!!」。
そう言ってくれた編集の手を、手塚先生は両手でしっかと握り、あなたのとこの原稿だけは絶対に落しません!!と感謝と決意の気持ちを告げたのです!!
……が。
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案の定、原稿は落ちます。
しかも3ヶ月連続で……
そんなことになれば当然その編集者は無能扱いされてしまうでしょう。
彼は会社を辞めてしまったそうです。
出来ないことを安請け合い(?)した自分の責任のような気もしますが、それを聞いて手塚先生は大激怒!!
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僕はあの人のために仕事したかったのに!!
あなたたちが自分の原稿ばかり描かせるから!!
彼が気の毒じゃないですか!すべてはあなたたちのせいだ!!
と、張り付いていた編集たちに怒りをぶちまけたのでした!!!
……まぁ後々、手塚先生自身も「編集の方に野放しにされたら、半分の作品も生まれなかった、と新井さんに言ってくれたそうなんですが。

いつもそんな感じの手塚先生、昭和32年1月半ばごろにはとんでもない事件を起こしました。
当時の流行に乗って、少女クラブが別冊付録をつけることになり、「火の鳥」も64ページを描いてもらうことになります。
そこで新井さんは進行状況を確認に仕事場を訪ねたのですが……手塚先生、いないのです!
おそらくこれはどこかの「カンヅメ(館詰)」……出版社が旅館などに作家を匿い、執筆させる行為が行われたのでしょう。
引く手あまたの手塚先生をカンヅメにするのは、もう掟破りなんてもんじゃありません!!
そこで原稿町をしている様々な雑誌の編集部に次々電話をかけて確認していく新井さんたち少女クラブチーム。
色々当たってみたところ、どうも「鉄腕アトム」連載の「少年」を発行していた光文社さんがあやしいと言うことになりました。
幸い光文社さんは、少女クラブ発行の講談社さんの兄弟会社。
当時は同じ社屋に社を構えていた為、即座に編集部に乗り込んだのです!
ウチじゃないと思うよ、うちの手塚先生担当の編集者が社にいないのは、病欠じゃないかな?と、フワフワした答えからしてもおそらくクロと見て間違いないでしょう!!
ですが問題は、どこに連れ出したか?と言うこと。
各社がいつもつかっている宿のどこにもいないことから考えると、ひょっとしたら東京から離れてしまっているのかもしれません!!
そうなってしまえばもう手がかりはなし、詰みです。
が、そこで前担当さんに思い当たることがあり、いきなり新井さんを促して走り出しました。
ついた先は、ビル内にある「郵便部」。
講談社と光文社は社屋が同じ、この建物に届いた郵便物は一旦ここに集められることを考えると、光文社さんあての郵便物もここにあるわけで。
カラー原稿の締め切りは早いため、必ず描きあがった順に郵送してくるはず。
それを見付けて、送り先の住所を調べれば……!!
郵便物の量はハンパじゃありませんで、封筒探しは2日目に突入してようやく目的のブツは発見されました!!
少年編集部宛、差出の名前も手塚先生の担当編集のもの。
そして肝心の住所は……
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京都!!
新井さんはいちもにもなく京都に向かうのでした!!
そこでようやく発見することが出来た手塚先生。
ですがこの事件は、ここからが本番なのです!!
やっと自分達の原稿に手をつけてもらえる、と思っていた矢先、手塚先生からでた信じられない言葉とは!?
新井さん、苦難の試練はまだまだ続きます!!

と言うわけで、手塚先生のいろいろな意味での恐ろしさが描かれる本作。
やはり本作の目玉は、今まであまり描かれることはなかった手塚先生のワガママでしょう!
今回紹介のエピソードでも、仕事場からわりと平気で逃走したり、元はといえば自分のせいで編集さんがやめてしまったのにその怒りを他の編集にぶつけたり、とそのアレっぷりは存分に発揮されております。
この他にも突如始まる「ベレー帽が無いと」「スリッパが無いと」「チョコが無いと」……と、これが無いと漫画が描けないといってみたりするエピソードも収録!!
挙句に鉛筆やカップめんに関しても、常人には理解できない注文をつけたりするんですからもう……!
良くも悪くも、天才は違います!!

そしてもう1つ注目したいのは、そんな手塚先生とともに頑張ってきた、虫プロの社員さんや、アシスタント、編集の方々の奮闘です。
手塚先生に振り回されながらも、時として励まされて来た戦友たち。
彼らの語る、手塚先生像とは……?
若かりし日の大御所さんの姿もありまして、こちらもやはり見逃せない要素となっているのです!!

手塚先生の有り余る情熱を描く、「ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~」第2巻は全国書店にて発売中です!!
今回も汗のにおいまで感じてしまうような、熱気こもった作画で描かれている本作。
手塚先生の熱意をその目で御体感ください!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!