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本日紹介いたしますのはこちら、「クリムゾンの迷宮」第1巻です。
作者は原作が貴志祐介先生、作画が三上達矢先生。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、月刊!スピリッツにて連載されています。

貴志先生は86年にデビュー後、しばらくのブランクを経て96年に日本ホラー小説大賞の佳作を受賞後、本格的に活動を始めた小説家です。
「ISOLA」「黒い家」「悪の経典」「新世界より」などなど、様々な作品が映画化、ドラマ化、アニメ化などされていまして、いまや押しも押されぬ人気作家となっています!

さて、本作は謎が謎を呼ぶサバイバルゲームの様子を描いたサスペンス漫画。
原作が発表されたのは99年とふるいのですが、やはり名作は色あせないと言うことを知らしめてくれる作品なのです!!

男は目覚めます。
まず気が付いたのは、湿った土の匂い。
飲みすぎて地べたに倒れてしまったのか?
酒量を減らそうかとぼやきながらも起き上がろうとする男ですが、なぜか体に力が入りません。
明らかに普通では無いその異変に、何かとんでもないことが起きている予感を感じる男。
ゆっくりと目を開けてみると、そこには
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土と岩壁がひたすらに続く荒野が拡がっているではないですか!!
ここはどこなのか?何が起きているのか?
男にはまったく思い当たることはありません。
不意に襲い掛かってきためまいに耐え切れず、思わず地面に膝を付いてしまいました。
するとそこには、水筒とブロックタイプの栄養食品が入った箱が。
これを口に入れても大丈夫なのか?と言う不安はありましたが、襲ってくる渇きには勝てません。
必死に水を、栄養食を口にする男。
ですが、状況がわからない今この食料を食べつくしてしまうのは危険だと言う判断力は残されていました。
食料と水をとりあえず残し、遅いくるめまいに耐えながらも誰かいないか探し回ることにしたのです。

男は藤木芳彦、33歳。
勤めていた会社がつぶれ、ホームレスにまで身を落としたものの、苦心して今は失業者の範疇まで戻ることが出来た。
そんな身の上は思い出せるのですが、どうしても今こうしてここにいるのか、と言う直近の記憶がどうしても思い出せません。
記憶喪失……と言うことで片付けるのはどうにも釈然としないものの、今はどうすることもできません。
少しでも情報を集めようと周囲を見回すのです。

じっとりと汗が湧いてくる、ここの気候は夏としか思えません。
ですが、記憶を奪われる前の時期は間違いなく冬だったはず。
それに背広の下に着込んでいるワイシャツも冬用ですし、何よりもつい先日転んで作ってしまった傷が、まだ新しいまま残っている。
ということは、せいぜい記憶が確かなときから2~3日くらいしか経っていないはず。
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冬真っ盛りなはずなのにこの暑さはなんなのか?
さらに深まる謎に頭を捻っていますと、再び地面に何かが落ちていることに気が付きました。
地面に落ちていたそのポーチを拾い上げ、中を検めてみると、はいっていたのは携帯ゲーム機でした。
付属していたソフトを挿入してみると、なにやら市販のソフトではなさそうな画面が起動します。
映し出されたのは「火星の迷宮にようこそ」という文字。
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ボタンを押してみると、表示されたメッセージが切り替わって説明文のようなものが現われました。
ゲームは開始された。
無事に迷宮をでてゴールを果たしたものは、約束どおりの岳の賞金を勝ち取って地球に帰還することができる。
……藤木にはその約束の心当たりはありません。
失われた記憶の中にならばあるのかもしれませんが……
とにかく不二気は注意深く文章を読みすすめていきます。
プレイヤーはチェックポイントにおいて、進路に関する選択肢を与えられる。
ただし選択肢によっては生死に関わることもありうるので注意。
各プレイヤーはお互い強直するも敵対するも自由。
……おそらく、ラリーの要領でチェックポイントを通り、最終的にゴールにたどり着けばよい、というゲームなのでしょう。
そしてどうやら藤木意外にもゲーム参加者がいると言うことのようです。
次にゲーム機に表示された情報は、最初のチェックポイントへの道のり。
ここから北へ2500メートル、東北東へ1350メートル、東へ230メートル。
そう書かれただけのざっくりとした情報でした。
方角も何もわからない今、これだけではどうしようもない……と普通ならば言うところですが、昔ボーイスカウトで教わった方角を知る手段を思い出した藤木。
アナログの腕時計の短針を太陽の方へ向け、短針と12時の間をに等分した方向が南になる。
その逆方向が北、のはずなのですが……北である方向には、岩壁が聳え立っているばかりではないですか!
冷静に考えれば、他にもいるはずの参加者が全員この方法を知っているとは思えません。
もっと簡単な方法があるはずでは無いでしょうか?
現在地は今のいる位置から、右へ行くか左へ行くかしかない、通路状の形状となっています。
この地形はおそらくここから先もそれほど大きく変わってはいないでしょうし、おそらく一本道のような道のりと考えてもよさそう。
ですが問題は、何故方角の判断法がうまく機能しなかったのでしょうか?
「火星の迷宮へようこそ」……
まさか、火星だから地球の法則が通用しない、とでも言うのでしょうか……
その時、藤木は閃きました。
あの方法が通用するのは日本……北半球に限る、ということを!
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もしここが南半球ならば、あの方法が通用しないのも頷けると言うものです。
何とかそれを確認したいところですが、とにかく今はそれすらそう簡単にできる状態ではありません。
とにかく雨が振り、日も沈もうとしている今動くのは得策ではありません。
明日の日の出を待って行動することにしたのでした。

幸い雨だけは止んだので、火を起こしてその脇で座り込むことにした藤木。
落ち着いてくると、やはり胸のうちに湧き上がってくるのは今の状況の理不尽さです。
どうして俺がこんな目にあわなければいけないんだ?
誰がこんな手の込んだ悪ふざけをしたんだ?
俺はどうなってしまうんだ!?
誰に聞かせるともなく、怒鳴り散らす藤木。
するとその耳に、誰かが靴底で岩のカケラを踏んだとしか思えない音が飛び込んできたのです!
誰かがいる!
高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、音の方向に向かっていくと……
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闇の中に、確かに人影がいるではないですか!
もはやそれが誰であろうと、とにかく話を聞いて少しでも情報を得たいところ。
どんどんどの人物の方に歩いていくのですが、その人物は不二気が声をかけようとしても後ろを向き、走って逃げ去っていくのです!!
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この人物は一体何者なのでしょうか?
そしてこの謎に満ち溢れたゲームの鍵を手に入れることが出来るのでしょうか!!

というわけで、謎ばかりの生き残りをかけたサバイバルゲームが開幕する本作。
この後、藤木は他のプレイヤーと遭遇し、本格的なゲームをおこなうこととなるのです。
とにかく謎ばかりが多いこのゲームで、ともに挑む仲間は何よりも心強いはず。
ですがこのゲームがもしゼロサムゲーム……勝者が少ないほど報酬が増えるタイプのゲームだったとしたら。
そしてそれを知っている参加者が、知らない参加者を蹴落とそうとしていたら……?
すぐに他の参加者が、無条件に信頼することができない存在であることになるのです!
周りには信用しきることができない多くの参加者。
そしてそれを見てほくそ笑んでいるであろう、黒幕。
その黒幕は何を考えているのか?ひょっとしたら参加者の中にいるのか……?
謎が謎を呼び、疑心が暗鬼を生じさせる緊迫のゲームから、目が離せなくなることうけあいですよ!!

謎多きサバイバルゲーム、「クリムゾンの迷宮」第1巻は全国書店にて発売中です!
物語の完成度は言うまでも無い本作。
オジ様のキャラクターが多いのは現代向けでは無いかもしれませんが、それでも三上先生の画風にピッタリでで素敵ですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!