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今回紹介いたしますのはこちら。

「怪談 KWAIDAN」 原作・小泉八雲先生 
集英社さんのホームコミックスより刊行です。

さて、本作はもはや説明するまでもない名作古典、小泉八雲先生の「怪談」をコミック化したものです。
なんでも14年は小泉八雲先生没後110周年とのことで、没後の記念というのもなんだか変な感じですがとにかくそれを記念して出版されました。
本作に収録されているのは11編、それを3人の漫画家さんが漫画化しております。
ザ・女性誌!といった感じの絵柄をしておられ、「ミステリーブラン」にて「音無荘奇譚」シリーズを不定期連載されている桟敷美和先生、レディースコミックを主戦場としながらも、名作文学の漫画化や雑誌向けのゴシップ漫画的なものまではば広く手掛けている富沢みどり先生、そして80年前後に巻き起こったロリコン漫画ブームの立役者の一人とも言え、近年は伝記的な作品を描いていらっしゃる谷口敬先生。
3先生が描かれているのは、メジャーだったりそうでもなかったり様々な作品が収録されてはいますが、古典の名作ということもありまして、どの作品も怪談系がお好きな方ならば大体聞いたことがあるお話です。
そんな中今回は短いながらもインパクト抜群な一編、「はかりごと」を紹介したいと思います!


咎人が、今まさに斬首されようとしていました。
ですがその咎人は言います。
自分の咎はわざとやったことではない。
もとはと言えば自分が大馬鹿だったからやってしまったものだ。
だが、馬鹿だからと言って自分を殺すなんてとんでもない無法。
こんなひどい手討、きっと報いがある。
自分を殺せば、自分はしっかりと仕返しして見せる。
恨みを買うようなことをすれば、仕返しされるのも当たり前なんだから……

人はだれでも、深い恨みを抱いたまま殺されればその怨念によって、手を下したものに恨みを晴らすことができる。
当時はそんなことが信じられていました。
……いや、今でもそうかもしれません。
ですが当時だからこそ、その言葉の重みは今よりも何倍も重いものとなっていまして。
斬首を行う男もまた、心得ていると肯くのです。
落命ののちはわれらをたたって存分に恨みを晴らすがいい。
しかしそんな言葉を言い終わった直後、男はこんな言葉をつづけるのです。
だが、咎人の言い分が本当だと信じ切ることはできない。
もし本当に深い恨みがあるというのなら、証拠を見せてみてくれ。
……首を落とされた後に!
そんな無茶な命令を下す男。
ですが咎人は視線を一つも外すことなく、やらないわけがない、と言い切るのでした。

男が要求する証明とは、こんなものでした。
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首を落とされた後、目の前に置いてある庭石にかじりついて見ろ。
確かに、首を落とされ、確実に死んだ者が自分で動き、庭石にかじりついたとすれば……その怨念は本物、と家中の者は皆震え上がることでしょう。
普通に考えればそんなことはあり得ません。
ですが、もし本当に首が動き、石にかじりついて見せようものならば、恐れている祟りが現実のものとなる証明になってしまうわけで……
かぶりついて見せるわ、と不敵に笑う咎人。
直後、男の刀は振り下ろされ……咎人の首は、ごろりと地面に転がり、その体は力なく崩れ落ちるのです。
そして地面に落ちた首はゴロゴロと転がり……
一同がかたずをのんで見守る中、咎人の首は石の近くまで転がって
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飛び上がり、かぶりついたのです!!
その形相は鬼気迫るもので、家中の者は青ざめて言葉を失うほかなかったのです……
祟られる、とぼそりと声を上げたものもいました。
ですが、党の首をはねた男は顔色一つ変えず、刀に着いた血液を洗い流すよう指示。
刀をぬぐい、何事もなかったかのようにふるまうのですが……?

数か月後。
家中にふりまかれた怯えの種は徐々に芽をだし、とうとう蔓延を始めました。
そこで家中の者が何人かあつまり、風音や物の陰にまでおびえるものが出ており、この状況を収めるために施餓鬼供養をしてはどうか、と手を下した男……主君に提言をしました。
ですがそれを主君はそんな家臣たちの言葉を「無駄なことだ」と切り捨てたのです!!
祟りがあるとおびえて暮らす家中の者、そしてひょっとすれば本当に降りかかってくるかもしれない祟り……
その恐れの中心にいるはずの彼が、こうまで平然としていられるその理由とは!?


というわけで、古典名作を漫画化している本作。
比較的マイナーなこの「はかりごと」をはじめとしまして、妖怪の住処に偶然宿を求めてしまった僧のお話「ろくろ首」、オシドリの夫婦を狩った狩人に襲い掛かった恐怖「おしどり」、木陰で休んだ男に起きた奇妙な出来事「安芸之介の夢」といったマイナー作品も多数。
もちろんメジャーな作品も取り揃えております。
タイトルではピンと来ないかもしれないものの、「それはこんな顔かい?」のお話とくればみなさんきっとピンとくる「むじな」、今に至るまでその妖怪のイメージを決定づけている「雪おんな」、そして小泉八雲の代名詞と言っても過言ではない名作中の名作「耳なし芳一のはなし」などなど盛りだくさん!
ガチンコのホラーは苦手だという方でも、和風ホラーの原点ともいえるスタンダードなこのお話は楽しめること間違いなし!
十二分にこのお話を知っている方でも、漫画になったことでまた新鮮に楽しめますよ!!
とにかく怖い、恐ろしい……というだけではない、原点ならではの味わい深い恐怖を堪能しましょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!