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今回紹介いたしますのはこちら。

「恐之本 伍 高港基資ホラー傑作選集」 高港基資先生 
少年画報社さんのSGコミックスより刊行です。

さて、待ち望まれていた第1巻の刊行以来、夏と1月ごろに新刊が刊行されるようになっている本作。
予定通り(?)今年の夏も第5巻が刊行される運びとなりました!!
今巻は10ページほどの短編から、80ページにもわたる長編まで幅広い作品を7編収録。
そんな中今回取り上げたいのは、インパクトの強い作品ぞろいの本作の中でも目を引くインパクトを持つ「捨てられていたもの」。
恐怖におびえる男が語る、その恐ろしい話とは……?


とあるマンションの管理人から、派出所に通報が入りました。
まんしょんの一室から、ものすごい異臭が発生している。
しかもその部屋の住人、何か月も部屋から出ていないとのこと……
事件の可能性も匂ってきたわけで、警察も無視することはできず、管理人ととともに部屋に立ち入ることにしたのでした。

玄関の扉を開けてみると、想像を絶する臭気が二人に襲い掛かりました!
部屋の端には、体育座りをした男がこちらを見つめています。
死見渡すと部屋にはごみが散乱していて……
イカれているのか?そんな印象を受けるのも無理はないその状況。
管理人は匂いは浴場が原因のようだと警察官を促しました。
そんな会話を聞いて、うめき声をあげる男。
まさか本当に、と浴室を開ける警察官ですが、そこにあったのは……
腐りきった生ごみとそこからしみだした液体によっていっぱいになった浴槽だったのでした!!

これは警察の範疇というよりも、医者の領分かもしれない。
そう管理人に言い残して、とりあえず署に連行をすることにした警察官。
男は何やらぶつぶつと言いながらも、おとなしくパトカーに乗り込む男ですが……突如、絶叫してパトカーを駆け下り逃げ出してしまうではないですか!!
その直前に男が見ていたのは、どうやらゴミ捨て場だったようですが……?

改めて拘束し、派出所で事情を聴いてみたところ、なんでも男は「ゴミ袋が怖い」んだとか。
普通に考えればありえないと言っていい話ですが、男はひと月ほど前にこんな体験をした、と奇妙な話を始まるのでした。

その日男はバイトの都合で朝5時に家を出ました。
可燃ごみの日だったのでゴミ捨て場に行くと、マンションの向かいに住む奥さんが男の顔を見るなりぎょっとした形相を浮かべ、そそくさとその場を去って行ってしまったのです。
その時は何も違和感を感じなかった男ですが……奥さんが捨てたと思しきたった一つだけ置いてあった真っ黒なゴミ袋が……ごそりと動いたのです!
予想外の出来事に目をむく男でしたが、その上にどかどかとゴミ袋が置かれてしまいました。
男の隣に住んでいる男性が、たまりにたまったごみを一気に捨てたのです。
しかもその男性はまだ部屋に10袋以上ゴミがあるとのことで、隣の良美で手伝ってよと言いはじめまして。
バイトがありますし、何よりそんな面倒なのは願い下げ。
動いたゴミ袋は気になりましたが、体よく断って職場に向かったのでした。

すべてを知ったのは、バイトから帰ってきた時でした。
警察に連れられて行く向かいの奥さん。
そこに、隣の男性がやってきて教えてくれたのです。
向かいの奥さんが、自分の小学3年生の息子とを殺し、ゴミ袋に入れて捨てた、と!
ということは、朝見たあのゴミ袋は……!!

あの時行ってしまわなければよかった、と後悔してもどうにもなりません。
ですがその日から、奇妙なことが起こり始めたのですから後悔もしたくなるというもの……
始まりは、バイトの帰り道の階段でした。
上から、ゴロゴロと中身の入っているゴミ袋が転がってきたのです。
しかも一段降りるたびに、ぐちゃ、ぐちゃ、と気味の悪い音を立てて……
気のせいに決まっている、あの朝ゴミ袋が動いたように見えたのも気のせいに決まっている。
そう自分に言い聞かせて日常を過ごしていたのですが、一週間ほどたったある日に決定的なことが起こってしまったのです。
浴室で髪の毛を洗っていたところ、鼻に着く生ごみのようなにおいを感じました。
そして、後ろから感じる何かの気配。
何かに触れられたかのような感覚を感じ、振り返るとそこには何もいなかったのですが……
バスタブのお湯の中から、突如大きなゴミ袋が浮かび上がってきたのです!!
慌てて逃げ出して後ろを振り返ると、そこには何もなくなっていたのです。

それから男は、ゴミ袋を避けるようになっていきます。
なるべくゴミ袋と接しないようにしていた男、ゴミ爪もゴミの日の当日の朝するようにしていたのですが……
ゴミ詰めをしようとからのゴミ袋を開くと、その中から
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男の子がこちらを見つめていて……!!
さらにそのあと、決定的なことが起きてしまいました。
バイト先で期限切れの食品を大量にもらって帰ってきた日のこと。
自分の部屋に入る扉がある廊下の端に、ゴミ袋があるのを見つけた男、慌てて自分の部屋の鍵を開けました。
玄関の扉を開けて部屋に入るその直前には、ゴミ袋はがさがさと音を立てながら間近なところまで迫ってきていて……!!
慌てて扉を閉めて一息つく男ですが、背後の扉をどんどんとたたく音が響き始めました。
のぞき窓から様子をうかがうと……
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真っ黒なゴミ袋が、立ち上がって、どんどんと扉をたたいているではありませんか!!
恐怖のあまり、男は電気をつけっぱなしにしてテレビを大音響で写し、夜を明かすことに。
やがて余もあけ、朝日が差し始めたところで安心して外に出ようとした男。
のぞき窓を覗いても何もいません。
助かったと玄関を開けると……外は真っ暗。
テレビも砂嵐で、部屋のなかまで暗闇……!!
理解できず呆然としていた男ですが……その時。
玄関の扉の陰から
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顔面がぐしゃぐしゃになった少年が現れて……!!
それから男は、外に出ることができなくなったのでした……

ひとしきり話したことで男はすっきりしたのかもしてません。
もうどうでもいい、と肩を落としながらも、お騒がせしましたと言って派出所を去っていきました。
ちゃんと医者に診てもらったほうがいい、と警察官は男を見送るのですが……そこで見てしまったのです。
彼の話が嘘ではない、恐ろしい証拠を……!!


というわけで、ゴミ袋にまつわる恐怖を描いたエピソードを収録した本作。
この他に収録されている作品も、言うまでもなく恐ろしすぎるものばかり!!
理不尽すぎる恐怖が降りかかる長編「千人針」。
こっくりさんによってもたらされる怪奇、「狐狗狸さん」。
非道な行いをさんざんした男が飲酒運転の末起こした事故、その結果入院した男にやってくる因果、「生まれ変わる日」。
生まれつき「見える」少女が体験した不幸、「天井のおばあさん」。
動物実験を繰り返す製薬会社に対し、動物愛護団体の人物が行う恐ろしい報復「荷物が届く」。
ペットの霊が呼べるという触れ込みで金を稼ぐ男に、少年が依頼をする「猫ヶ原」。
それぞれがそれぞれの読み味を持つ、心霊、人間、どちらもが見せつけてくる悍ましき恐怖が堪能できるのです!!
その高い画力から描かれる恐ろしさは、単巻だったはずの単行本が第5巻を数える事実が証明済み。
油断すれば……いや、油断せずとも牙をむき恐怖の連続に震えて眠るしかありませんよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!