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本日紹介いたしますのはこちら、「阿呆にも歴史がありますの」です。
作者は長崎ライチ先生。
エンターブレインさんのビームコミックスより刊行されました。

さて、本作は長崎先生があちらこちらで発表してきた作品を一堂に会した短編集となります。
その作品は数ページの短い読み切りから数十ページの長めの読み切り、そしていまやすっかりおなじみの4コマ漫画まで多岐にわたっていまして。
それらの作品の中から今回は「おもちゃの学校」を紹介したいと思います!

初めまして、青杉すなおです。
趣味は漫画を読むことです。
よろしくお願いします。
と、自己紹介をしているのは、今日初めて転校と言うものを体験するうら若き少年、青杉君です。
ドキドキを抑えながらも職員室に入ると、そこで待っていたのはセクシーな女教師でした!
ですが残念ながら、彼女は青杉のクラスの担任ではないようで。
女教師が紹介してくれた教師は……
強面ながら物腰が女性的な……いわゆるおネエ系。
青杉は、おネエってテレビの中だけの存在じゃなかったんだ、と謎の衝撃を受けるのです……

やってきたクラスは1-1。
先生はあんたたちに素敵なプレゼントを持ってきたわよ!私の新しいモルモット、青杉すなおちゃんよ!と微妙にひっかかる言い回しで教室内に招き入れてくれました。
青杉の目に飛び込んできたクラスの仲間達は
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世紀末的な人、お内裏様的な人、やたら顔が大きい上、新しい仲間がこのクラスにと感涙している人……
あまりに濃すぎるビジュアルに、早くも二度目の衝撃を受けることとなってしまったのです!
とは言えこれからこのクラスの一員となるわけで。
練習に練習を重ねた自己紹介を行おうとするのですが、容赦なく浴びせかけられる鋭い視線に耐え切れず、つっかかりまくってしまいます。
そんなうろたえぶりに業を煮やしたのか、どこからともなく「気にいらねえな!!」と言う罵声が飛んできまして……
たまらずその声の元に視線を送ると、その声の出所は
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あかちゃんでした。
何?飛び級!?
さらにうろたえる青杉ですが、あかちゃんはどうも父性がなさそうな顔をしているのが気に入らないようで。
なんで転校早々父性を求められているのか?
ただでさえパニック状態の青杉は、なんかこれで止めを刺されて早くも転校したくなってしまうのでした。

すぐ慣れると言う先生の言葉に、心中では慣れたくないです!と全力で否定しつつも席に向かう青杉。
すると左隣の席の男子が、椅子を引いて座りやすいようにしてくれつつ、自己紹介をしてきました。
ウェルカムトゥ振り逃げ高校!ボク釜蒸熱也!今度一緒に青春ダンスを踊りましょう!!
……彼は先ほど、青杉が転校してきた姿を見ただけで感涙していたあの彼です。
悪い人ではなさそうですが、名前どおり暑苦しそうですし……何より青春ダンスと言う謎のお誘いがなんかコワいです!!
そして逆隣に目をやると、机に突っ伏したまま目だけこちらを見ている、見るからに怪しげな人物が。
恐る恐る、髪、長いですねと声をかけてみたのですが……彼は何も答えず目を伏せてしまうのでした。
そんな暗雲立ち込め放題の状況の中、後ろから天使のような声が聞こえてきました。
ねぇ、混乱してるんじゃない?
そう優しく声をかけてくれたのは、クラス委員だと言う美少女、静音さやかです。
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後で校内を案内してあげるね、と言ってくれた彼女。
青杉は、闇の中に一条の光が差し込むのを感じるのでした!
……その最中にも、隣の長髪の彼は机にナイフをつきたてていたのですが……

さやかに学校を案内してもらうことになった青杉。
なんだかわかりませんが、この学校は変なクラスばかりのよう。
1-2は超エリートクラス。
テストが99点という好成績を収めておきながら、「散々だった」「切腹もの」と感想を言い合っているとんでもないクラスです!
1-3はスポーツそこそこクラス。
覗き込んでみると、教室でユニフォームを着込むと言う気合的なものは感じるものの、そこそこという触れ込みどおり、熱心にスポーツに打ち込みまくっている!という感じではなさそうでした……
1-4は天が二物も三物も与えちゃったクラス。
中ではハリウッドスターのような豪奢な面子が、さまざまなトロフィーや満点のテスト、そして札束なんかを手にしながら優雅に楽しんでいる謎のクラスだったのです。
最後は1-5ですが……そこは異常なくらい遠まきにして紹介されました。
なんでも
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「戦慄の極悪クラス」何だそうです。
確かにそこだけ別の作品のように、見るからにバイオレンスな人たちが集まっていまして。
あんな人たちを野放しにしてるの!?と、怯える青杉。
ですがさやかは大丈夫だと断言するのです。
なぜなら担任の先生は
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そんな彼らをはるかに凌駕するバイオレンスパワーの持ち主だから……

いろいろ見てまわった結果、青杉はこのクラスでよかったのかもしれないと思うようになっていました。
この後もガンガン奇人が登場することになるのですが……それでも危害を加えてくるような悪人はいないですし、、価値観が違う人の割合が100%ということもなさそうで。
それに何より、さやかがいるのですから!
……ですがそんな青杉のささやかな希望は……程なくもろくも崩れ去ることになるのです……!!

というわけで、長崎先生の様々な作品をたっぷり楽しめる本作。
今回紹介した作品の他の作品でも、長崎先生らしい奇人・変人が続々登場してくれます!!
お金持ちの子供ながら気難しく学校に行きたがらない男を、何とか学校に導こうと少女が奮闘する「ボッちゃま」。
もはや食べるものがフリカケしか残っていない薄汚い男が勇気を振り絞って面接に挑む「面接コワイ!!」。
この2作は必要以上に濃い男性キャラが、異様に濃い存在感を見せ付けてくれる短編となっています!
そして現在の代表作「ふうらい姉妹」の雰囲気を感じられる4コマも数シリーズ収録。
「紙一重りんちゃん」「森の女神ちゃま」「そそうえくん」などは、「ふうらい姉妹」に非常に血界感じの味わいが楽しめるのです!
さらに今の作風、画風とはすこし違った雰囲気で描かれる短編も収録。
なかでも「宇宙人の店」などは、長崎先生作品と言われなければ気がつかないかもしれません!
そして巻末の方にはうれしいフルカラーで、今はなきライブドアデイリー4コマで連載されていた「筆おろし望」先生が収録されています!
こちらも「ふうらい姉妹」に近い作風となっていますが、カリスマ書道家の筆おろし望先生とインタビュアーの女性が、望先生の部屋で一枚の書をメインにやり取りをしていく、というシチュエーション固定型の作品となっているのです!
それに加えてカラーイラストも数点収録され、実に様々な要素を楽しむことができますよ!!

長崎先生クロニクル、「阿呆にも歴史がありますの」は全国書店にて発売中です!!
今となっては目にすることが難しい作品も多数収録されている本作。
「そそぎすぎ珈琲館」「筆おろし望先生番外編」などなど、まだまだ未収録作品もありますので、そちらのほうもいずれ収録した単行本を期待したいところですが……!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!