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本日紹介いたしますのはこちら、「しすとも」です。
作者は稲光伸二先生。
実業之日本社さんのマンサンコミックスより刊行されました。

さて、本作はなかなか珍しい、政治家たちを中心に据えたコメディです。
稲光先生といえばいまや、「性食鬼」でエロスな作風でおなじみとなっています。
ですが先生の最初のブレイク作品といえばスピリッツで連載された「出るトコ出ましょ!」。
そちらは弁護士事務所を中心に据えたコメディでしたが、登場人物の名前が実在の政治家さんたちの名前をパロディした物だったりしまして。
政治やら法律やらを取り扱ったコメディも先生の得意とするジャンルといえるのかもしれません!

議事堂の中で繰り広げられる、政治家達の喧々囂々。
遅々としてすすまない法案の審議などをおこなっているようではあるのですが、よくよく聞いてみると事情がすこし違うようです。
現在我々がおかれている状況を考えてください、永田町にぽっかり開いた穴のように政治が空洞化している異常事態が3週間も続いています。
一応正常に政治がおこなわれているようですが、政治家がそんなことを言うような事態とは一体なんなのでしょう。
実はそれ、例えでもなんでもなく、実際に永田町にぽっかりと穴が開いた状態になってしまっている、ということなのです。
国会議事堂が聳え立っていた地点に、
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クレーターのような大穴……!
これは一体どういうことなのでしょうか?
議事堂が忽然と消え去っていると言うのに、政治家達が議論をしていると言うのはどこなのでしょう!?

そんな中、ひたすらこの堂内の掃除を含めた雑用ばかりをおこなっている若者たちがおりました。
25~6の若い新人議員である牧瀬、桃沢、姫井、吉澤、一ノ瀬。
そして、議員というにはあまりにもチャラついていて頭の出来もよさそうには見えない彼らを束ねる29歳の上杉です。
どうにも議員らしからぬ彼らのちゃらんぽらんさぶりを上杉が一喝し、掃除といえども今はこれが自分達の仕事だ!と発破をかける。
そんな感じがその3週間の間続いているようです。
正直を言えば堂内の掃除なんて議員のやる仕事じゃない、というのは上杉も感じてはいるはず。
それでも真面目にこなしているのは、上杉だけは他の5人と事情が違うためなのです。
他の5人はいわば政党の客寄せパンダ的な、アイドル議員のようなもの。
一方の上杉は2世議員の上、政治家としての手腕にも期待されている若手のエースなのです。
多くの政治家達がいる中で、キッチリ仕事が出来ることをアピールしたいと言う……まあ打算ということでして。
そんなこともあって、一人が提案した光るもの……目立つものを徹底的に掃除し、少ない労力で掃除した感を出そうと言う作戦に乗ることにしました。
そこで向かったのは、中央広間です。
ここには四方の角にそれぞれ台座がおいてありまして、そのうえには3体の銅像が建っております。
その銅像はそれぞれ偉大な政治家たちなのですが、ではなぜ1つだけ台座が空席なのでしょうか。
それは、政治に完成はない、という戒めが込められてのことなのだそうですが、何でもすでに立っている3人に並ぶほどの政治家がないと言う説もあるのだそうです。

それはともかく、掃除です。
が、5人の若手議員たちはすぐに飽きはじめ、モップでちゃんばらなんかをやり始める始末……
何で努力に努力を重ねてきた自分がこんな、掃除どころかどうしようもないタレント議員のお守りをしなければならないんだ?
本来なら今頃20台の実力派として政治家人生のスタートを切っていたはずなのに。
あんなことさえ起きなければ……
上杉の頭の中が真っ白になっていたその時、若手たちは後ろ後ろ!と上杉に声をかけてきました。
振り返ってみると、
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ゴン、と板垣退助の銅像がた俺落ちてきたではないですか!!
間一髪直撃は逃れましたが、その衝撃で銅像の首はぽっきりと折れてしまい……
どうしてこんな?どうなったのこれ?誰が?と大慌てです!
ところが一同はすぐ、それとは別の驚きのものを発見することになってしまいました。
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倒れこんでいる、歳若い少女。
その少女ですが、全員が全員始めてみる顔です。
ということは3週間の前のその日から、今までここに倒れていたと言うのでしょうか?
いや、3週間もここで倒れていたというなら当然もう息はないはず。
それならばそれなりの痕跡やらがあるはずなのですが、それどころか少女からはシャンプーのいいにおいなんかが漂ってきております。
ほんとに大丈夫?とばかりに植えすぎも臭いを確かめてみようと近寄ると、

少女は突然起き上がって彼の顔面に蹴りを突きたてたではないですが!!
まあ目覚めていきなりミスらぬ人が自分ににおいをかいでいたら驚くのも当たり前。
何?なんなの?と腰を抜かしている様子の彼女に、若手たちは落ち着いて、あやしいものじゃないよ、と声をかけてからお名前を尋ねることにしました。
すると彼女はこう答えるのです。
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板垣退助、と!!

ちなみに彼女、自分の名前が板垣退助だと言うこと以外の記憶が一切ないそうで。
そもそも彼女が板垣退助なわけがないだろう、ということは一旦置いておきまして、病院なり警察なりに出来れば連れて行きたいところです。
ですがそれはかなわないこと。
その3週間と言う期間の間、ここにいる議員たちは残らずここに閉じ込められているのですから!
とは言え、玄関のドアが閉ざされていると言うわけではありません。
では閉じ込められていると言うのは?
納得してもらうには見てもらったほうがはやかろう、と一同は少女を外に連れ出します。
するとそこに拡がっていたのは
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地面ごとえぐられた議事堂が、空たかくに浮かび上がっていると言うにわかには信じられない光景だったのです!!
しかも単純な空高くということではなく、地球上なのかすらわからないどこかの空に浮かんでおりまして、救助とかそういった問題ではなさそうで……
三週間前に突然起こった爆発のようなものでこうなってから、一向に元に戻ったりする気配はないようなのです。
そんな信じられない光景を見て、少女は何か思い出したとか。
何かの手がかりになるかも?と聞き耳を立てる若手達。
すると彼女は、大見得を切ってこういうのです!
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板垣死すとも自由は死せず!
……こうして、議員達とうら若き板垣退助の、長いような短いような日々が幕を開けるのでした。

というわけで、板垣を中心に巻き起こるドタバタを描いていく本作。
とりあえずいろいろ面倒な事態になることを防ぐため、彼女を若手議員の妹、あるいは友達としてあつかおうと言うことになります。
自分が板垣退助だと言う少女の処遇、そしてなぜ議事堂がこんなことになってしまったのか?
その2点が中心となり、物語は展開していくことになるのです!
本作は長期連載も視野に入れていたのか、この単行本全一巻の半分くらいが舞台の設定の説明のようなお話になっています。
残り半分で物語りは急に折りたたまれることになるわけですが、だからと言って投げっぱなしエンドではありません!!
一連の謎も解き明かされた上、突然地面ごと建物が異世界にワープ、というとある偉大な先人の作品に習ったかのようなラストが待ち受けているのです!!

ドタバタ政治家コメディ、「しすとも」は全国書店にて発売中です!
いまやエロス方面で人気の稲光先生が放つ、ちょっぴり社会派コメディである本作。
本作のようなコメディメインの作品といえば、第2巻発行以来音沙汰のない「大江戸あん・プラグド」の続きも気になるところなんですが……小学館さんどうなんですか!?
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!