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本日紹介いたしますのはこちら、「恐之本 四 高港基資ホラー傑作選集」です。
作者は高港基資(たかみなともとすけ)先生。
少年画報社さんのSGコミックスより刊行されました。

さて、高港先生が長年描き続けていたホラー漫画を集めて単行本にしていくこのシリーズもはや第4巻。
今巻もぞくりと背すじを冷やしてくれる、恐ろしいお話がたっぷり収録されています。
そんな中で今回紹介したいのは、「コドモノイエ」。
ただ幽霊が怖いだけではない、様々な恐ろしさが一話に凝縮されているのです!!

手嶋の友人、熊谷は綺麗な奥さんと子供二人に恵まれ、半年前に家を購入……と、理想的とも言える人生を歩んでいました。
そんな彼を少しうらやましくも思っていた手嶋ですが、最近は仕事が忙しく、連絡もろくにとっていませんでした。
仕事も何とか一段落つき、「新居での暮らしはどうだい?」とようやくメールを出してみたところ、その返信は思いもよらない内容だったのです。
「この写真が始まりだった。この時に家を引き払っていればと後悔している。」
メールには「この写真」も添付されていました。
リビングではしゃぐ熊谷のお子さんふたり。
その背後に移りこんだテレビに、
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いるはずの無い子どもの顔が映りこんでいて……!!

後日、手嶋は熊谷の家を訪ねてみました。
半年前に買ったとは思えないほど、家の周りは荒れ果てています。
ふと目をやると、塀の影から半分顔を出すように少年がこちらを窺っていました。
驚いたもののすぐに気を取り直し、熊谷の子どもかと声をかける手嶋。
ですがその少年は何も言わず、家のほうへと走っていってしまったのです。
入れ代わるように姿を現したのは、熊谷本人でした。
久しぶりに姿を見た熊谷は、まるで別人のようにやせ細っています。
なんとなくそのことには触れられず、応接間に通された手嶋。
コーヒーでも出すよと姿を消した熊谷を待っている間も、上の階からは子どもの笑い声とドタバタ走り回る音が聞こえ続けていまして。
何かを感じて後ろを振り返れば、物置のふすまが少しだけ開いていて、そこから子どもが覗いているではないですか!!
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手嶋は意を決し、ガラッと押入れを全開に!
みいつけた!とかくれんぼ的にその子どもに声をかけ、そんなとこで何してんだい?と声をかけたのですが……
やはり先ほど見かけた子のように何もいわず走り去っていってしまうのでした。

戻ってきた熊谷に、手嶋は小さい子のいる家は賑やかだよな、と話をふるのですが、返ってきた答えはやはり驚くべきものでした。
女房と子どもは出て行った、この家は今俺一人だ。
この家は……出るんだよ。

あの写真は、荷解き直後のものだそうです。
あの時からすでに、兆候は現れていたのです。
常に感じる、何人もの視線。
やがて聞こえ始める、子どもの足音……
最初は自分の子供達の仕業かと思いましたが、その件について子どもに尋ねてみると、認めて謝ったり否定したりという普通の行動をせず……何かに怯えているかのようにうつむいて押し黙っていることから、そうではないことがうかがい知れます。
そして決定的な出来事がある夜に起こるのです。
真っ暗な家の中に、小川のように床を汚すどす黒い液体……
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いいようの無い不快な匂いを放つそれを辿っていくと……廊下をはいはいする赤ちゃんから流れ出ているようです!!
そもそもいるはずが無いその赤ちゃん。
その赤ちゃんのすぐ傍にまた、いるはずの無い子どもがふっと現れ、赤ちゃんを抱き上げてよーしよしとあやし始めたではないですか。
どうしていいかわからず、青ざめたままそれをみていた熊谷。
直後、子どもはあやす動きを止めて、こちらを見て言うのです。
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死んでる。

奥さんは最初、見ているはずなのに見えていないフリをして、踏ん張って暮らしていました。
ですがそんな彼女もとうとう心が折れてしまう出来事が会ったのです。
料理をしていたところ、背後のテーブルから大勢の気配が。
ついには自分のスカートをグッと引っ張り始めたので、我慢できず鬼気迫る表情を浮かべながら、包丁を振りかざして振り返ったのです!!
が、そこにいたのは自分の子ども……
我に返った奥さんは怯える子供を抱きしめ、ごめんなさい、違うの、と涙を流しながら謝罪するのです。
が。
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抱きしめていたのは可愛い我が子ではない、かつて子どもだった何か、で……!!
の出来事が決定打となり、奥さんは子どもをつれて実家に帰って行ったのです……

調べてみれば、ここはある事件のあった敷地に立てられた家なんだそうです。
男関係にルーズなことで有名な女が一人で住んでいたこの家の敷地から、カラスがあるものを掘り出したことから事件が発覚したのです。
掘り出したのは……赤ん坊のミイラ。
警察が調べると、家のあちこちからミイラ化した子どもの死体が出てきました。
幼児が三体、嬰児が四体……上の三人は何年か育てたようですが、下の四人はもう生んでは殺し、生んでは殺し。
殺人死体遺棄で逮捕はされたようですが……あまりにも惨たらしい事件の現場となっていたわけです。
そんな事件があったとなれば、今まで起きてきた怪現象も理解できようと言うもの……
ですが理解できないのは、そこまで知っているのに何故、熊谷はまだ一人でここに住んでいるのか、です。
熊谷は率直に投げかけられたその疑問に、悲痛な面持ちで答えるのです。
自分の親の手にかかって死んだ子ども達だ。
生まれてただ一度も誰からも愛されないで殺されたんだ。
ちょっと見捨てていけないよ。

その言葉と同時に、確かに感じた7人の気配……
あまりの恐怖に、手嶋は熊谷をおいて逃げ出してしまいます。
それっきり、カレとは電話もメールも通じなくなってしまいました。
ですが本人の意志でそこに残っているとは言え、心配であることには変わりありません。
数日後、手嶋はもう一度様子を見に行ってみることにしたのです。
するとその家の前に、見慣れない一人の女が立っていました。
女は、なんだよとり壊したのかよ、勝手なことしやがって、となにやら毒づいています。
言葉の内容から察するに、この女があの事件の張本人なのでしょう……!
立ち去ろうとする女に対し、手嶋はガマンできずつい声をかけてしまいました。
正義感なのかなんなのか……ともかく女は、立ち止まって手嶋の方を振り返ります。
手嶋は硬直します。
何故なら、振り返った女の顔は……!!

というわけで、おぞましい怪奇現象に秘められた惨たらしい真実を知り、それを受け入れた男の物語を描いたエピソードを収録した本作。
高港先生らしい、ゾッとする恐ろしい描写に、ただ単純な怪談に終わらない物語運びが今巻も楽しめます!!
この他にも、恐ろしい物語がぎっしり収録。
嬉しい小学校入学をさらに盛り上げるはずの道具が恐怖を招く「ランドセル」。
今まで生きて来て見ることのなかった幽霊が見えるようになった老人の真実が明かされる「最期の夢」。
幼き日にみた映画の映像に映っていた、「出て来ようとするモノ」を探る「古い記憶」……
さらに、高港先生の漫画家仲間が実際に体験し、高港先生自身もその現場に足を向けてみたと言う実話、「公園のトイレ」などなど、実に10編が収録!!
巻頭を飾る「棄人」は16ページを描き下ろしての収録で、新作まで堪能できる一冊となっているのです!!

嗤う戦慄、「恐之本 四 高港基資ホラー傑作選集」は全国書店にて発売中です!!
形の違う恐怖が詰め込まれた本作。
ドキッと来る恐怖からじわりと来る恐怖、そして不安の感情がモヤモヤと立ち込めるタイプの恐怖まで、様々な種類の恐ろしさが選り取り見取りですよ!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!