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本日紹介いたしますのはこちら、「女子のてにをは」第1巻です。
作者はるなツー先生。
小学館さんのビッグコミックスモバMANより刊行、モバMANにて連載されています。

るなツー先生は同人のイベントでスカウトされ、それがきっかけで本作の連載を始めた漫画家さんです。

さて、本作は女子高生の日常を描いた作品です。
こういった女子高生の日常ものというのはなんといいますか、今の漫画界で歩けばぶつかるほど存在するわけですが、本作は本作ならでは大きな特徴が存在しています。
それは、多くの日常漫画が「キャラクター」に重きを置いているのに対し、本作では各話ごと主人公が変わるところ!
固定のキャラクターを使わずになんと言うことも無い日常を描く、キャラクター漫画ではない本当の(?)「日常」漫画になっているのです!

そんななんでもない女子高生達のなんでもない日常が18話収録されている本巻。
それらの中から今回は、図書委員の密かな楽しみを描く「貸出カードの君」を紹介したいと思います!

図書委員の浅香さんは、図書館で本を借りる彩に名前を記入する、貸出カードのチェックをしていました。
その仕事をしていると、いつもある人物の名前が目に付くのです。
「七堂 晋」。
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貸出カードのチェックをするたびに目に付くこの人物、なんだかとってもマイナーな本も借りていたりしておりまして、単なる読書家というだけではおわらなそう。
七堂晋……一体どんな人物なのか?
晋の人物像を想像し、浅香さんはその旨を高鳴らせるのでした。

お友達とのお昼の時間も、ついついその話題を出してしまう浅香さん。
貸出カードの日付なんかから推測するに、どうやら晋はひとつ学年が上の様子。
友達のクラブのつながりとかで、その名前に聞き覚えは無いか?と尋ねても見るのですが、お友達も聞いたことが無い様子。
そもそもそれだけ頻繁に本を借りているのですから、図書委員である浅香さんが一番出会えそうなものですが……
不思議とカウンターでは一度も会ったことが無いそうで。
あえないとなると、その妄想はどんどんと膨らんでいくばかり。
きっと読書家な上に勉強もできて、スポーツも万能で……
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脳内の王子様像をどんどんと加速させ、すっかり恋する乙女モードになってしまう浅香さんを、お友達は冷ややかな目で見守ることしかできないのです……
が、アドバイスくらいはすることができました。
浅香さんの図書当番の日が火曜と木曜に決まっているのなら、曜日を変えてみれば晋に会えるのではないか?と!

早速別の曜日の当番の委員と交渉し、カウンターに座ることとなった浅香さん。
今日こそは浅香さんに会える?
そんな期待に胸を躍らせていますと……普段見かけることの無い、眼鏡をかけたチ的な感じの男子生徒が本を借りにきました。
もしやこの人が!と貸出カードを見るのですが……
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その貸出カードに晋の名前はあったものの、残念ながらこの知的男子の一つ前の欄に名前が記されています。
ガッカリ感を抑えきれず、肩を落しつつ貸出の手続きをするのでした。

結局その日に晋……浅香さん曰く、「貸出カードの君」は登場しませんでした。
ですが一日くらいでは諦められません!
今度はまた違う曜日に当番を代わってもらうのですが……やはり現われず。
調べに調べ、学校の職員やらOBやらにまで手を伸ばしては見たものの、晋の正体は判明せず。
ここまでやってもなんの手がかりも無いとなると、流石の恋する乙女も八方塞。
いつしかその情熱は薄れていき、代わりに「七堂晋」は存在するのか?という考えの方が強くなっていくのでした。

そんなある日のこと、何気なく貸出の手続きをしていると……七堂晋の名前が目に飛び込んできたではありませんか!
思わずハッとなり、眼鏡を直してその人物を見上げる浅香さん!
するとそこにいたのは
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物静かな感じの三つ編みの似合う少女。
制服もこの学校のものではありませんし、そもそも……女性……?
何でも彼女は晋は晋でも、ススムではなく「シン」と読む立派な女性でして。
彼女は浅香さんの学校の姉妹校に通っているとのこと。
その彼女の学校と浅香さんの学校で本の貸し借りをしていまして、そちらの学校で晋が本を借りていたため、浅香さんはまったく貸出カードの君の実像を知ることができなかった……というわけだったのです。
そんな晋、受験大学の見学にこちらのほうに来たため、一回直接本を借りに着てみたくて今回足を運んだんだとか……
おかげさまで貸出カードの君の正体は明らかにされたのですが、浅香さんはその運命に感謝するどころか、ぐんにゃりと沈み込んでしまったのは言うまでもありません……

ちなみに貸出カードの君とは後に文通友達になったそうで、めでたしめでたし?

というわけで、こういった女子高生達のちょっとした事件や、事件ですらないひと時を切り取って描いていく本作。
なんにせよ本作は事件もおきず、キャラクターも個性を強く押し出すタイプはほとんどでてきません。
女子達の楽しげな会話を楽しみながら、平和な日常に浸れる、癒し系とでも言うべき作品となるのです!
平和な日常だけが収録されているとは言え、そのくくりの中でも様々な物語が収録されています。
極々一般的な家庭に生まれたにもかかわらず、常に敬語でしゃべる女子が、その敬語を直すためにクラスメイトの猛コーチを受けるお話。
隣の隣の席のお友達と、授業中に手紙のやり取りをするだけのお話。
ザ・風紀委員と言った風情の女子の意外な家での姿……
実に多種多様な、それぞれの日常が丁寧に描写。
萌えやギャグと言った要素は薄めではありますが、そういったものとはまた違った楽しさがあるのです!!

女子高生の平和な毎日、「女子のてにをは」第1巻は全国書店にて発売中です!
淡々と続く日常を眺めてニヤニヤできる本作。
派手な要素が無いからこその楽しさを堪能できますよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!