k30
本日紹介いたしますのはこちら、「水木しげる漫画大全集 貸本版河童の三平」上です。
作者は水木しげる先生。
講談社さんより刊行されました。

さて、本作は水木先生の代表作のひとつである「河童の三平」のオリジナルである、貸本版を収録した一作です。
河童の三平といいますと、特撮ドラマ化したり映画化したりと、一般での知名度で言えば水木先生作品内で「鬼太郎」や「悪魔くん」に次ぐ知名度を持っている作品といっても過言ではないでしょう。
ですがそんな映像化作品を読むつもりで本作を読みますと、度肝を抜かれること必至!!
水木先生ならではと言うほか無い、あまりに奇抜、あまりに脱力的、そしてと気にぎょっとするほどのシビアさを垣間見せる作品になっているのですから!!

十年に一人しか人が通りがからない、とまで言われる山奥に、一軒の家が建っておりました。
そんな家に住んでいるのは、老人と孫の二人。
その孫が今日、めでたく小学校に入学することになったのですが……?

この家、河原家は孫の三平で13代目になるのだといいます。
おじいさんは皆偉い方々だった、と振り返るのですが……その積み上げた実績(?)も三平の父親のせいで台無しになったんだとか。
なんと三平の父は、詐欺師。
身内から唾棄すべき犯罪者が出たことで地に落ちてしまった河原家の名誉、それを三平が挽回してくれると思っている……と、おじいさんはぴかぴかの一年生に告げるのです!!
k31
が、そのへんは三平もよくわかっているようで、しっかり勉強すると誓いをあげて学校に向かうのでした!!
歩きも歩いたり山道を20キロ。
ようやく学校の近くまで来たところ、三平の姿を見た子供たちがにわかに騒ぎ出すではないですか。
子供たちは慌てて学校に駆け込み、先生に告げます。
先生大変です!河童が来ました!!
……そう、三平の顔はお話の中の河童にそっくりだったのです!!

授業が始まっても、生徒達のざわめき……といいますか、笑い声はおさまりません。
いつか俺を見直すときが来るぜと反発しながら勉学に励むのですが、帰り道に至るまで三平はカッパカッパと馬鹿にされ続けまして。
k32
カッパと言うものは本当にいるものなのか……?
頭の中は徐々にそんな疑問に支配されていきまして、家につくなり始まった食事の席で、三平はおじいさんに尋ねてみるのです。
カッパというものはいるのでしょうか?と。
おじいさんはいるわけないと断言するのですが、となると三平は何故いないものに似ているとからかわれるのかが疑問でなりません。
たまたま絵描きが空想で描いたものにお前が似ていただけだとおじいさんに教えられると、三平はようやく納得して外に遊びに行くのでした。

魚を釣ろうと小船を川へ出す三平。
涼しい風が吹いて気持ちよい気候で、三平はいつしかうとうとし始めてしまいました。
これが普通の人ならば数十分から数時間、ガチの睡眠でも十時間もすれば目が覚めるところでしょう。
ところがこの三平は特異体質で、誰かに起こしてもらうまで寝続けてしまう習性があったのです!!
どんどん船は川に流されていき……そのまま2~3日が経ってしまいます!
船は人里は慣れた秘境めいた場所へと流されていき……そこで突然、何かが船上へ上がって来ました!
どうやらこいつがこの船をこんな秘境に導いたようなのですが、その正体はあろうことか
k33
リアル河童!!
河童は三平を、人間の服を盗んで人間の世界へ逃げようとした抜け忍ならぬ抜け河童だと思い込み、河童の国に連れ帰ろうとしていたのです!!
起こされた三平は目の前に突然現われた形になる河童にはそれほど驚かなかったものの、河童の国に連れて行かれそうになって慌てます。
目ざとく河童にへそが無く、自分にはあることを発見して、俺は人間だと猛アピールするのですが、河童はなんだこんなものと三平の臍を引ったくり、こうすれば俺にもつくぜと自分につけて見せまして。
グイグイと水の中に引き込まれてしまうのです!

川の奥深くに潜り、細い洞穴を抜け、出た先は空気のある広い空洞。
溺れて意識を失った三平を起こし、さらに空洞の奥地へと導いていく河童。
k34
辿り着いた先は河童の都でした。
ですがそこへつくなり、地元(?)の河童に突っ込まれました。
そいつは河童か?皿が無いじゃないか、と。
ここでようやく過ちに気がついた河童たち。
疑いが晴れ、これで帰れる……なんて甘い落ちが待っているわけがありません!
地元の河童さん、まさか人間を引っ張ってきたんじゃあるまいな!と激怒!!
もし人間だとしたら、粉々に叩き殺してしまわなきゃあ!!と見るからに痛そうな先っちょが金平糖みたいになったでっかい棍棒を取り出してきたのです!!
k35
……やられる!!
三平は必死で逃げ出すのですが、ここは河童の都。
逃げ切れるわけも無く、周囲をぐるりと河童に取り囲まれてしまい……!!
k36

というわけで、河童に似ていると言うだけで河童の国に連れて行かれ、その挙句に粉々にされそうになってしまう本作。
この時点ですでになかなか奇抜と言えば奇抜なストーリー展開なのですが、まだまだこんなものは序の口!
この後何の因果か、三平とそっくりの河童と共同生活をすることになったり、死神と普通に会話やら騙しあいやらしてみたり、狸にボコられたり、なぜかオリンピック代表選手加入を視野に入れた水泳大会に出ることになったりと、立て続けに奇天烈な事件な続出!!
めくるめく仰天の展開に、グイグイ引き込まれざるをえない奇妙な没入間を味わえることでしょう!!

水木先生らしさが大爆裂する、「水木しげる漫画大全集 貸本版河童の三平」上は全国書店にて発売中です!
読めば読むほど度肝抜かれる、奇天烈怪奇譚。
是非ともこの、いろんな意味でのすごさを体験していただきたいものです!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!