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本日紹介いたしますのはこちら、「へんなねえさん」です。
作者は吉富昭仁先生。
太田書店さんのF×コミックスより刊行されました。

さて、本作はコミカルな作品からシリアスな作品、ホラー風味から変態チックなエロス風味な作品まで描く吉富先生の連作短編を1冊にまとめたものです。
この一連の作品を発表していた雑誌がマンガ・エロティクス・エフと言うこともありまして、エロス要素をふんだんに盛り込みつつ、吉冨先生らしい変態性とコミカルさを持った作品ばかりになっております!
そんな中で今回紹介したいのは、表題作にもなっている「へんなねえさん」。
変なマンガを続々と生み出している吉冨先生が描く、「へんなねえさん」とは一体!?

裕一が家に帰ると、そこにはお姉さんがいました。
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お帰り、早かったね。
たい焼き食べる?
当然のようにそうはなしかけてくるお姉さん。
ですがちょっと待って下さい。
裕一がこの世に生まれ落ちてから15年間、ずっと彼は一人っ子だったはず。
姉なんていないはずなのですが……

食卓で素直にそのことを話してみても、頭でも打ったのかと逆に心配されるわ、裕一は馬鹿だからなと笑われるわと散々です。
お姉さんと両親の関係も非常に和やかで、今まで普通に暮らし続けてきたといわれれば、誰も疑うことは無いでしょう。
……裕一以外は。

夕食の後、家族のアルバムを確認してみますと、やはり当たり前のように子供のころからずっとお姉さんは一緒に写真に納まっております。
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やはり自分の記憶のほうがおかしいのだろうか?
お姉さんに関する記憶だけが抜け落ちているとでも言うのだろうか……?
ですが記憶の糸を辿ってみますと、子供のころお母さんに「お姉ちゃんがほしい」と強請り、それは無理だよ、裕一は馬鹿だからな、といわれた記憶がありまして。
つまりそのころはお姉さんなどいなかったはずじゃないか。
そんなことを考えていますと、いつの間にかお姉さんがすぐ横に寄り添って、アルバムを覗き込んでいるではありませんか。
懐かしいね、このあとゆーくんアイス落として泣いたんだよ、覚えてる?
そう囁くお姉さんの胸元からは、下着と谷間が見えていまして……
思わずそれを見入ってしまう裕一!
お姉さんはといいますと、嫌悪したりと言う感じではなく、どこ見てんの?もー、と悪戯っぽく微笑むくらいで。
そしてさらにお姉さんは、裕一の部屋に散らばっていた一冊の本を拾いました。
その本のタイトルは「おねーちゃんだいすき!」。それも第7巻。
お姉さんは、そんなにお姉ちゃんのことが好きなんだぁ、とまた悪戯っぽく微笑み、肩をはだけてうふんといろっぽくおどけて見せるのです!
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やがてお姉さんは、先にお風呂はいるからね、覗いちゃだめだぞ、と言い残して部屋を立ち去っていきました。
裕一はといいますと、ますますお姉さんへの疑念を強めていました。
裕一の部屋にたっぷりと所蔵されている「おねーちゃんだいすき!」シリーズ。
そもそもこの本を買いあさったのも、姉と言う存在に憧れてのものだったはずです。
もしかしたら自分の強い願望が生み出した妄想なのだろうか?
早速確かめてみよう、と裕一は姉のお風呂を覗いてみるのですが
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やはりそこには姉の姿がありまして。
覗くなって言ったでょ?と笑いながら裕一の顔に水をかけるのでした。

これは妄想などではなく、現実なんだ。
そう確信すると、夜も眠ってなんかいられません。
思わずフラフラとお姉さんの寝室に忍び込んでみますと、なんとお姉さん、裸でベッドに入っているではありませんか!!
吸い寄せられるようにお姉さんの傍へと寄っていきますと、なんだか背中に妙なものが。
さらに近づいて目を凝らしてみますと、その妙なものは……チャック。
言ったい中になにが……?
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恐る恐る中を覗いてみると……!!

気が付くと朝でした。
やっぱりアレは夢だったんだ。
そう一連の出来事に決着をつけようとする裕一ですが、そんな裕一に声をかけて起してくれたのは他ならぬお姉さんでありました。
お姉さんがいることは夢じゃなかったらしい。
夢にまで見かねなかったお姉さんのいる日常が、今まさに裕一の手の中に……
裕一はチャックの中身は見なかったことにしよう、と心に誓うのでした。

というわけで、奇妙なお姉さんとの遭遇を描くエピソードを収録した本作。
この後もこのお姉さんとの日常を描くお話が第3話まで描かれることになるのですが、今回紹介したお話では明かされることはなかったチャックの中身やら、そもそもこのお姉さんが何者なのかと言ったところまでしっかり描かれていきます!
そのお姉さんの正体なのですが、実はその正体こそこの短編集全体の鍵といいますか、この連作短編全ての元凶だったりしまして。
どれをとっても「ヘン」なお話が11編+おまけ1編収録されている本作ですが、その一軒バラバラにめいるアレコレのお話が全て繋がっていたことが明かされるわけです!!
とは言ってもシリアスなドラマが待っているわけではなく、あくまでコミカルな、ヘンな落ちに繋がっているだけなのでご安心ください!!
最初から最後まで、エロスでコミカルで、おかしな物語に終始しているのです!!

吉富先生のはっちゃけ振りが堪能できる、「へんなねえさん」は全国書店にて発売中です!
エロス目的の方はもちろんのこと、普通の人は読まないであろう特殊なジャンルのマンガを好む好事家の方などにもおすすめできる本作。
吉富先生のシリアス作品のファンだった方も、先生の新たな一面を体験してみてはいかがでしょうか!?
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!