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本日紹介いたしますのはこちら、「バキ外伝 拳刃(けんじん)」第1巻です。
作者は原作:構成が板垣恵介先生、原作協力に浦秀光先生、作画が宮谷拳豪先生。
秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行されました。

宮谷先生は08年にチャンピオンにてデビューし、その頃から高い画力を見せ付けて読者を驚かせた新人の漫画家さんです。
12年にはいろいろな意味で読者を驚かせた「秘境ハンター」を短期集中連載するなどの活躍を経て、13年に本作の連載を開始しました。

さて、本作はとりあえず本編の完結を迎えたものの、スピンオフや新シリーズと話題に事欠かない、バキシリーズの最新スピンオフ作品です。
バキシリーズのスピンオフといいますと、やはり花山が主役である「創面」「疵面」が思い浮かぶところですが、本作もそんなキャラクターにスポットライトを当てたシリーズです。
今回の主役は、若かりし日の愚地独歩!
正直、若かりし日からおっさん顔なのでどのくらい昔なのか分かりませんが、とりあえず神心会がバキ本編のような大組織に成長するよりも大分前であることだけは確かな様子。
若き独歩、今よりさらに血気盛んな彼の出会う好敵手たちとは!?

昔々のこと。
「世紀の一戦」と謳われた、世間の注目を一身に浴びた「プロレス」がありました。
対戦するのは国内無敵とまで囁かれている猛者中の猛者二人。
押しも押されぬ国民的スター、大相撲関脇からプロレスに転身したプロレス王、「力剛山」。
そして、孤高の柔道家……「範馬勇一郎」!!
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会場に押し寄せた大観衆、そして電波を通した日本中の観客が見守る中、時間通りにゴングは打ち鳴らされました。
試合が動いたのは、ガッチリと組み合ったロックアップから突如繰り出された、力剛山の左ストレート!
いわゆるプロレス的な打撃ではないそれを皮切りに、力任せにたたきつけられるチョップ、パンチ、キック……
その光景はもはやプロレスとはとても呼べないもので。
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勇一郎がぐったりとして動かなくなったそのころには、あまりに凄惨なその場面を見た観衆はすっかりと言葉を失い、シンと静まり返ってしまっていたのです……

後日。
雨の降りしきる街中を、顔を腫らした勇一郎がのっしのっしとあるいていました。
大勢の人に無様な敗北見られてしまったにもかかわらず、雨の中傘もささず、身をちぢこめることもなく歩く勇一郎。
ある種の時の人である勇一郎ですから、そんなことをしていれば通行人にすぐにばれてしまいます。
ですが勇一郎はその言葉が聞こえていようといまいと、世間がなんと言おうとなんら気にすることもなくその道を歩き続けるのです。
が、そんな勇一郎の前に一人の男が立ちはだかりました。
番傘で顔を隠すようにして行く道をふさぐその男。
分厚く丸く、岩のように膨れ上がった拳……
その拳だけで、並々ならぬ「経歴」が見て取れるのです。
空手。
それもかなりやり込んだ……
勇一郎がそう言うと、男は番傘を投げ捨て、名乗ります。
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空手道、愚地独歩です。
ようやく見せたその顔から、勇一郎は更なる情報を読み取ります。
カリフラワーのように沸いた耳、潰れた鼻。
立って殴り、蹴りあう空手だけではこうはなりません。
空手だけではなく、寝技もしっかりと学んでいるのでしょう。
そんな強い男が、勇一郎にどんな用があるのか……?
独歩はいきなり本題に入ります。
何故あのような試合を?
「芝居」と、言い換えても……
独歩はあの試合が、勝敗の決まった八百長試合だと言うことを見抜いていたのです!!
それを聞いた勇一郎、力剛が強くて強くて、と一度はそれを認めずにおどけて見せるのですが、射抜くような瞳で睨みつける独歩を見てそれでは通らないことを察知。
金をもらったからな、と金銭と引き換えに台本を受け入れたことを認めます。
独歩は鋭い眼差しのままそのことを批判。
結果としてあなたは天まで金を積んでも手に入らない大きなものを失った、と。
そして独歩はもうひとつの疑問……というよりも、確認を始めます。
何故防御できるはずの力剛山の攻撃を、わざと受け続けたのか?
それは、効かないからだろう。
力剛山のクリーンヒットなど、取るに足らない、わざわざ避けるほどの事もないからだろう。
独歩は、そんな勇一郎の大雑把さが大好きなんだとか。
ですが、あの試合に関してだけはそのおおらかさが、柔道という誇りある日本武道を地に落とす結果を生み出した……
そこまで黙って聞いていた勇一郎。
瞬間、手を延ばして右手で独歩の衿をつかみました!!
さぁどうする?
いきなり行われた戦闘開始の合図。
独歩は即座に反応し、ジャケットを脱ぎ捨てることで脱出!
その体躯からは想像できない身軽さで勇一郎の拳の上に飛び上がり、そこから強烈な蹴りで勇一郎の顎を打ったのでした!!
顎を砕かれながらも、雄一郎はこんなことを考えています。
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嬉しいもんだな、「本当は強い」ってことがバレちまうって……
そして独歩はそんな勇一郎に背を向け、こういい残して去っていくのです。
勝手に仇を討たせてもらいます。

後日。
後楽園の地下深くの闘技場にあの男がやってきました!!
プロレス王、力剛山。
そしてそんな彼に、ここでこれから行われる戦いは、試合でなく「制裁」だと先方は言っている、と説明するのが、このころからすっかりおじいちゃんの徳川のご老公でした。
しかしそんな恐ろしい言葉にも力剛山は動じず。
制裁だろうが死刑だろうが、ギャラがプロレスの10倍と言う約束を守ってくれれば構わない。
私はプロレスよりも、真剣勝負のほうが得意なのだから!
かつてこの地下闘技場でトップファイターの座についていた力剛山ですから、その自信も頷けようと言うものです。
そんな自信に満ちた力剛山、呼び出しの時間になってもやってこない先方に、遅刻は感心しないなと文句を言い始めました。
ですがご老公は言うのです。
さきほどからお待ちかねじゃよ。
……今の今まで、力剛山は気がついていませんでした。
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自分のすぐ後ろに仕掛け人、愚地独歩がいることに!!

というわけで、独歩の若かりし日の激闘を描いていく本作。
第1話目から、勇一郎は出るわ、相手は超大物(板垣先生作品では噛ませ感が凄いですが!)だわで盛り沢山!!
いきなり引き込まれる内容となっています!
本作は基本的に1話完結型であるため、戦闘自体はあっさり終わるものが多くなっています。
だからと言ってイージーな戦いというものはなく、対戦相手は真剣の達人や、技量では完全に独歩の上を行くとある特殊な達人、裏の世界に堕ちてから格段に成長を遂げた柔道の実力者と、ただならない相手ばかり!!
しかもあの伝説となった「虎殺し」のエピソードまでもが描写され、独歩ファンならば思わず滾ることは間違いありません!!
そしてそんな若さ迸るおっさんフェイスの独歩を描ききる、宮谷先生の圧巻の画力も特筆モノ!!
まさに板垣先生の画風そのものでありながら、より骨太でありつつバランスの取れた人体描写は圧巻!!
独歩の武勇伝を生々しくド迫力に飾り立ててくれるのです!!

拳に刻まれた戦いの歴史、「バキ外伝 拳刃」第1巻は全国書店にて好評発売中です!!
バキシリーズも新シリーズ開始が決定し、あわせて盛り上がりを見せそうな本作。
宮谷先生がご病気の影響か、この記事を書いている時点では休載中なのが残念なところ……
復帰され、パワー全開で連載を再開することを願っています!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!