ug0
本日紹介いたしますのはこちら、「鬱ごはん」第1巻です。
作者は施川ユウキ先生。
秋田書店さんのヤングチャンピオン烈コミックスより刊行、ヤングチャンピオン烈にて連載されています。

さて、本作はいまブームになりつつある一人でB級グルメを食べる系の作品です。
そういった作品には、B級ならではの美味しさを感じさせてくれる描写や、一人で黙々と食べながらも味を解説してくれるちょっと滑稽ながらも共感も出来る要素などがつき物。
ところが本作においては、「おいしそう」という部分はバッサリカット!
むしろ不味そうにすら思わせる要素やら、タイトルにもなっている「ごはん」がどうでもよくなってくる話が満載なのです!!

毎朝、堕ちていく飛行機の中で目が覚める気分だ。
人は遅かれ早かれ必ず死ぬ。
みんな知っているのに、何故生きねばならないのか。
どうせ死ぬのに飯は食わねばならない。
生きることも死ぬことも、日々断念し続ける……
鬱野たけし、22歳、就職浪人。
そんなことを考えながら、牛丼屋の中へと入っていきました。
店員とコミュニケーションを取らなくて良い食券はいい、と心の中で呟きつつ押したボタンは「豚焼肉定食」。
程なくしてでてきたその定食を見て、思わずたけしはこんなことを考えてしまうのです。
ug1
墜ちていく飛行機で出される機内食だ……

日々そんなことを考えながら生きているせいでしょうか。
彼にはいつのまにやら、妖精さんが見えるようになっていました。
他の人には見えない、言葉を喋る黒猫の妖精さん。
今日も今日とて、毒を吐いて飯を飲むたけしに突っ込みを入れてくるのです。
ug2
このサラダはほとんどキャベツだけじゃないか、前の客が念入りに触った箸の中からさっさと自分の使う箸を選べ。
そんな妖精さんを無視し、食事にうつるたけし。
それでも豚焼肉にポン酢ソースをかければ、ポン酢は魚の臭みは消すが肉の臭みは消さないって至高のメニューを作っていた人が言ってたぞ、と妖精は突っ込みをやめません。
ブタの死体は美味いか?
……食べ物の「美味い」というのは、グルタミン酸やイノシン酸を舌が感知して送られる電気信号に過ぎない。
荘厳なるブタの「死」は一瞬の電気信号に消える。
そんなあまりにも現実的なたけしの思考を読み取った妖精は、シュールだ、と一言。
ug3
無視を決め込んでいたたけしもその発言には思わずシュールなのはお前の存在だろ、と突っ込まずにはいられないのでした。

死を噛み締めて肉を食うくらいならベジタリアンにでもなったらどうか?
そう問いかけてくる妖精を、たけしはそんなものは偽善だと切り捨てます。
そして勝手にベジタリアンの前世を「ハエ取り草に食われたハエ」だと予想し、植物に復讐心を燃やして執拗にサラダを食ってるんだ、とそりゃもういい加減な持論を展開するのです。
草食男子にもドロドロとした内面があるってことだな。
妖精も勝手に納得してみるのです。

アレだけ文句を並べても残さずに食べるんだな、と言うツッコミを締めにして、食事は終わりました。
後は帰るだけですが、食券制ならではの悩みがたけしにはあるのです。
お金を払ってありますから、スッと立って帰ればいい。
ですがその行動がどうしても、食い逃げっぽい気分を誘発してしまうのだそうです!
目の前に店員さんがいれば「ご馳走様」も言いやすいのでしょうが、あいにく店員さんはキッチンのほうに引っ込んでしまっていて遠くのほうにいまして。
そこに届くほど声を張る勇気はありません。
こっそり帰ろう、と息を潜めて忍び足で出口に向かうたけしですが、店員さんはその気配を敏感に察知!
「ありがとうございましたーっ」という例の言葉をたけしに投げかけてきたのでした!
たけしはびくりとした後すこし考え……
ug4
「ごちそうさま」と言ってる風の呟きと軽い会釈でお茶を濁すのでした……

まずくはなかったし満腹感も得られた。
だが作業工程のみ考えた場合、食事とは大層面倒臭い行為だ。
いつか死ぬその日まで飯を食べ続けないといけないと思うと、すこしうんざりする……
いつの間にか妖精は消えていまして。
たけしはもともといなかった妖精にさえ向けられていない、鬱々としたため息を漏らして家路に付くのでした……

というわけで、就職浪人たけしのどうしようもない食事風景を淡々と描いていく本作。
とある主人公はこういっていました。
「モノを食べる時はね 誰にも邪魔されず 自由でなんというか 救われてなきゃあダメなんだ」「独りで静かで豊かで……」。
ですが本作においては、「独りで静か」と言うところはともかく、豊かさどころか自由すら満足に得られない食事風景が描かれ続けます!
あるものといえば、ただ生きるためだけに詰め込まれる食事とそれに対するいちゃもん(?)、そして食事に関してのネガティブ方面のあるある!
……そんな作品が面白いのか、と思われるのもごもっとも。
ですがそこは流石の施川先生、行き過ぎない不快さと、文字通り「ニヤリ」というのがふさわしい笑いで読者を楽しませてくださいます!!

ひとりぐらしの寂しいごはん、「鬱ごはん」第1巻は全国書店にて発売中です!
楽しいだけじゃない食事を淡々と描く本作。
終いには一口も飲み食いしないお話もでてきますが……問題ありません!!
この独自の味わいは、読んで見なければわかりませんよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!