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本日紹介いたしますのはこちら、「水木しげる漫画大全集 貸本版河童の三平」下です。
作者は水木しげる先生。
講談社さんより刊行されました。

さて、河童に似ていると言うだけで河童の世界に引きずり込まれたり、その結果河童の留学生を受け入れるハメになったりした三平。
その後もなんやかんやありまして、なぜか三平は物凄く泳げる人物だと思われてしまい、オリンピック代表を狙う水泳大会に出場させられることに。
三平は一か八か、河童の「屁」を使った泳法に託すことにするのですが……

三平はもうだめだと言うところで、父が残してくれた小人の助けによって水泳大会で一位に輝きました。
次に控えているのは国体。
小人の勧めもあり、このチャンスを物にするために今度こそ河童泳法を物にすることを決意しました。
そのために河童の元へ急ごうとするのですが、その道中を悪戯ものの狸が妨害してくるのです。
最初は無視していこうとするのですが、狸が三平の作り上げたダイオkんを引っこ抜いては投げまくってくるので我慢の限界がやってきました!
僕は住人も小人を養ってるんだぞ、と棒をもって攻め込んでいく三平!!
ですが狸は大根畑に落とし穴を掘りまくってとことんからかってくるのです。

そんな地面の中で、狸は奇妙なカメを発見しました。
年代もののカメには中に何かは言っている様子。
宝物でもあるのかと狸がそれを開いてみると、
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そこからでっかい狸が姿を現します!!
何でもその狸、600年中に閉じ込められていた「刑部狸(ぎょうぶだぬき)」という妖怪だと言うではないですか!!
同じ狸でもお前のようなやさしいものではないと言う刑部狸。
外へでるなり大暴れしだし、たまらず家へと逃げ帰った三平と狸のあとを追いかけてきます。
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そして屋根を持ち上げて中で怯える二人に襲い掛かろうとするのですが、そこで狸は機転を利かせて「今ご馳走しようと考えて一足先に帰っていたんだ」と吹きました。
刑部狸は600年も閉じ込められていたものですからおなかがぺこぺこ。
気が効くじゃないか、と表情を和らげてご馳走の出来上がりを待ち始めるのでした。

とりあえず今は刑部狸をどうにかできる方法が見つかるまで時間を稼ぐしかありません。
風呂桶で芋でもふかそうと言うことになるのですが、刑部狸は待ちきれないと言い残して畑のものを全部食べてやる、と畑のほうへと去っていってしまいました。
やがておなかがいっぱいになると、三平の家の屋根をすっかりはがし、そこをベッド代わりにして高いびき。
畑の作物も家も奪われ、三平は絶望にくれるしかないのです。
ですがここで狸がひとつのアイディアを思い浮かべました。
刑部狸が入っていたカメ。
出てきたと言うことは、入れると言うことのはずだ!
何とかして刑部狸にもう1回このカメに入ってもらい、栓をしてしまおうと言うわけです!!
本当にこんなカメの中に入っていたのかといぶかしむ三平ですが、栓をあけて中をのぞくや否や、たちまち吸い込まれてしまいました!
すぐに狸によって助け出され、そのカメの力の確かさを身を持って確認したことになるのですが……
なんだか三平、つぼに吸われた拍子に何かダメージを追ってしまったようで。
ボーっとした漢字で何にも答えず、どこかへ去ってしまったのでした。
後を追おうとする狸ですが、そこへやってきたのが刑部狸。
晩飯の催促にやってきたようです!!
慌てた狸、準備もそこそこにカメ吸い込み作戦を実行することに。
この中に鍵を落としてしまったんだよ、と刑部狸を露骨に誘導したのです。
刑部狸もなかなかアレでして、狸の口車に乗せられてあっさりカメの中に指を突っ込んでしまいまして。
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たちどころに刑部狸は中に吸い込まれ、すかさずしっかり封!!
結構あっさりと刑部狸を捕らえることに成功したのでした!!

狸の活躍で家を取り戻した三平ですが、国体が迫っている事実は変わりません。
久しぶりに姿を現した河童のアドバイスで神様に聞いてみようと言うことになったのですが、神頼みで何とかなるほど世の中あまくありません!
神頼みが失敗し、その費用を使ってしまったことですっからかんになった三平が道を歩いていますと、今度は死神にバッタリ!
三平、いろいろあっていまや死神とすっかり知り合い。
ですが死神は所詮地獄のサラリーマンに過ぎません。
狙うのはあくまで死者の魂でして……
今回も「エンマ様からの電報」と称して、こんな文章のしたためられた文を持ってきたのです。
十月の国民体育大会のプールの中で、三平は水死する。
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流石にぎょっとなる三平、今からでもどこかへ逃げればどうだろうと訪ねるのですが、死神は逃げてもどうにかなる物じゃないから素直に運命に従えと語ります。
死神の手渡す「死者の手引」なる書を受け取り、とぼとぼと家に帰る三平……
三平はいろいろ考えた結果、何とか助かる道を模索するのですが、その作戦実行の準備の最中にも
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あやしげな存在が三平を追ってきたりしまして……
三平に襲い掛かる死の運命!!
果たして三平はこの運命から逃れることは出来るのでしょうか!?
胡散臭い死神の言うとおり、国体で散ることになってしまうのでしょうか!?
度肝抜かれる展開がモリモリ待ち構えております!!

というわけで、後半もゴイスな展開が連続する本作。
突然刑部狸という大物妖怪が出てきたかと思えばまたまた水泳大会に、そして死の運命から逃れるホラー展開へとめまぐるしく物語は転換していきます。
そしてこの後もそれはもう物凄い勢いでお話は変化しまくり!
魔女の花子が登場して、三平に危害を加えるのかと思いきや超いい子で仲良しになってみたり、東京で一人暮らしていた母と一緒に暮らすためいろいろあって毎日缶いっぱいの蝿を集めなくちゃいけなくなったり、猫の集団に襲われて猫の町に連れて行かれたり……
極めつけはその猫の町で三平に降りかかるとんでもない出来事です!
初めて読む方はそのあまりにも衝撃的過ぎる展開にお口あんぐりになること必至!!
そこから怒濤のラストに向かっていく展開、そしてそのある意味で読者置いてけぼりのラストこそが、ひょっとしたら水木先生の真骨頂かもしれません!!
自由奔放、だからと言って決して支離滅裂ではない、水木先生ならではの味わいを堪能するしかありませんよ!!

三平の人生を赤裸々に描ききる、「水木しげる漫画大全集 貸本版河童の三平」下は全国書店にて発売中です!!
水木先生でなければ描けないと言っても過言ではない、独特のストーリーが楽しめる本作。
そのとんでもない結末を見ずに人生を終えるのは損……かもしれませんよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!