本日紹介いたしますのはこちら、「水木しげる漫画大全集 東海道四谷怪談/耳なし芳一」です。
作者は水木しげる先生。
講談社さんより刊行されました。
さて、本作は74~75年にかけて学習研究社さんから刊行された「学研劇画文庫」の「日本の妖異」シリーズのために描き下ろされた作品2編を集めたものです。
収録されているのはタイトルどおりの二編なわけですが、そのどちらも水木先生なのか脚色の宮田雪(きよし)先生
なのかは分かりませんが、そうとうワイルドにアレンジが施されております。
「東海道四谷怪談」に関しましては11年1月24日の記事で紹介させていただいておりますので、今回は「耳なし芳一」を紹介したいと思います!
清は一人、鉄道に乗って山奥のおじの家に向かっていました。
汽笛を鳴らし、がたごととどこか物悲しい音と共に進んで行く車内似、一人の女性が乗り込んできます。
大きな包みを抱え、その女性はわざわざ清の正面に腰をおろします。
清はそのあまりにも大きな包みが気になって、ついその女性に声をかけてしまいます。
するとその女性、こともなげにその包みを開けて中を見せてくれました。
出て来たのは、
琵琶でした。
何か圧倒されるような気配を湛えているその琵琶ですが……しばらく時が経つと清、なぜかもよおしてしまいます。
失礼しますとその場を離れ、用をたして戻ってきますと、彼女が忽然と消えてしまっています。
清はあたりを探し回ってみるものの彼女の姿は見えず。
気にかかるあまり、居眠りしている車掌に女性のことを聞いてみるのですが、車掌はとんでもないことを言うのです。
この前の駅では誰も乗ってきていない、と!
幻でも見たんだろう、ばかたれとなぜか罵倒されているうちに終点についてしまいました。
結局彼女の姿は見えないまま。
おじさんの家への5キロほどの道のりを歩きながら、あの女の子は幻だったのだろうかと物思いにふけるのです。
集落にたどり着いた清。
記憶を辿りながらおじさんの家を探していますと、あの幻の女の子が姿を現すではないですか!
思わず彼女の後を追い出してしまう清ですが、彼女はどんどんと人気の無いほうへと進んでいくのです。
彼女は人里を離れ、墓地を通り抜け、お堂のような建物の中へ入っていきました。
これはただの女性ではない!
そう確信した清はすかさずお堂の中に飛び込んでいきますと、そこには女性の姿はありません。
そのかわりに
あの琵琶が祀られていたのでした!!
不思議なこともあるものだ、とその後清はおじさんにこのことをたずねてみることにしました。
ですがおじさんはそんな不思議な出来事を信じないばかりか、そんな女の子も琵琶もこの村には無い、と笑い飛ばすのです。
大方疲れたのだろう、風呂にでもはいってゆっくりしたらいい、と休むことを勧めるおじさん。
ここで言い争いをしていても仕方ありませんから、清はとりあえず眠りにつくことにしたのでした。
その夜。
布団の中に入っていた清の耳に、琵琶の音色が飛び込んできました。
その音色は、あのお堂から聞こえてきます。
やがてその琵琶の音と共に、女性の歌声が聞こえ始め……
時こそ来たれ、元暦二年三月二十四日の卯の刻に。
源平両軍船出して、壇の浦にて矢合わせんとぞ定めける……
平家物語、「壇の浦」の一節です。
その音に引き寄せられるように外へでる清。
どうやらおじさんにもその音色が聞こえるようで、二人でお堂に向かいました。
実はおじさん、このお堂のことを知っていました。
繭と言う少女のお墓がここにあり、その霊をなぐさめるために立てられたお堂だと言うのです。
ですがそれは何百年も前の話で、このお堂も叔父さんの祖先が立てたもの、その詳しい事情を知るものはあまりいないといいます。
なんでも源平合戦によって兄と生き別れになった少女が、ただひとつの手がかりである彼岸花の彫られたびわを持って旅にでて、このあたりで行き倒れた、とか。
その慰霊のためにお堂を立てたわけですが、いまだに礼は満足せず、このお堂の中でさまよっている……ということなのでしょうか。
今でもこうして時々、琵琶をかき鳴らすのだそうです。
何かの因縁かもしれない、というおじさん。
幽霊と因縁なんて君が悪い、と返す清ですが……ある夜、清の夢枕にあの少女が立ったではないですか!!
私の捜し求めている琵琶の行方を知っているのは、あなたの父です。
はっきりとそう言った少女の霊!!
項まで面と向かって頼まれては仕方がありません。
幽霊のご指名に乗っ取って、琵琶をもって自宅に帰っていく清。
この不可思議な少女と琵琶と、父の間にどんな関係があると言うのでしょうか?
そしてカケラも出てくる気配の無い芳一さんは……?!
というわけで、全然耳なし芳一要素の無い耳なし芳一が描かれる作品が収録された本作。
この後きちんと皆さんがよく知る耳なし芳一を描くパートもあるのですが、あくまでこの作品のメインは幻の少女と琵琶!
この後も琵琶と父の意外なつながりを描いていき、納得のラストを迎えるのです!
本作を読んでいて目に付くのが、その自由なストーリーテリング……と、水木先生らしさの無い絵が多いところでは無いでしょうか。
個人的な感想に過ぎませんが、本作に収録された作品や「死神大戦記」なんかを描いたこの時期の作品は内容も絵もなんだか荒れた作品が多い気がします。
少し後に描かれた「鬼太郎の世界お化け旅行」は個人的鬼太郎ランキング上位に名を連ねる名作だと思っておりますので、気合の入った仕事とそうでもなかった仕事に分かれていたのかもしれませんけど……
ですがそこはそれ、こういった作品もこれはこれで興味深いところ!
気の抜けた感じを受ける場面と、いつも通りの執念すら感じられる悪漢の背景が描かれた場面が織り交ぜて展開するお話にニヤリとするのもよろしいかもしれません!!
有名怪談をワイルドにアレンジした「水木しげる漫画大全集 東海道四谷怪談/耳なし芳一」は全国書店にて発売中です!
四谷怪談、そして耳なし芳一と言う誰しもがあらすじくらいは知っているお話を、物凄い勢いで飾り立てた本作。
水木先生ファンでなくとも、一見の価値ありですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
作者は水木しげる先生。
講談社さんより刊行されました。
さて、本作は74~75年にかけて学習研究社さんから刊行された「学研劇画文庫」の「日本の妖異」シリーズのために描き下ろされた作品2編を集めたものです。
収録されているのはタイトルどおりの二編なわけですが、そのどちらも水木先生なのか脚色の宮田雪(きよし)先生
なのかは分かりませんが、そうとうワイルドにアレンジが施されております。
「東海道四谷怪談」に関しましては11年1月24日の記事で紹介させていただいておりますので、今回は「耳なし芳一」を紹介したいと思います!
清は一人、鉄道に乗って山奥のおじの家に向かっていました。
汽笛を鳴らし、がたごととどこか物悲しい音と共に進んで行く車内似、一人の女性が乗り込んできます。
大きな包みを抱え、その女性はわざわざ清の正面に腰をおろします。
清はそのあまりにも大きな包みが気になって、ついその女性に声をかけてしまいます。
するとその女性、こともなげにその包みを開けて中を見せてくれました。
出て来たのは、
琵琶でした。
何か圧倒されるような気配を湛えているその琵琶ですが……しばらく時が経つと清、なぜかもよおしてしまいます。
失礼しますとその場を離れ、用をたして戻ってきますと、彼女が忽然と消えてしまっています。
清はあたりを探し回ってみるものの彼女の姿は見えず。
気にかかるあまり、居眠りしている車掌に女性のことを聞いてみるのですが、車掌はとんでもないことを言うのです。
この前の駅では誰も乗ってきていない、と!
幻でも見たんだろう、ばかたれとなぜか罵倒されているうちに終点についてしまいました。
結局彼女の姿は見えないまま。
おじさんの家への5キロほどの道のりを歩きながら、あの女の子は幻だったのだろうかと物思いにふけるのです。
集落にたどり着いた清。
記憶を辿りながらおじさんの家を探していますと、あの幻の女の子が姿を現すではないですか!
思わず彼女の後を追い出してしまう清ですが、彼女はどんどんと人気の無いほうへと進んでいくのです。
彼女は人里を離れ、墓地を通り抜け、お堂のような建物の中へ入っていきました。
これはただの女性ではない!
そう確信した清はすかさずお堂の中に飛び込んでいきますと、そこには女性の姿はありません。
そのかわりに
あの琵琶が祀られていたのでした!!
不思議なこともあるものだ、とその後清はおじさんにこのことをたずねてみることにしました。
ですがおじさんはそんな不思議な出来事を信じないばかりか、そんな女の子も琵琶もこの村には無い、と笑い飛ばすのです。
大方疲れたのだろう、風呂にでもはいってゆっくりしたらいい、と休むことを勧めるおじさん。
ここで言い争いをしていても仕方ありませんから、清はとりあえず眠りにつくことにしたのでした。
その夜。
布団の中に入っていた清の耳に、琵琶の音色が飛び込んできました。
その音色は、あのお堂から聞こえてきます。
やがてその琵琶の音と共に、女性の歌声が聞こえ始め……
時こそ来たれ、元暦二年三月二十四日の卯の刻に。
源平両軍船出して、壇の浦にて矢合わせんとぞ定めける……
平家物語、「壇の浦」の一節です。
その音に引き寄せられるように外へでる清。
どうやらおじさんにもその音色が聞こえるようで、二人でお堂に向かいました。
実はおじさん、このお堂のことを知っていました。
繭と言う少女のお墓がここにあり、その霊をなぐさめるために立てられたお堂だと言うのです。
ですがそれは何百年も前の話で、このお堂も叔父さんの祖先が立てたもの、その詳しい事情を知るものはあまりいないといいます。
なんでも源平合戦によって兄と生き別れになった少女が、ただひとつの手がかりである彼岸花の彫られたびわを持って旅にでて、このあたりで行き倒れた、とか。
その慰霊のためにお堂を立てたわけですが、いまだに礼は満足せず、このお堂の中でさまよっている……ということなのでしょうか。
今でもこうして時々、琵琶をかき鳴らすのだそうです。
何かの因縁かもしれない、というおじさん。
幽霊と因縁なんて君が悪い、と返す清ですが……ある夜、清の夢枕にあの少女が立ったではないですか!!
私の捜し求めている琵琶の行方を知っているのは、あなたの父です。
はっきりとそう言った少女の霊!!
項まで面と向かって頼まれては仕方がありません。
幽霊のご指名に乗っ取って、琵琶をもって自宅に帰っていく清。
この不可思議な少女と琵琶と、父の間にどんな関係があると言うのでしょうか?
そしてカケラも出てくる気配の無い芳一さんは……?!
というわけで、全然耳なし芳一要素の無い耳なし芳一が描かれる作品が収録された本作。
この後きちんと皆さんがよく知る耳なし芳一を描くパートもあるのですが、あくまでこの作品のメインは幻の少女と琵琶!
この後も琵琶と父の意外なつながりを描いていき、納得のラストを迎えるのです!
本作を読んでいて目に付くのが、その自由なストーリーテリング……と、水木先生らしさの無い絵が多いところでは無いでしょうか。
個人的な感想に過ぎませんが、本作に収録された作品や「死神大戦記」なんかを描いたこの時期の作品は内容も絵もなんだか荒れた作品が多い気がします。
少し後に描かれた「鬼太郎の世界お化け旅行」は個人的鬼太郎ランキング上位に名を連ねる名作だと思っておりますので、気合の入った仕事とそうでもなかった仕事に分かれていたのかもしれませんけど……
ですがそこはそれ、こういった作品もこれはこれで興味深いところ!
気の抜けた感じを受ける場面と、いつも通りの執念すら感じられる悪漢の背景が描かれた場面が織り交ぜて展開するお話にニヤリとするのもよろしいかもしれません!!
有名怪談をワイルドにアレンジした「水木しげる漫画大全集 東海道四谷怪談/耳なし芳一」は全国書店にて発売中です!
四谷怪談、そして耳なし芳一と言う誰しもがあらすじくらいは知っているお話を、物凄い勢いで飾り立てた本作。
水木先生ファンでなくとも、一見の価値ありですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!
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