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今回紹介いたしますのはこちら。

「リバースエッジ大川端探偵社」第5巻 作・ひじかた憂峰先生 画・たなか亜希夫先生 
日本文芸社さんのニチブンコミックスより刊行です。

さて、隅田川沿いの小ぢんまりとした探偵社舞い込む、一風変わった事件を描いていく本作。
派手な事件は起こらない、人探しなんかをメインにしっとりとした味わいが楽しめる読み口は久しぶりの刊行となる今巻でも健在!
果たして今宵舞い込む依頼は……?


おりしも健康ブーム。
猫も杓子も健康健康で、今やどこを向いても趣味のランナーや日曜ランナーであふれています。
そんなある日にやってきた依頼者。
その依頼者が持ってきた依頼に、所長は仰天することとなるのです。

依頼者はショートボブにメガネをかけた女性。
その女性からの依頼は、その日曜ランナーについての調査です。
なんとその日曜ランナー、フルマラソンのタイムが2時間を切っている、というのではないですか!
それが本当ならば、世界記録なんてものではありません。
とてもじゃありませんが自分の目で目撃で文字ない限り信じられるものではありませんが、それも依頼人は織り込み済み。
そのランナーの記録を信じてもらわなくてもいい、とにかく彼がどんな人物なのか調べてくれ。
依頼人はそういうのです。

早速現場に向かった村木。
やがて彼女の教えてくれた通りの服装の人物が走ってきました。
……言っては何ですが、とても世界記録をはるかに凌駕するようなアスリートには見えないさえない男。
あまりほかのランナーが走らないコースを選んで走る彼を、とりあえず村木は追走することにしたのですが……
速すぎるのです。
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どんどんと老いていかれてしまう村木。
すぐに走って追いかけることをあきらめ、本来の目的である調査のほうへ移行することにしました。
彼は毎日、そのコースを10周ほど走って体育館のロッカールームで着替えてから出勤するのだそうです。

事の発端は、2年前。
国際マラソン大会のテレビ中継があった日に、彼は走っていました。
マラソン大会のスタートの銃声が響くとともに、走り出す彼。
彼の周回コースが見下ろせる場所に住んでいた依頼人、思わず彼の走りとテレビを交互に見てしまいます。
彼が走るのを止めたのは……コースを43周した時でした。
そしてテレビの中のランナー外1でゴールインしたのは、それから15分後……
どうしても何かを感じて仕方のない依頼人は、その夜は人に指さされる恥ずかしさをこらえながら、10メートルのひもを使ってコースの長さを測ってみたのです。
コース一周の距離は……ちょうど、1キロメートル……
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その後も彼はテレビでマラソン中継があるたび走っています。
それからもさらにタイムは縮まっていっているそうで、ますます素性が気になるところ。
とりあえず村木は男の調査を続けるのですが、どうも彼の日常に怪しいようなところはありません。
これ以上身辺を洗っても無駄だ、と結論付け、直接彼にあたってみることにしたのでした!!

「企業に依頼されてアスリートをスカウトする仕事」と称して彼に声をかける村木。
ですが彼は村木を一瞥しただけで受け取った名刺を破り捨てて立ち去ろうとします。
そこで村木はそんな仮面をも脱ぎ捨てて、さらに単刀直入に攻めることにしたのです。
ついに2時間を切ったそうだな。
そのあとに告げられた村木の言葉……その言葉を聞いた男は
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今までとは明らかに違う反応を見せて……!!
村木がたどり着いた、謎のランナーの正体とは!?
そして依頼人はなぜそこまでして彼の素性を暴こうとしていたのでしょうか!!


というわけで、もはや人探しでも、浮気調査ですらない事件を収録した今巻。
その依頼の真相を知れば、このエピソードはまさに本作ならではのものであるとわかるはず!!
依頼と言っても事件ではない、不可思議な味わいが楽しめますよ!!
このほかにも本作でなければできない依頼が盛りだくさん。
深化を続ける現代風俗の不可思議、現代にも地下深く存在しているという桃源郷の存在、リアルドールそっくりの生身の女性を探す依頼、近くにできた同業者とのちょっとした小競り合い……
相も変わらず大きな事件とは程遠い、だからこそ味わい深い様々な出来事。
それが本作でしか味わえない独特の深みを醸し出しているのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!