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本日紹介いたしますのはこちら、「閲覧注異 グラフィック・ドキュメント」第1巻です。
作者は原作・構成が阿鬼乱太先生、漫画がDAY WALKER先生。
秋田書店さんのヤングチャンピオン・コミックスより刊行、ヤングチャンピオンにて連載されています。

阿鬼先生は森一生の名義で96年から週刊少年マガジンにて「釣りに行こうよ」を連載したベテランの漫画家さんです。
その後も講談社さんの雑誌で「釣りに行こうぜ!!」「バスケマン#5」を連載、「禍霊ドットコム」の原作を担当。さらにweb雑誌で「迷宮のアリスリドル」を連載するなど、継続的に作品を発表していらっしゃいます。

DAY WALKER先生は検索しても全然情報が出てこない謎のお方。
しっかりとしたリアル路線の絵を描かれてらっしゃいます!

さて、本作は作中でもちょっと触れられていますが、往年の「MMR」を髣髴させる、「編集部がオカルティックな謎を追う」作品です。
ですがさすがにと言うかなんと言いますか、人類は滅亡する!!というような大規模すぎる謎は追っていません。
メインは今のオカルト世界でのメインストリーム、都市伝説。
「くねくね」と言ったネット発祥のものから、同じくネット発祥の「コトリバコ」を思わせるアイテムと世間を騒がした御神木に薬剤を注入された事件を融合させた話、そしてオカルト好きの間では超有名な「がんぼう岩のカレンダー」を取り扱った物語などなど、新旧様々なネタに迫っていくことになります。
今回はそんな中でも、とりわけ知名度の高い都市伝説「フ○ンタ ゴールデンアップル」にまつわるお話を紹介したいと思います!

きっかけは、編集部に送られてきた一本のビンでした。
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ラベルに燦然と輝く、「ゴールデンアップル」の文字。
70年代半ばに発売されていた、といわれているものの、現在はその証拠や公式な記録が一切残っておらず、同時期に発売された「アップル」と「ゴールデングレープ」を混同した記憶で想像されたものなのではないかと言う説まである飲み物です。
近年公式にゴールデンアップル味は発売されたわけですが……だからといってあったかな買ったかという論争を収める理由にはならないわけで。
このビンの発見が、ついにその論争に終止符を打つことになるのでしょうか!?

そのビンを持ってきたのは、47歳の小野寺さん。
小野寺さんは、この間何十年ぶりかの同窓会に出席。
そこでゴールデンアップル論争を繰り広げたのですが、やっぱりその結論は出ないままだったのです。
まあそれもあくまで酒の肴に過ぎません。
そのまま懐かしい仲間二人と帰路に着いたのですが、そこでたまたま同窓会には出ていなかった酒屋の息子だった幼馴染、岡田に出会ったのです。
そのまま今度は岡田を加えて4人で飲みなおすことに。
そこでもゴールデンアップル論争をしようと話題に挙げてみると、岡田は当然のようにあったじゃないか、みんなで飲んだじゃないかというのです!
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少年の日に飲んだゴールデンアップルの味に思いを馳せ、遠い目をする岡田。
自分の覚えていない思い出を岡田が持っていることにうらやましさや悔しさを感じた小野寺たちは、なんとかそのゴールデンアップル存在の証拠をつかもうと考えます。
そこで思い浮かんだのが、とある山にあったゴミ置き場。
そのゴミ置き場には、登山者が捨てて言ったゴミをまとめておいてあるところがありました。
有り余る土地、ごみ収集者が行き辛い土地柄……いろいろ原因はあったのでしょうが、そこには昔からのごみがきちんと処理されないまま、集めるだけ集めてあったのです。
飲料ゴミが捨ててある場所にむかい、丹念にゴミを調べていく。
数時間も探したでしょうか。
ついに求めていた、ゴールデンアップルのビンを発見したのです!!

ところがビンを持ち帰って3日も経ったころでしょうか。
一緒にゴミ漁りをした友人から電話が掛かってきたのです。
「お前んとこにも、アレ、出た?」
意味がわからない小野寺ですが、すぐその意味を思い知ることとなります。
突然ツンと来る臭い。
なぜかバスルームから漂ってくるようで、風呂桶にかぶせられている蓋を開けてみると
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目の真っ黒に落ち窪んだ、奇怪な人間の顔がのぞいていたのです……!!

ゴミ漁りをした三人のもとに出たそれ。
原因はおそらく、あのビンにあると見て間違いないでしょう。
このゴールデンアップルが発売されたのは75年。
そのあたりに何か、霊が出るような大事件があったのではないだろうか?
電話をかけて母親に尋ねてみると、丁度その時同じ町にすむ田中が溜め池で溺れ死んでいたと言う事件があったことがわかります。
その事件、当初は田中の行方がわからないまま時間がたっていまして、当時流行っていた超能力者による捜索というテレビ番組の企画がやってきていました。
その映像を確認したところ、野次馬に3人が映っていまして。
さらにその超能力者が本物だったのか偶然だったのか、田中の死体が発見されまして。
3人は年の近い子供の溺死体を見たことに、大きなショックを受けたのです。
そしてその際撮影された映像には、溜め池に浮かぶ田中のすぐ横に「ゴールデンアップル」と刻まれた、缶の映像が映っていて……!!
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あまりの恐怖にその記憶を封印していた3人。
岡田はその事件を見ていなかったからゴールデンアップルのことを覚えていた。
3人だけが共有する改変された記憶、「共同幻想」。
奇しくもゴールデンアップルがその共同幻想を打ち破り、本当の記憶を呼び覚ます鍵となったと言うわけです……

ここで終われば普通の(?)心霊体験でした。
ですがキドコロは3人とともに、映像に映っているゴールデンアップル缶バージョンの存在を調べようと考えます。
もしかしたら岡田の酒屋に情報があるかもしれないと、早速岡田の家へと向かいました。
ところがそこには、空き地がひたすら広がっているだけ。
そして家のかわりに、「殺生を禁ず」と刻まれた石碑がありまして。
附、とその時小野寺達の記憶がよみがえりました。
ここに昔、奈落沼と呼ばれる沼があった。
足を取られたら死体もあがらないと先生たちが近寄ることを禁じていた沼が。
ですがあるとき岡田が、そんな沼に釣りに行こうと誘ってきたのです。
小野寺たちは葛藤したものの、結局一緒に行くことに。
誰も近づかないだけあって入れ食い状態。
岡田はそんな中、ゴールデンアップルを飲みながら葦で出来た岬を歩いていました。
ところがその直後、叫び声が聞こえたのです。
視線をうつしてみると、岡田が沼に足をとられています。
黒い泥が、みるみると岡田を飲み込んで行き……
助けようとしても、岡田より体の大きかった三人ではそこまで行くことすらできません。
助けて、とうめき沈んでいく岡田を見て三人が取った行動は……その場から逃げること……
まだ子供だった三人には助けることも、立ち入り禁止の場所に入ってしまったことを打ち明ける勇気も出せませんでした。
ただ、怖さのために逃げ出した……
……そう、岡田はとっくの昔にここで死んでいたのです……
久方ぶりに姿を現した大人の岡田は、三人の両親の呵責が生み出した「共同幻想」。
無かったことにしたかったのは、ゴールデンアップル等ではなく、自分達の犯した罪だったのです……
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というわけで、幻のジュース探索から思わぬ方向へと物語が転がっていくエピソードを収録した本作。
このお話のように、都市伝説から思いもよらない出来事に遭遇していくのが本作の主な流れとなって行きます。
前述の作品意外にも、未発売の奇妙なゲームソフトに隠された真実や、好事家の間で話題になった骸骨レコードが招いた恐怖などなど、実に様々な題材が描かれています。
こう言う作品にはお決まりの「この物語はフィクションです」の表記がなかったり、序文で「完全実の真相をレポートする。」と強気の文章が描かれていたりと、いろいろ読者の期待を煽る仕掛けがされているのはステキ!!
写真を交えて漫画を描いているだけあってリアリティもひとしお……といいたいところですが、その写真に写っている小道具のもろもろが妙に安っぽいのが逆にリアルじゃなく感じてしまうのはご愛嬌と言ったところでしょうか!!
なんにせよオカルト否定時代に燦然と輝くオカルト調査漫画であることは確か。
第1巻収録の最後の一編でとんでもない出来事が巻き起こってしまうのですが……どうなっちゃうんでしょうか!!
とにかく先が楽しみです!

リアルとファンタジーの間で繰り広げられる、「閲覧注異 グラフィック・ドキュメント」第1巻は全国書店にて発売中です!!
今後取り上げる題材と、それにどんな事件を絡めて行くのか楽しみな本作。
これからどうなっていくのか、いろいろな意味で興味深々ですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!