chi
今回紹介いたしますのはこちら。

「ちーちゃんはちょっと足りない」 阿部共実先生
秋田書店さんの少年チャンピオンコミックス・エクストラ もっと!より刊行です。

さて、本作はとある女子中学生二人にスポットライトを当てた日常モノです。
阿部先生といえば、「空が灰色だから」に代表される、心に抉りこむような衝撃的な物語を描かれるのが最大の特徴でしょう。
今回の作品は一体!?

登校前に友達のちーちゃんを迎えに来たナツ。
ちーちゃんはタイトルどおり、ちょっぴり「足りない」子でして、中学二年生だと言うのに掛け算や割り算も怪しい感じです。
朝一番でお姉ちゃんの志恵に悪戯を仕掛けられて小学生のように怒ったり、登校途中に会ったお友達、旭に算数の問題を出されたりと、しょっちゅうからかわれております。
ですがちーちゃんは持ち前の明るさで、暗くなるようなこともなく楽しい日常を過ごしています。
ナツもそんな彼女を見守るかのように、ずっと一緒に寄り添っているのですが……

物語はお子様そのもの……もとい、天真爛漫なちーちゃんを中心にして、ナツ、旭、志恵を交えたコミカルな日常を描いていくことになります。
ですが物語が進んでいくにつれ、だんだんと物語の焦点はちーちゃんではなく、ナツにあたり始めることに。
ちーちゃんもそうなのですが、ナツのおうちはあまり裕福とはいいがたく。
子供のころからいろいろとおねだりしてもあまり買ってもらえることはなく、お小遣いも少なめ。
内気で人見知りな性格もあって友達らしい友達もちーちゃんと旭くらいしかいない……
だんだんとコミカルだった物語は、不穏な空気を孕み始めるのです。
そんなお話が、決定的な変化を始めるのが第5話です。
きっかけは第4話で登場したクラスメイトの藤岡。
ちょっと不良な藤岡のことを、ナツとちーちゃんはちょっぴり苦手にしていました。
偶然雑貨屋で鉢合わせした藤岡に、皆で組んで万引きしないか、と持ちかけられたナツ。
藤岡もどちらかというと真面目グループのナツを、いきなり犯罪に誘うほどの本格的な不良ではなく、冗談でそう言ってきたのですが……
ナツのことを怯ませるには充分すぎる出来事でした。

そんなある日のこと。
藤岡達が自信の所属する部活の顧問に誕生日プレゼントを買うため、教室でお金のやり取りをしていました。
といっても中学生ですから大金は用意できませんで、このクラスで集まったのは3000円。
そんなやり取りを見た真面目っ子の旭は、学校でお金のやり取りをするな、トラブルの元だとしかりつけます。
実は丁度その時ナツは、どうしてもほしいものを買うために1000円貸してほしい、と旭にお願いしようとしていたのですが……
言い出すタイミングを完全に失ってしまったナツ。
モヤモヤした思いを抱えたまま放課後を迎えたのです。
が、放課後にとんでもない事件が起きてしまいました。
先ほどのお金のやり取りをしていたクラスメイトが、机の中に入れておいたお金の封筒がなくなったと言うのです!
さっきのこともあり、クラスメイトと旭は一触即発状態に。
さらにクラスメイトは教室の掃除当番だったちーちゃんが盗ったのではないか?と疑い始めたのがきっかけとなり、旭は大激怒!!
あいつはそんなことをするやつじゃない、と胸倉を掴んで怒鳴り、さらに空気は悪くなってしまうのでした。

そんなことがあった後。
ちーちゃんはナツのところにやってきました。
満面の笑みで、ちーちゃんがナツに差し出してきたのは……!!


というわけで、コミカルな日常から急転直下の展開を迎える本作。
前半のコミカルな日常も楽しく、心和む楽しい内容でした。
ですがこの事件をきっかけとして、ナツが中心となって描かれる物語こそが阿部先生の真骨頂といえましょう!!
今までナツが、かろうじて作り上げていた真面目な自分。
それがかりそめの張りぼてであったことを思い知らされ、自分という存在がガラガラと崩れ落ちていく……
そんな残酷な物語が繰り広げられるのです!
ナツのしていることは、ほめられることではありません。
ですが、共感できる人も少なくは無いのではないでしょうか。
悩み、自己嫌悪するナツ。
その様は読み手の心を深く抉ることでしょう!
様々なものを失い、自分自身も失う彼女に待っているものは……?
今回も阿部先生ならではの味わいを存分に発揮してくれる本作。
「空が灰色だから」のいちエピソードを大幅に膨らませたようなその物語に圧倒されること間違いなし!
急転直下からその後の結末まで、読み進める手がとまることは無いでしょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!