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本日紹介いたしますのはこちら、「ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~」第3巻です。
作者は原作が宮崎克先生、漫画が吉本浩二先生。。
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックスエクストラより刊行されました。

さて、「ブラック・ジャック」の創作時だけにとどまらず、手塚治虫先生と彼を取り巻く様々な人々の様々なドラマを描いていく本作。
今となっては漫画の神様とまで言われている手塚先生の、あまりにも自由な行動の数々が印象に残ることでしょう。
今回はそんな中でも、型破りにもほどがあるエピソードに焦点を当てて紹介したいと思います!!

1981年。
高田馬場にある手塚プロへ、一冊の本が届けられました。
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「鉄臂阿童木(ティピアトンム)」……押しも押されぬ傑作、「鉄腕アトム」の中国語版です。
ちなみに前年の80年、中国で初めて日本製「鉄腕アトム」のアニメが放送されていまして、それが大好評。
子供達の間でアトムごっこが流行るほどの大ブームとなっていまして、その人気を見込んで刊行された一冊だったようです。
が、実はと言いますかやはりと言いますか……この中国語版、無許可で発行されたものでした。
当時の中国はWTOに加盟しておらず、日本の著作権は無効。
01年に加盟しても今現在あれなのですから、当時なんて今とは比較にならないくらい簡単に、いわゆる海賊版がリリースされていたのでしょう。
オマケにWTOに非加盟なわけですから、これも政府の許可を得た正式な出版物ということになりまして。
だから向こうも深く考えず、律儀に見本誌を送ってきた、というわけのようです。

そんな本を見せられて、手塚先生はどんな反応を示したのでしょうか。
それはもう当たり前、物凄い勢いで怒り狂っていました!
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酷い、酷すぎる!
怒りに震える手塚先生に、手塚プロのスタッフ達も賛同。
外務省を通して抗議しよう!ということになりました。
勝手にアトムを出版するなんて、作品には著作権というものがあるのに、著作権への理解が足りないんだ、使用料と言うものだってあるのに。
そんなことをぼやきながら電話のダイヤルを回し始めるスタッフ達。
ですがその言葉を聞いて手塚先生は
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きょとんとした表情を浮かべるではないですか。
電話をかけていたスタッフを捕まえて、違う違うと言い出す手塚先生。
そしてその中国版アトムの1ページを開き、そのうちの一コマをバシッと指差して言うのです!
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「絵がひどいんです!!」と!

日本の漫画原稿は通常縦長です。
ところがこの中国版、横長の特殊な判型をしています。
そのため原稿を上下に二分割するなどの編集を施して作られていました。
ですが漫画には、縦長のコマ等もあることは皆さんもご存知の通り。
どうしても判型におさまらない縦長のコマは、中国側で勝手に描き直されていたのです。
お金云々よりもその描きなおされた下手な絵に怒りを感じているらしい手塚先生に、絵に関しても合わせて厳重に抗議しよう!とスタッフは声を挙げました、
ですが手塚先生はこんなことを言い出すのです。
直します。
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私が原稿を直します!!

なんと手塚先生、この版型に合わせて、自らの手で絵を描き直すと言うのです。
もちろん著作権無視の海賊版を手直ししたところで、原稿料などが発生するわけもなく、ただ働きになることは100%あきらかです。
そのことをスタッフにズバリ告げられても、手塚先生は憂いの表情を浮かべるどころか、ニヤリと笑みを浮かべる始末。
面白くないんですよこんな絵じゃ!!ちゃんとした絵で中国の人にも楽しんでもらわないと!!
こうなってしまった手塚先生を止められるものなんかいません。
幸いと言いますかなんと言いますか、すでに刊行済みであるこの鉄腕アトムに関しては絵の修正は間に合いませんでした。
が、続いての刊行が予定されていた「ジャングル大帝」は、実際に絵を直してしまったのです!
もちろんその作業はちょっとした編集などというレベルではありません。
日本語で書かれた書き文字を消したり、背景を描き足したり……
丁寧に修正した原稿を中国側に送ったのでした!
言うまでもなく原稿料や印税は入りません。
ですがこの自分の作品に対しての、異常なまでのこだわりこそが「手塚治虫」なんだ。
当時のスタッフたちはそんな「手塚治虫」を見せ付けられたのでした!!

というわけで、手塚治虫先生の凄まじさを見せ付けられるエピソードを収録した今巻。
スタッフや原稿を待たされている編集者さんからすればなんと言いますか、迷惑としか言いようのない手塚先生のこだわり。
その行動の是非はともかくとしましても、手塚先生のもつただならぬ情熱は感じ取れるはず!
手塚先生が漫画の神様とまで言われる所以の一端を垣間見れると言っていいのではないでしょうか!
この他にも手塚先生の並ならぬ熱意を体感できる物語が多数収録!
ブラック・ジャックと同時期、同雑誌で立ち上げられた医療漫画にまつわるお話なども必見ですが、未完成の原稿が載ってしまったときのエピソードは特に印象的です。
未完成と言っても、編集の暴走でもって言った原稿の1枚の中の、3コマ……それも、車内で会話している人物のアップのコマの、背景が描かれていないだけにすぎません。
はっきりいって、この程度なら背景がなくてもなんら違和感がないといってもいいくらいです。
が、その原稿が雑誌に掲載されてしまったのを見た手塚先生の反応は……?
そのときの神様の顔は、想像を越えたものでした!!

手塚先生の底知れなさを描く、「ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~」第3巻は全国書店にて好評発売中です!!
今まで公にはあまり語られなかった、手塚先生の裏(?)の顔を描いて漫画界に衝撃を齎した本作。
ドラマ化も決定し、今後の展開が気に掛かるところですね!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!