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本日紹介いたしますのはこちら、「ルームメイト」上巻です。
作者は原作が今邑彩先生、漫画が武富健治先生。
小学館さんのビッグコミックスより刊行、ビッグコミックスピリッツにて連載されています。


原作の今邑先生は、89年にデビュー後、ミステリを多く発表した小説家です。
複数の作品が映像化された人気作家さんでしたが、13年に惜しまれつつお亡くなりになりました。

さて、本作はそのタイトルが示すように、とある同居人にまつわる奇妙な事件を描くサスペンスモノです。
ある日を境に、いつも通りの日常が突然崩れる同居生活。
果たしてその同居人の正体は……?

雨の降るある日。
萩尾春海が起きてリビングにでてくると、そこにはすでに同居人の西村麗子が朝食を食べていました。
朝の挨拶を交わしながら春海が思うのは、麗子が「変わった」ということでした。
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飲めないといっていたお酒を日常的に飲むようになり、喫煙もしていて、夜はなにやらスナックか何かで働いている様子。
聴いている音楽も、クラシックなどを好んでいたはずが、今はトランスなどを聴いています。
人の嗜好や性格が変わる、と言うのはそれほど珍しいことではないかもしれません。
ですが出会ったときの麗子は、おっとりした雰囲気の眼鏡の似合う新大学生。
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人当たりもいい感じですぐに打ち解け、同じく大学生活を始めようと部屋を探していた春海とともに共同生活をすることを決めたのでした。
そんな彼女がいまや、濃い化粧で夜の仕事に向かい、部屋も荒らし放題に。
その変化が良いのか悪いのかはは置いておくとしまして……問題はその変わっていった期間なのです。
彼女にあったのは、わずか三ヶ月前。
たった三ヶ月でおっとりして真面目そう、それで居てしっかりしたところもあった彼女は今のような姿に変わり果ててしまったのです!!

ところは変わって、松下と言う男が暮らすマンション。
彼が家に帰り着くと、郵便受けに今週分の新聞がまるまる刺さったままになっています。
松下は東北に単身赴任の身となっていまして、帰ってくるのは週末だけ。
先週も、松下の留守を護る女性、由紀が実家に帰っていまして、同じように新聞受けはパンパンになっていました。
ただその時は留守番電話に「祖父の具合が悪くなったから実家に帰っている」というメッセージが残されていて。
何故今回はそれすらないのだろうか?
松下ははっとして、「あの男」に連れ戻されたんじゃないか!?と思い立ち、いろいろと家の中を確認してみるのですが……由紀の持ち物は綺麗にそのまま。
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松下が不安に思っているようなことは無さそうなのですが……なんにせよ心配です。
彼女は携帯も持っておらず、松下が連絡をとる手段はありません。
家の電話にも着信履歴のような手がかりになる物はなく。
肩を落す松下ですが、すぐに隣の奥さんなら何か知っているかもしれない!と思い立ち、訪ねて見ることにしました。
するととなりの奥さんは、驚くようなことを当然のように言うではないですか!
松下が単身赴任に言ったのとほとんど同じ時期から、ずっと平日は留守にしていた、と!!
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確かに冷静に考えれば思い当たることはいくつかあります。
単身赴任先から電話をかけても、いつでも留守電。
彼女はセールスや悪戯の電話が酷くてノイローゼになりそうだったから……と言い訳をしていましたが、金曜の夜に帰宅するたび、優しい笑顔で温かく迎えてくれる彼女を見れば不安など吹っ飛んでしまっていました。
玄関の傘たてを見てみても、由紀の使っていた、白い取っ手の付いた紫の傘がありません。
雨が降ったのは……確か月曜日。
それは紛れもなく、月曜に家をでていることの証明といえるでしょう……
そんな時、ふいに松下の家の電話がベルを鳴らしました。
慌てて電話をとる松下!
その電話は……

晴海は銀行の残高を見て、不安を募らせていました。
いつも25日までには振り込む、と決められていた、家賃などのお金が振り込まれていないのです。
お金のことなんかでもめたらつまらないもんね!
そう微笑みながら言った麗子自信が提唱したルールがやぶられてしまったわけです。
おりしも時は夏休み。
だと言うのにその楽しさを妨害するような問題が春海の気持ちを押しつぶすのです。
家に帰り着いたとき、春海はあることに気が付きました。
春海の愛用していた傘が無い。
確か前回雨が降ったのは、先週の金曜日。
それから一週間立っているのですが……その日以来、麗子の姿を見ていない!!
いまやすっぱり奔放な性格になってしまった彼女ですが、さすがに一週間姿が見えないのはおかしいと考えた春海。
やむなく麗子の携帯に電話をかけてみることにしました。
……そういえば、麗子にかけるのははじめてかも。
そんなことを考えながら耳を澄ますのですが、やはりと言うかなんといいますか、出ることはありません。
そこで麗子本人がいなくても、親か何かがでるだろうと思って彼女の実家に電話をかけてみることにします。
程なくしてとられる電話。
電話先には西村と名乗る女性がでるのですが……その女性、自分が西村麗子だと名乗るのですが、どうも声が違う気がします。
しかも違うのは声どころではないようで。
家賃のことどころか、ルームメイトとして一緒に暮らしていることすらも知らない、と言い出しまして……
どうやらその西村麗子は、春海の知る西村麗子では無いようなのです!!
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同姓同名の別人……?
自分の知る西村麗子は偽名だったのか?それじゃああの麗子は何者なんだ?
沸き立つ疑問を解消するために、お互いの部屋には入らないと言う決まりごとを破って麗子の部屋に入ってみる春海。
その中は、まるでホテルやウィークリーマンションのように、持ち主の臭いがまったくしない、必要最小限のものしかおかれていない淡白な部屋でした。
身分を証明するもの、例えば学生証とか……と言う考えがよぎったとき、春海は気づいてしまったのです。
学生証どころか、教科書も辞書も勉強机も何も無いことに!!
そもそも大学生と言うこと事態が嘘だったのか!?
手がかりを掴むために麗子の部屋に惹かれている電話の着信履歴を調べてみるのですが、その履歴はゼロ。
携帯をメインに使っていれば、決して不自然ではない、のですが……
春海はそこで、着信がなくてもリダイアルを押せば最後にかけた番号はわかる!ということに気が付きました。
藁にもすがる気持ちで電話をかけてみると、その電話口に出たのは男性でした。
その男性の名は……松下!!
由紀のお友達ですか!?と必死さがにじみ出る声で尋ねてくるのは、あの松下なのです!
この男が何かを知っているんじゃないか?と直感した春海。
松下も何か感じたようで、お互いの「失踪したルームメイト」の情報を照らし合わせていくと……
驚くべきことがわかります。
どうやら西村麗子と由紀は……
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同一人物だと言うことが!!
一体あの麗子という人物は何者なのでしょうか!?
何故こんな不可解なことをしたのか、そして今はどこにいるのか?
春海はその謎を王ことを決意するのですが……

というわけで、謎多きルームメイトにまつわる事件を描いていく本作。
彼女の目的や、正体……その謎に迫ってキ春海が目撃する真実とはなんなのでしょうか。
巷を騒がす、男性外国人の惨殺事件との関係性も気になるところで、徐々にこの失踪事件は単なる詐欺などの類ではないと言うことがわかり。
探っていくさきで必然的に出会う、本物の西村麗子、そしてその曾祖母……
真相がわかっていけばわかっていくほど、この事件の原因が長い時間をかけて巻き起こった、根深く絡み合った複雑なものだと言うことが判明!
春海の過去なども明かされていき、読み馬読むほど謎の多いこの物語に引き込まれていくのです!!

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息詰まる展開、というのとは少し違う、息を呑む展開に圧倒される本作。
13年11月より映画版も上映され、俄然注目度も挙がること間違いなしの注目作ですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!