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本日紹介いたしますのはこちら、「恐之本 参 高港基資ホラー傑作選集」です。
作者は高港基資(たかみなともとすけ)先生。
少年画報社さんのSGコミックスより刊行されました。

さて、実力派の高港先生が書き溜めてきた恐怖譚を集めるこの単行本シリーズも、好評のようでついに第3巻刊行となりました。
今巻もその確かな画力で描かれる恐怖が10編、250P超にわたって収録。
熱い夏の日も必要以上に涼しく暮らしていけるストーリーが堪能できるのです!
今回はそんな中から、得体の知れない存在に怯えることとなる「ポスト爺」と言うお話を紹介したいと思います。

道を歩いていると、どこからとも無く笑い声が聞こえてくる。
周りを見回しても誰もいない。
だがその道端に建っていたポストを見てみると、
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中から男の顔が覗いており、それが笑い声をあげていた……

と、言う噂が囁かれていたポストにやってきていた3人組。
柿崎と、古沢は子供の頃そのポストの近所に済んでいまして、たまたま通りがかった勢いでこのポストによってみたのです。
同行していた古沢の彼女は、「学校の怪談」めいた恐怖話に怯えている様子。
昔ここで誰かが死んだとかの因縁話があるのか?と恐る恐る尋ねるのですが、そういった因縁話はもちろんのこと、小男の変質者がすんでいる、というなんだか生々しいお話もあったんだそうです。
なんでも夏の朝4時に虫取りに行った子が、小さな人影が何か重そうなものを「中」に引っ張り込んだのを見たんだとか……
それ以来奇妙な殺人事件なんかがあると、みんなポストじじいがやったんだ!などと噂をしていたんだそうです。
冷静に考えると、毎日業者が回収に来るポストに人が住めるわけありませんし、うわさは眉唾物。
ですが柿崎は、このポストには普通張り出してある回収時刻表示が無いし、誰も回収に来ていた様子を目撃していない……と、割りと信じているようなそぶりを見せるのです。
古沢はもともとまったく信じていなかったことに加え、彼女が同行したことで気が大きくなっていたのでしょう。
おもいっきりそのポストを蹴飛ばした挙句、ペットボトルの水を投函口からどぼどぼと流し込んでしまったのです!!
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なんと言うことをするのでしょうか!
もし噂が本当だったら……?
そして以外に常識人な古沢の彼女さんは、中の手紙が濡れちゃうじゃない!とモラル溢れたツッコミを去れてしまうのです。
が、古沢は一切悪びれず。
朝までには乾くだろうなどとのたまい、家路に着くのでした。

数日後、柿崎のところに古沢から凄い剣幕で電話が掛かってきました。
なんだかよくわかりませんが、すぐ来いと言うので行ってみると、古沢はお前うちのポストに小便しただろう!と怒鳴りつけられるのです。
あの時やったことがそんなに気に食わないのか、ポストじじいの仕返しだと怖がるとでも思ったのか?
そんなことをまくし立てる古沢ですが、柿崎に身の覚えなどあるはずもなく。
自分の彼女はこんなことをするはずが無いし、となるとあのことを知っているのはお前だけだ、とそんなことは構わずに怒号をあげつづけるのですが……
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その時、玄関のポストにボトボトと土が投げ込まれるではないですか。
今ここに柿崎がいる、ということは何よりも犯人でないことの証。
冷静になった古沢は、柿崎に謝るのですが……
となると犯人は誰なのでしょう。
この時は水や土ですんでいたのですが、徐々に投げ込まれるものはおぞましいものへと変わっていくのです。
生ゴミ、ゴキブリ、そして……猫の惨殺死体……

怒りに狂った古沢は、柿崎を呼びつけて交代で犯人を捕らえようと24時間体勢で玄関に張り込むことを決意。
巻き込まれた柿崎からすればたまったものじゃありませんが……何よりも柿崎はこの犯人が、「捕まえてはいけないもの」なんじゃないか、と言う予感がしてならないのです。
そう思いながら泊り込み始めて3日目のこと。
ボトン、とポストに何かが投げ込まれました。
つんと鼻を突く異臭、見る間でもなくそれが排泄物であることはわかりました。
すかさず古沢の腕にくくりつけられた紐を引っ張ると、古沢は目を覚まして玄関の扉まで走り、怒りの雄たけびとともに外に飛び出しました。
すると、丁度人影が死角に入り込むところが見えます。
アレがポストじじいなのか?柿崎は古沢に促されるままにその人影を追うのですが……
かちん、と何かがしまる音とともにその人影は姿を消しました。
その音が出たところにあったのは……
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郵便ポスト。
もしかしてこのポストの中に入った、とでも言うのでしょうか……?
音がしたと言うだけでそう思い込むのはいくらなんでも乱暴かもしれません。
ですが怒りに萌えて冷静さを失っていた古沢をとめることはもうできません!
いるんだろうと声をかけたかと思うと、今度は投入口からライターのオイルを注ぎ込みました。
そしてお売れ前途のお返しだ、と火のついたライターをポストの中に投げ込み……!!
中でバッと火がついたかと思うと、短い叫び声がポストの中からあがったではないですか!!
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やっぱりいやがったと笑う古沢!
ですがその騒ぎで誰かが駆けつけるかもしれません。
ポストじじいが何をしたにせよ、古沢がポストに火を放ったのは事実。
柿崎はとにかく逃げるぞと古沢を引っ張るのでした。

翌日、新聞にその子とが記事になっているのを見つけます。
ポストに放火、被害は手紙数通。
なぜか郵便物の取り出し口が開いていた。
……それから一ヶ月たっても、焼死体が発見された、というようなニュースが流れてくることはありませんでした。
ではポストの中で焼かれたものはどこに行ったのでしょうか……?
ポストに水を入れただけで、アレだけの仕返しをしてきたモノです。
その身を焼かれた仕返しは、どのようなものになると言うのでしょうか……?
実際古沢も、自分の元へ郵便物が届くためにアレが来たのではないか、と怯えるようになっていました。
同じく、柿崎もポストじじいの復讐の手がのびる悪夢にうなされるようになっていたのです。

そんなある日のこと、古沢が死んだと言う一報が届きました。
その死因は……薬物と酒の過剰摂取。
あの一見依頼眠れない日々が続いていた古沢は、多量の酒や睡眠薬の力を借りて眠りにつくようになっていました。
あるとき、その両方を一度にやってしまったのが運のつき。
昏倒し、そのまま意識が戻ることはなかったのだそうです。
意外なことに、古沢の死に顔はやすらか。
正直言って古沢は、柿崎が非業の死を遂げると思っていました。
だから不謹慎ではあるものの、その死に様は柿崎を僅かながらホッとさせてくれたのです。

後日、古沢の遺体の火葬が行われることになりました。
ですがその火葬の真っ只中、恐ろしい出来事が起きていたのです。
古沢の遺体が納められていた棺ごと燃やす炉の中から……
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ガタガタと言う物音と、断末魔の悲鳴が、漏れ聞こえていて……

というわけで、ポストじじいの恐ろしい復讐が描かれるエピソードを描く本作。
この結末は想像するのも恐ろしいものですが、最後まで結局ポストじじいの正体どころか、姿すら明かされないのもまた恐ろしいところ!
それはきっと今も、ポストの中から我々を見つめているのでしょう!!
この他にも恐ろしい話ばかりが取り揃えられています。
子供が子の家にもう一人すんでいる、と落書きで伝えてくると言うどこかあの「オチョナンさん」に通じるところがあるものの、その結末はあまりにも衝撃的過ぎる「ぶたにんげん」。
毎日同じ時間に、SNSの自分のページに無言の足跡だけを残す人物の恐怖に満ちた正体を描く「元カノ」。
人間に死をもたらす人の塊のような物体を目撃した男に告げられる恐ろしい真実、「ひとだま」。
その場所にいたと言うだけで逃れられない死の呪いが降りかかる「豪火」。
引っ越したその先で、夜な夜な妻の妻が様々なものに変わり、夫に語りかけてくると言う「寝顔」。
どれをとっても恐ろしく、おぞましいお話ばかり!!
作画もお話も文句のないクオリティとなっておりまして、思う存分正当派の恐怖に浸ることができるのです!!

高港先生の傑作恐怖短編集第3弾、「恐之本 参」は全国書店にて好評発売中です!
恐怖はいつどこでその牙をむくかわからない。
そんな理不尽を描ききる本作、まさに夏の夜に読むのこそ最適ですよ!!
この調子で第4巻も出てほしいもんですが、どうでしょう少年画報社さん!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!