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本日紹介いたしますのはこちら、「ニッケルオデオン 緑」です。
作者は道満晴明先生。
小学館さんのIKKIコミックスより刊行、月刊IKKIにて連載されています。

さて、様々な時、様々な場所で、様々な人物に、様々な出来事が巻き起こる様を描いていく本作。
一話8ページという短いページの中に詰め込まれた、愛と笑いと涙。
今巻でまっているのはどんな物語なのでしょうか?

顔は青ざめ、震えが止まらない吾妻さん。
彼女をここまで追い詰めたのはなんなのか?
答えは簡単、失恋です。
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初恋でした。
一目見て、運命の人だと確信しての告白。
ですが結果は惨憺たるモノで、あっけなく振られてしまったのです。
そのショックは凄まじく、夜眠れないわ、朝起きられないわ、ご飯は苦く感じるわ、おかずは1品足りなく感じるわ、脇汗もとまらないわともう大変です。
こんなことなら恋なんてしなければよかった。
そう考えた彼女は、とある心当たりをあたることにしたのです。

吾妻さんが尋ねたのは、コトトイという女生徒のところでした。
何でも彼女、催眠術が得意なんだとか。
そこで吾妻さんは、自分の中にある彼の記憶を消してくれ!と頼んだのです。
なんだか難しそうな注文ですが、コトトイは難しいわけじゃないから別にいい、とあっさり了承してくれました。
ですがその前に、本当に彼の記憶を消すと言う選択でいいのか、と確認を始めました。
記憶をそのままにしつつ彼のことを嫌いにするとか、別の男の子のことを好きにするとか、代替案はたくさんあるのですから。
それでも吾妻さんの決意は変わりません。
彼のことを嫌いになっても、彼を好きだった事実がある限り苦しみは続く。
それに新しい恋なんてしばらくは考えられないから……
じゃあやっぱり彼の記憶を消しましょう。
そう言って、コトトイはなんと
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ひも付き5円玉を取り出しました。
あまりにもテンプレなアイテムの登場に、冗談かとも思いましたがコトトイさん、どうやら本気です。
オマケに始まったのは、あなたはだんだん眠くなる……という、またまた大テンプレ。
べったべたにも程がある施術になん札か恥ずかしくなってきた吾妻さんは、ついでにこの催眠術を受けたと言う記憶も消してくれ、とお願いすることに。
その心配はなかったようで、彼に関する些細な記憶も消えてしまうので、この催眠術のことも綺麗さっぱり忘れてしまうんだそうです。
心配も解消されたところで、催眠術も大詰め!
彼のことを思い描きつつ、催眠術に集中していき……

何もかも、元通りになりました。
彼のことはすっかり忘れ、彼と出会う前の吾妻さんに。
と、言うことは……
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彼女は初恋をします。
間違いなく運命の人だ、と一目見て確信し、それ以来毎日がウキウキハッピー状態!
生まれてはじめての恋心を……あの彼に。
何も知らず幸せ満タンの彼女を見下ろして、コトトイは呟きます。
また同じ結果になっちゃったわね。
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あなたもう、同じ記憶を五回消してるのよ。
……その様子をずっと見ていた人物がいました。
彼はクラマエ。
クラマエは5階も繰り返していると言うことに違和感を感じています。
男のほうの記憶はあるのに、同じ子から5回告白されて事務的に5回振ったのか?と。
確かに本当なら奇妙に感じて吾妻さんに問いかけ、そこからは違う展開になっていくはずです。
コトトイは冷たく言い切りました。
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それだけ彼にとって、吾妻さんは興味の対象外なんでしょう。
たとえ吾妻さんにとっては、運命の人でも、と……
運命の相手とまで入れ込んでるのに、そんなに一方通行なモノなのか?と、クラマエが驚くのも無理はないでしょう。
が、コトトイからすればそれは当然のことのようです。
恋の運命なんて大抵は一方通行なものよ。
私とクラマエ君だってそうでしょう?
そういわれたクラマエは、うっと言葉につまってしまいました。
彼女とクラマエの関係も……つまりはそう言うことなんでしょう。
コトトイはそんなことを言った口ですぐ、さあ一緒に帰ろう、あの愛人女(キヨスバシ)もいないことだし、とクラマエの腕に抱きついて歩き始めるのです。
彼女は、最後に吾妻さんを振り返りました。
そして心の中ではこんなことを思っていたのです。
私、あなたには期待してるのよ。
あなたが何十回、何百回と繰り返して、何かを変えることが出来たなら。
それは私にとっても、希望だもの。
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というわけで、恋と催眠術を巡る、二人の女心を描いたエピソードを収録した今巻。
前巻「ニッケルオデオン 赤」を読んだ方ならもちろんお分かりかとは思いますが、このコトトイとクラマエ、そしてキヨスバシの3人は、三角関係……と言うのとはちょっと違う感じがしますが、ちょっと複雑な関係の人々でして。
このエピソードだけでもちょっと笑えて、それでいて切ないながらも希望が感じられるお話が楽しめるのですが、前巻を読んでいればより一層楽しめる内容なのです!!
この他にも、悪魔との契約を描いた話、ゴミ屋敷での引きこもりを続ける少女と彼女にプリントを届け続ける少女のお話、流れ星に願いごとをしたらとんでもないお願いがかなってしまったお話などなど、ブラックジョーク的なものからじんわりいい話し、そしてギャグ一辺倒のお話まで様々なジャンルを用意しております!
そしてなにより、頭に天使の輪をつけた少年と、彼にお姉さんと慕われる女子高生とのふれあいを描く連作も注目したいところ!
道満先生の魅力が十二分に発揮された、コミカルでホンワカ、なおかつちょっぴり怖いムードを孕んだお話となっております!!

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道満先生作品の中でも癖が少なく(これでも、ですよ!)、入門書としてもいい感じの本シリーズ。
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