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本日紹介いたしますのはこちら、「岸辺露伴は動かない」です。
作者は荒木飛呂彦先生。
集英社さんのジャンプ・コミックスより刊行されました。

さて、本作は97年から13年にかけて様々な雑誌で発表されてきた、ジョジョの奇妙な冒険シリーズのスピンオフ読み切りを1冊にまとめたものです。
本作の始まりである「エピソード#16 懺悔室」は、荒木先生の短編集もすでに収録済みではあるものの、他の4つのエピソードはすべて単行本初収録!
ファンならずとも興奮、待望の一冊となっているのです!
そんな中から今回紹介したいのは、創刊まもなくのジャンプスクエアにて発表された「エピソード02 六壁坂」。
ホラー色の強い、ひときわ奇妙なエピソードとなっています!

天気のいいある日のこと。
オープンカフェで、漫画編集者の貝森吐き難しい漫画家との打ち合わせに挑みました。
ド・スタールの画集をめくりながら待っていた露伴、漫画家との打ち合わせに6分も「早く」来るとは何事だとか、いつも通りの感じで批判をしつつ、次の61ページの読みきりの打ち合わせを始めようとするのです。
が、その前に少し生々しい話をしてもいいか?と、意外にも露伴の方から話の腰を折ってきました。
その生々しい話の内容はといいますと、ホントに生々しいにもほどがあるお話です。
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なんとあの岸辺露伴ともあろうものが、「原稿料を前借りしたい」というのですから!
杜王町に結構大きなおうちを持っていて、お金に不自由しているイメージの無い露伴ですが……なんでも最近、破産してしまったんだそうです!
借金まではしていないとのことですが、家はなく現在友人の家に居候させてもらっている状態。
漫画を描く机もなければ、セーラー服美少女戦士のフィギュアも有名ロックバンドのジャケットも、頬に十字傷のある剣客の漫画も、すべて手放してしまったのだとか。
財産は今まさに手にしている一冊の画集だけ。
そんな状態に、露伴は何故陥ってしまったのでしょうか。
その原因は、最近露伴が購入したと言う山林の別荘地にありました。
露伴は別荘を立てようとしてそこを買ったわけではなく、その山にある「妖怪伝説」の取材をするために狩ったんだそうです。
それだけならば何の問題もなかったのですが、ふいに降って湧いたリゾート計画のせいで、その伝説のある山に道路を通すと言う計画が持ち上がってしまったのです。
そこで露伴が取った行動は、道路を通させないために、まわりの山を六つも買い占める、というもの!
それによって道路の計画はなくなったのですが、リゾート計画もなくなって地価は大暴落。
晴れて(?)文無しとなってしまったのです。
わざわざ取材のためだけに文無しになるような無茶なことをしたのか、と貝森は驚きます。
ですが、もし道路が開通して、仮に妖怪が山から逃げていなくなってしまったら台無しだ!露伴は豪語するのです。
その常軌を逸した行動に、思わず目をそらしてしまう貝森。
ですが露伴は、スーパーカーを買ったり自宅の地下にシアターを作ったりするだけが金の使い道では無いだろう、とその行動を批判した後、とんでもないことをさらっと言ったのです。
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しかも、ちゃんといたんだからな
この目で見たんだ、「六壁坂」の妖怪は今もいる。
やつはまだ今もあそこにいるんだ!

大郷楠宝子(おおさとなおこ)は、六壁坂村で300年続くミソ作りで成功した一族の一人娘です。
両親は彼女を溺愛し、ひとりぐらしなどを許さず、わざわざ運転手まで雇って中高大学の10年間、2時間かけて通学させていたほどの箱入りぶりでした。
そんな彼女が何故だか、アルバイトの庭師と付き合っていたのです。
その庭師、釜房郡平(かまふさぐんぺい)は、その日も彼女の部屋……と言うカ、彼女の家である邸宅の離れに来てぼけっとゲームに勤しんでおりました。
ですが楠宝子は、家に誰かがやってきたことを確認すると、郡平に帰るように促し始めました。
あまりにも急ですし、それより何より彼女は最近冷たくなったことを感じていた郡平、まさか、まさかだよね?と牽制し始めます。
楠宝子は、おもむろに包みを取り出し、郡平に渡そうとします。
その中身は……お金。
群兵の察したとおり、別れよう、と考えていた彼女からの手切れ金というヤツです!
家にやってきた誰かは、むかしから両親が決めていた許婚。
昔から彼と結婚することは決まっていて、郡平のような男が娘の部屋にいた、ということを知っただけでも父親は倒れるほどのショックを受けるだろう、と語る楠宝子。
ですが郡平はこのままでいいじゃないか、それともこうやって抱きついてると子をお父さんに見せ付けてやろうか!?と抱きついてきたではないですか!
思わずはなしてと平手打ちをする楠宝子。
思いもよらない反撃に、郡平も思わず平手打ちで返してしまったのです!
すぐに冷静になって謝る郡平、このまま内緒のままでいいから……と関係を続けようと願い出てくるのですが、楠宝子はもう止まりません。
ドンと郡平を突き飛ばし、あなたは素敵だけど、郡平と知り合う何年も前から、彼とは来春結婚することが決まっている、だからもう会うことはできない、と伝えるのです。
……が。
なんと言うことか、
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郡平は息絶えていたのです!
突き飛ばした先には偶然ゴルフクラブが立てられていて、倒れこんだ際に後頭部にあたっていて……!!
まるでこれでは、自分がゴルフクラブで殴ったようではないか!!
医者を呼ばなければ……いや、ひょっとして警察の方を呼ばなければならないのか!?
混乱と恐怖が楠宝子を支配し始めた頃、玄関のドア越しに声がかけられました。
楠宝子、いるのか?父さんだ。
最悪のタイミングで会ってきた父親。
しかもそこにはあの許婚も同行していた上、この家の中に楠宝子がいることに気がついているようで。
すぐにこの郡平の死体を隠さなくてはいけない!!
バスルームは狭く、人間を横たわらせておくには不安。
ならば一旦ソファーの下に隠すしかない!
合鍵で家に入ってこようとする父親と許婚を、今着替え中だから絶対に空けてはだめ、と声をかけて足止めをしながら、郡平の痕跡も一緒に隠そうとするのです。
ところがここで郡平の亡骸の不可解な事実に気がつくのです。
脈が無い、心臓が動いていない、確実に死んでいる郡平の体から、どくどくと血が流れ続けている!
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拭っても拭ってもあふれ続ける血液、これがある限りソファーの下になど隠せません。
消毒液を傷口に吹きかけて、べたべたとテープを貼り付けてみるのですが……やがて血液はテープの隙間から漏れ出始めます。
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郡平の体は、しわしわになり、瞳も灰色に濁っていって……
ボヤボヤしていては父と許婚が入ってきてしまいます。
しかも許婚は、楠宝子のほかに誰かこの家の中にいるのでは?と疑い始めます。
やむなく楠宝子は、出血している傷口を縫い閉じることを選ぶのですが
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その傷口からはさらに大量の出血がおきてしまう結果となり……!!
一体この郡平という男はなんのでしょうか?
これが露伴の言う「妖怪」なのでしょうか!?
この奇妙すぎる危機を、楠宝子は乗り越えられるのでしょうか!?
そしてこの奇怪なモノが足りはこれで終わらないのです。
そう、岸辺露伴はその目でこの、六壁坂の妖怪を見た、というのですから!!

というわけで、あまりにも奇怪な死体の物語を描いたエピソードを収録した本作。
この他にも荒木先生ならではの独特な空気を持った物語が収録されています。
たまたま間違えて入ってしまった懺悔室で語られた、ある男に賭けられた呪いの話「懺悔室」。
25歳のときにその土地を買ったものは、例外なく成功すると言う不思議な集落の物語「富豪村」。
芸術とまで称される、鮑の密漁に挑む「密漁海岸」。
そして、祖母の持っていたバッグに秘められていた能力が明かされる「岸辺露伴グッチへ行く」の全5編が収録!!
どれをとっても息を呑むような、驚くばかりの展開が待っています!
その事件の奇妙さも、そしてそれを逃れる方法も荒木先生ならではの一捻りも二捻りもされたもの!
驚きの展開と驚きの結末に、仰天間違い無しですよ!!

待望の単行本化、「岸辺露伴は動かない」は全国書店にて大好評発売中です!
第3部のアニメ化も決定し、ますます好調なジョジョシリーズ。
荒木先生はまだまだ我々を楽しませてくれるようです!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!