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本日紹介いたしますのはこちら、「ビッグコミック創刊45周年 天才たちの競演」第1巻です。
小学館さんのビッグコミックススペシャルより刊行されました。

さて、本作はビッグコミックの創刊45周年を記念し、ビッグネームのベテラン先生方が描かれた読み切りをまとめた一冊となっています。
全2巻に分けて刊行されるこの読みきりシリーズですが、分割されても収録されている作品の作家陣はもう業火の一言でして。
「釣りバカ日誌」の北見けんいち先生に始まり、浦沢直樹先生、伊藤潤二先生、原秀則先生、能條純一先生、萩尾望都先生とどこに出しても恥ずかしくない大御所から、通好みといえる個性派まで取り揃え、もうたまらないラインナップ!
そんな中今回は、そんな執筆陣の中でもやはり一味違う味わいを醸し出す諸星大二郎先生の「闇綱祭り」を紹介したいと思います!!

テレビをつければ、報道されるのは悪いニュースばかり。
核実験、テロ、拉致、領海侵犯、自殺、いじめ、無差別殺人、詐欺……
いやなニュースばかりだとぼやく男。
奥さんは、不景気のせいか、いやなことばっかりだとぼやきます。
ですが、男にはどうしても気になってしまうことがありました。
……均衡が崩れてきたのかもな……
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そう呟く男の脳裏に、その気になっていたことの記憶が蘇ってきます。
あの小さな町の、あの祭りの夜のことが……

男……リューイチは山と谷で囲まれた小さな町で育ちました。
たいした産業もなく、その祭り意外はこれと言った特質も無い町ですが、だからと言って過疎化もなく貧しいわけでもない、それなりにいい町でした。
その歳の祭りでは、リューイチは「ヒキテ」に選ばれていました。
祭りで行われる行事、「オツナヒキ」を執り行うヒキテですが……要するに、祭りで行われる「綱引き」に参加する、と言うことなのです。
オツナヒキが行われるのは、普通の神社を真ん中から二つに切ったような、不思議な形をしている片身神社の境内。
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そこにやってくると、リューイチと同じく初めてヒキテに選ばれた友人、フトシがやってきました。
フトシはヒキテをすることに物凄い不安を感じているようで。
行事自体は難しいことではないのですが、去年のオツナヒキのときに奇妙なうわさがたったのが心配なんだとか。
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ヒキテの一人が、直前に自己で足を痛めていたが、それを隠して祭りに出た。
そのせいで相手側に一方的に引かれてしまい、こっちの一番手が相手側に引き込まれてしまった……
オツナヒキという行事は、毎年引き分けで終わることになっています。
なので去年の出来事は異常事態と言えるもので。
その引き込まれてしまった人はそのまま帰ってこなかった、などと言ううわさがまことしやかに囁かれ、フトシはそれを恐れているのです。

神主の説明はこうです。
この世で大切なのは均衡。
自然界、社会、人と人。
オツナヒキでも均衡が大事で、勝っても負けてもいけない。
かといって手を抜いてもいけないから、全身全霊力を込めて綱を引き、均衡を保った勝負をしなければならない。
なんだか難しそうな説明ですが……かまわず神主は今年のヒキテの順番を発表しました。
一番手に選ばれたのは……フトシ。
何の基準があってかは明かされず決まるその順番。
ヒキテを決める基準すらよくわかっておらず、リューイチも釈然としないながらも説明を聞くのです。

5番手になったリューイチは、祭り当日もその境内にやってきます。
祭りの夜になると、片身神社は「片身」ではなくなります。
元からそうだったかのように、ごく当たり前の神社の形に変じている片身神社。
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これが片身神社の本当の姿だと言う人もいるのですが……リューイチも実際に見るのは初めてですが、不思議と感情は波立ちません。
「二組の」神官たちはいつもは閉じている中央の扉を開き、厳かに安置されている綱をおろします。
一本に伸ばされた綱は、片方をリューイチたちがしっかりとつかみ……もう片側は、暗い闇の中へと延ばされて……
オツナヒキは静かに始まります。
神官の支持にしたがって、見えない相手と綱を引き合うオツナヒキですが、不思議とそこに違和感は感じませんでした。
ですが引いていくにつれ、綱を引く相手の姿が見え始めたのです。
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噂におびえたフトシが、力をこめすぎていたことも原因のひとつでしょう。
緩めろ緩めろ、という神官の声も聞こえないまま、力を込め続けるヒキテたち……
すると相手側のヒキテの一人が、こちら側に引き込まれたと思った瞬間、突如苦しみだしたではないですか!!
苦悶する相手側のヒキテ、もだえ苦しむうちにかぶっていた仮面が剥がれ落ちてしまいます。
そこから現れたのは、到底人間とは思えない奇怪な相貌で……!!
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やがてそのヒキテは倒れ、血を吐いて動かなくなってしまいます。
あまりの出来事に、こちら側の数名のヒキテが驚いて手を離してしまいました。
すると再び力関係は崩れます。
ずるずると相手側に引き込まれ始める一同……!
必死で引き返すのですが、一度崩れた均衡は簡単には回復せず……
このまま相手側に引きずり込まれてしまう!!
そう感じた瞬間、ふいにともされていた松明の火が消え、片身神社の片身が闇に飲まれていき……綱の動きも止まりました。
オツナヒキの時間が過ぎたのです。
……あの奇怪なヒキテはなんだったのでしょうか。
町会長たちがこっそり処分したと言う話です……
湧き上がる不安。
その不安は晴れることなく……翌年のオツナヒキを迎えてしまうのです。
そして不幸にも、リューイチは再びヒキテに選ばれてしまいます。
しかも一番手に……!!
去年のこともあり、どうしても恐怖を感じてしまうリューイチ。
ですがそれは、他の参加者達も同じだった楊です。
神社に内緒で、こっそり力の強いやつにヒキテを入れ替えてしまおう、当日は面をつけるからわかりゃしない。
そんな相談をしていて……

どんどんと異常さを増していくオツナヒキ。
一体リューイチはどうなってしまうのでしょうか。
もし引き込まれてしまったら、どうなってしまうのでしょうか。
逆に、相手を引き込み続けたらどうなってしまうのか……?
リューイチが決して忘れることのできない、運命のその時がやってきてしまうのです……

というわけで、諸星先生らしい奇怪な風習を描いたお話が収録された本作。
もちろん他の先生方の読み切りも凄いものばかり!!
画業50年という過去を振り返る北見先生の「昭和トラベラー番外編」、浦沢直樹先生が描く独特の怪獣もの「怪獣王国」、伊藤先生らしい、オカルトと思わせてとんでもないオチが待ち構えている「盲点のビーナス」、イマイチ振るわない野球チームの興行成績を伸ばすため奮闘する原先生の「ハートボール」、年齢的にも体調的にも限界が近いボクサーの意地を見せる能條先生の「ラスト・ファイト」、そしてあの時失われた過去を詩的に振り返る「福島ドライヴ」。
どれをとっても、各話それぞれの持ち味で引き込まれる作品ばかり!!
各先生のファンの方ならば言うまでもなく楽しめますが、そうでない先生の……今まで縁なく作品を読んだことのなかった名匠の作品をこの機会に触れられるというのもこういった一冊の魅力ではないでしょうか!
一人でも目に付く先生がいたならば購入して損なし、一人も特別ファンである先生がいない方でも楽しめることうけあいの作品となっているのです!!

ビッグコミック記念イヤーを飾った、「ビッグコミック創刊45周年 天才たちの競演」第1巻は全国書店にて発売中です!!
14年3月には今巻で収録されなかった先生方の作品を掲載した第2巻が発売!
そちらにも水木しげる先生から細野不二彦先生や高橋留美子先生と言ったビッグネームが控えております!!
あわせて楽しみたいところですね!!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!