ym0
本日紹介いたしますのはこちら、「妖怪博士の明治怪奇教授録」第1巻です。
作者はたなかかなこ先生。
集英社さんのヤングジャンプ・コミックスGJより刊行、グランドジャンプPREMIUMにて連載されています。

たなか先生は95年に「田中加奈子」名義でホップ・ステップ賞佳作を受賞、96年に手塚賞で入選を果たしデビューした漫画家さんです。
その後週刊少年ジャンプで「身海魚」「三獣士」を連載しますが、残念ながら相次いで打ち切りになってしまいました。
ですがその独自の作風と画風に魅力を感じた方も少なくはなかったようで、その後同じ集英社さんの青年向け雑誌に活躍の場を移し、継続的に作品を発表してきました。

さて、本作は一言で言えば妖怪モノです。
さらにいえば、妖怪を撃退したり説得したりする、妖怪退治モノ。
ですがそういった作品の代表である「鬼太郎」のような、単純なバトルではありません!
一風変わったコンビが挑む妖怪退治、その内容は……?

時は明治。
もはや時代は科学文明に一直線にすすんでいる……にもかかわらず、とある工事現場で奇妙な出来事が起こっていました。
事故、病気……様々な原因はあれど、死者が続出。
その数は7人にも渡ってしまっていたのです。
原因は工事現場にある水門に出ると言う妖怪「赤舌」の仕業であろう、とまことしやかに囁かれていて……
早いうちに水門を改築しないと、この山間にある村の開発はままなりません。
帝都からもしつこく進捗状況を尋ねられていますし、どうにかしなければならない、と開発に当たっている役人に焦りが募っていくのです。
そんな抱え込んでいた頭に、今すぐ工具を持って水門に行け!と命ずる声が突然届いてきました。
妖怪なんて迷信に過ぎない、存在しないものに怯えて二本の近代化の歩みを止めてはいけない、因習の象徴である水門を叩き壊すのだ!
そう声を張り上げるのは、日本各地の「妖怪」と呼ばれる思い込みや因習を打破する啓蒙活動を行っていると言う自称妖怪博士、東日流六平太(つがる ろっぺいた)。
そしてその後ろについているのは、助手の泊瀬武(はっせ たける)。
どうやら二人はここの事件を聞き付けてわざわざやってきたようなのですが……?

この六平太がここまでやってきたのはご高説の通り、迷信を証明するためです。
ところがその助手、武の思想はぜんぜん違いました。
ym1
妖怪は本当に存在するし、日本文化の宝だ。
六平太にそれを気づいてほしくて一緒に旅をしている……とのことで。
考え方は180度違うものの、妖怪がいると言うところに行って、その事象に出会いたいと言う思いだけは一緒なのです。
一同がためらう水門へ自分から行きたいと言う彼ら。
危険だと言う役人の班長ですが、補佐の佐々木が行かせてやろうと耳打ちしました。
あの二人が水門に行って無事だったら唯の迷信、もし死んでしまったとしても変な旅行者が勝手に事故死しただけですむ……とまあ、そんな打算です。
役人達の思惑はなんにしろ、行かせてくれると言うなら六平太にとって願っても無いこと。
とにかく水門へ案内してもらうことにしたのですが……
その前に、後ろを通り過ぎた掃除係のおばあさんが気になることを呟いていました。
太郎左は哀れだよ、村で悪いことがあるとみんなあの子のせいになる。
やさしい太郎左はもう誰もうらんじゃいないのにね……
ym2
いったい太郎左とは誰なんでしょうか?
そもそもこの事件となにか関係が有るのでしょうか……?

水門への道中、いろいろなことを班長と佐々木から聞き出します。
犠牲者は、水死、食中毒、持病の発作、崖からの滑落など、不審な点は少なく、偶然不幸が重なっただけにも見えます。
ですが問題は、その事故がすべて「赤口」に起きていると言うこと。
赤口とは、皆さんご存知の大安とか仏滅とかのあれ「六曜・六輝」の中の最も悪い日で、赤舌神という羅刹神が現われて物事すべてがうまく行かないと言われているのです。
まさに迷信のオンパレードじゃないか!と六平太はさらに怒りを燃やすのです!!
そして炊けるもまた興味をそそられるものを発見しました。
江戸時代、赤舌の呪いで滅んだとされる廃村です。
なんとこの廃村の住民によってなくなった少年というのが、例の太郎左だと言うではないですか!
昔この廃村と下流の今でもある村の二つは水源を巡って対立していたとのことで、あるとき上流の村の住民が水門を締め切って水を独占してしまったんだそうです。
そこで下流の村に住んでいた太郎左が水不足の村を救うため、夜中こっそり水門を開きに行ったんだそうですが……
見つかってしまい、無残に殺されてしまったんだそうです。
言い伝えによれば、その日もまた赤口。
それ以来太郎左は妖怪赤舌となり、いくら上流の村が水門を閉めても、夜な夜な長い下で水門を開けてしまうようになった、というのです。
ym3
……すこし待って下さい。
水門を開けるだけだ、という大人しい妖怪が、急にこうまで人を殺めるものでしょうか?
武はどうにも釈然としないものを感じ始めるのです……

武は佐々木とともに廃村に残って調査をしてみることにしました。
いざ水門に辿り着いてみると、すぐに気がつくのはその悪臭です。
鼻をつまんで臭いの発生源である水をみてみると、赤褐色の枯れた藻がびっしりと浮いているわ、ボウフラが群れで蠢いているわと、一目見ただけで水質が最悪であることがわかります。
今はまだいいですが、本格的に気温が上がってくればいつ伝染病が発生してもおかしくない状態です!
よくよく見てみれば、裏から水門が完全に閉鎖されています。
無理に水をせき止めたため、水質がここまで悪化したのでしょう。
つまりあの上流の村を放棄して廃村にしたのは妖怪の仕業などではなく、自ら水質を悪化させて疫病などを発生させた村民の自業自得、というわけです!!
ym4
幽霊の正体見たり枯れ尾花、と言わんばかりに笑う六平太。
ですがその時、どこからともなく子供が姿を現し、現地調査の為に持ってきた撮影機材を持ち去ってしまった出hないですか!!
マゲなんかして妙に古い格好のその子供を追いかける六平太と班長ですが……?

そのころ、武の方も大変なことになっていました。
突然、佐々木が武に襲い掛かってきていたのです!!
今日も折りよく赤口、お前には8人目の犠牲者になってもらう。
そう言って笑う佐々木の中から姿を現したのは、妖怪!!
ym5
妖怪、煙々羅(えんえんら)でした!!
どうやらこの妖怪、今回の事件を招いた元凶の様子。
ですがこの妖怪は罪も無い人々を殺して行ったのでしょうか!?
赤舌のフリまでして、どうして!?
全ての事件の真相と、妖怪赤舌の正体が明かされるのです!!

というわけで、妖怪否定派と肯定派のコンビが様々な事件に挑んでいく本作。
次々とリアル妖怪に出会っていくわけですが、面白いのは妖怪だ祟りだと騒がれている事件に人の手による工作などのまやかしと、本当の妖怪による仕業の二つがひとつの事件に混在しているところ!
やっぱり妖怪なんて無いんだ、思い込みなんだと高笑いする六平太と、その裏でリアル妖怪と戦う武との二部構成(?)になっているわけです!!
そんな一話一話ごとの物語もさることながら、だんだんと明かされていく本作全体の軸も見逃せないところ!
普通の人が見ることができない妖怪を見る能力を持っている武。
そんな武が危機のとき、「何か」が彼を救ってくれるのです。
その何かが、武にその能力も与えてくれたようで……
何か、の正体に迫ると言うのが本作の最大の目的となる、のでしょうか!?
さらに今巻のラストの方では次の展開に繋がっていきそうな存在も登場。
一話完結型と思わせておきながら、徐々に大きなうねりのあるひとつのお話になっていく臭いがプンプンと漂ってきますよ!!

妖怪否定派と肯定派の二人旅、「妖怪博士の明治怪奇教授録」第1巻は全国書店にて発売中です!
独自の設定に目を引かれる本作。
お話だけではなく、たなか先生ならではの絵柄も相変わらず魅力的ですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!