va
今回紹介いたしますのはこちら。

「VANITAS(ヴァニタス)」 Cuvie先生 
秋田書店さんのチャンピオンREDコミックスより刊行です。

さて、本作はCuvie先生の持ち味を生かしたエロス要素をメインに据えた作品です。
主人公は一人の淫魔。
人間と寿命のやり取りをしながら、永遠の時を生きようとする淫魔が今宵出会うのは……?


勤めている居酒屋が改装を行うとのことで、一週間の休みが突然与えられました。
従業員たちは一週間もあるんだから温泉旅行にでも行こうか、などと盛り上がっています。
が、下村にはそんなお誘いは回ってきません。
ひそかに憧れている女性、高木さんから予定はあるのかと声をかけられるのですが、勇気を振り絞って誘ってみようかと思った矢先、高木さんは別の人に声をかけられてそっちのほうに行ってしまうのでした。

どうせあんな奴らと旅行に行っても、退屈するだけだ。
そんなことを毒づきながら家に帰る下村。
迎えてくれる者もおらず、特に没頭する趣味もない。
ただ何となく、暇を持て余して過ごしているうちに、三日目を迎えてしまいました。
暇ではあるものの、早く出勤したいとも思わない。
学生時代の友達とかは今頃あくせく働いているんだろうな、と乾いた笑いをもらす下村。
自殺しよう、とまではいわないものの……時間がもっと早くすぎれ、さっさとこんなくそな人生が終わればいいのに。
そんな考えが脳裏によぎった瞬間、突然背後から声をかけられました!
呼んだ?
その声に振り向くと……そこには、

va0
胸元の大きく開いた、官能的な服装をした美女がいたのです!
女はメリジーヌと名乗りました。
彼女、下村の「いらない時間」を捧げる気はないか?と言い出すではないですか。
一回の男女関係につき、一年間の時間をもらう。
そんなあまりにも突飛な発言に、最初は怪しげな宗教の勧誘的なあれかと思い、追い出す下村。
ですがメリジーヌは窓をすり抜けて再び部屋に入ってきますし、何より目の前ペットボトルの時間を奪い、見る見るうちに朽ち果てさせて見せたのですから信じざるを得ません!
もちろん寿命を奪われる、という契約は恐ろしくてなりません。
ですが目の前に驚くような美女が現れ、積極的に体を寄せて誘惑してくる様に……今まで満足に女性と接してきていなかった下村があらがえるのでしょうか……?
va1
ふと脳裏によぎる高木さんの顔。
ですが、おそらく自分のことなど気にも留めていないであろう高嶺の花に操を立てて何の意味があるというのでしょうか。
下村が自分の寿命を投げ出し、彼女のなすがままになるのは時間の問題だったのです。

サキュバスである彼女にとって、人間は寿命を奪うエサでしかない。
しかしメリジーヌは、そんな人間に感謝こそすれ、さげすんだことなどないといいます。
尊い命の時間をもらっているのだから、と優しくささやく彼女に、もう下村は夢中。
2度、3度、それ以上に何回も……
携帯電話の呼び出し音が鳴っていることも意に介さず、二人は体を幾度も重ね合わせたのでした。

ことが終わった後、メリジーヌは男の携帯電話をのぞいてみます。
すると受信していたメールには、高木さんからの一緒にカラオケに行きませんかというお誘いが書かれていたのです。
……気が付けば、メリジーヌはその場から立ち去ってしまっていました。
男に残されていたのは、すっかり老け込んでしまった自分の体と……勝手に高木は自分のことなど気にも留めていない、と思い込んでいたことに対する後悔……
そんな男を見てメリジーヌは言うのです。
va2
人生は短い、ましてやその青春は。
存分に楽しまないとね、と。


というわけで、人間の寿命を奪うサキュバスの物語を描く本作。
毎回こういった後味が悪いお話が続く……というわけではなく、感動系のお話なんかも用意されています。
とはいえ基本は、人間の心の汚さを描く、もやもやの残るお話が繰り広げられていくのです。
そしてそんなお話の中で重要なのは、インキュバス、デジレの存在。
男の淫魔である彼は、メリジーヌとは違い、関係を持った相手に一年間の時間を与えてくれるのです。
女性を、1年間若返らせる力を持っている……
もうそれだけで、何やらドロドロした事件が起こりそうな予感がビンビンしますよね!!
いうまでもなく、それはもうアレなお話がモリモリと巻き起こるわけです!!

一年間寿命を奪うメリジーヌと、一年間の寿命を与えるデジレ。
対となっているようにしか見えないその能力ですが……やはりメリジーヌとデジレには、とある切っても切れない関係があるのです。
後半はその関係が描かれていき、決着することによって物語は完結!
Cuvie先生らしい、エロス満点ながら、それだけでは終わらない物語を堪能できますよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!