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今回紹介いたしますのはこちら。

「ライオンの首 呪みちる作品集 1996-2012」 呪みちる先生 
トラッシュ・アップさんより刊行です。

さて、本作は知る人ぞ知るホラー漫画化の名手、呪みちる先生の単行本未収録作品を集めた一冊です。
漫画をけっこう読んでいても、その名前すら聞いたことのないという方は意外と多いでしょう。
ですがネット界隈で話題になった「おじさんコーラ」「Zコーラ」と呼ばれる「黒い清涼飲料水」の作者の方だといえば思い当たる方もいるのではないでしょうか!?

前単行本から7年の時を経て発売された本作は、現在の名義で活躍を始める以前の96年から、本作の発売された前年である12年の作品まで、実に15年以上の範囲を網羅しております。
全24編、カバー下本体や口絵まで、440P超の大ボリュームで送られる本作の中から、今回は本巻の口火を切る「千年百足」を紹介したいと思います!


人気のない森深い山奥。
そこで一人の女子高生が死んでいました。
それはよし子の姉、雪子です。
やっぱり死んでいたのね。
こんな山奥で誰も知られず……
よし子が嘆いていると、そこに爛々と巨大な目を光らせた何かが這い寄ってきて……!

よし子はそこで目を覚ましました。
夢か、と隣に寝ている雪子のほうに視線を移すと、そこで眠っているはずの雪子が見るも悍ましい怪物に変わっていて……!!
思わず悲鳴を上げてしまうよし子。
それを聞きつけて両親が二人の寝室に駆けつけましたが……雪子の姿は普通の少女のまま。
夢だよ、と両親になだめられたよし子ですが、その胸にはしこりが残ったまま。
怪物でこそありませんが、雪子が「変」なのは確かなのですから。

雪子は高校に入ってから家出を繰り返していました。
今回も2か月も留守にしていたところ、3日前にひょっこりと帰ってきたのです。
行方不明だった姉の機関に両親は大喜びでしたが、何故かよし子が感じたのは嫌な胸騒ぎ。
その胸騒ぎを裏付けるかのように、姉は奇妙な行動を繰り返すようになるのです。
シャワーを浴びれば、地獄の亡者のような奇怪な声で喜びの声を上げ、体からは大量の泥が流れ落ちる。
食事をすれば、肉を手でちぎっては団子状にこね廻し、それを手づかみで食べる。
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……よし子は、姉が何か得体のしれない化け物に変わってしまったような恐ろしい違和感を感じてならないのです。

そんなある日のこと。
よし子の家に僧侶が尋ねてきました。
僧侶はよし子に突然こんなことを言い出します。
最近山から帰った方がおられますな?
その方には、「千年百足」が取りついているようですぞ、と。
山奥で千年生きた百足が変化する妖怪だというそれは、200年前に一度退治され封印されていたはずが、その封印のカナメであった矢じりが抜け落ちてよみがえってしまったらしいとのこと。
200年ぶりに体を洗えばさぞかし大量の汚れが落ち、気持ちのよさに喜ぶでしょうし、百足は死肉をダンゴにして食う習性がある。
間違いなく雪子は千年百足にとってかわられてしまっている……
姉の正体に驚愕したよし子、前年百足に矢じりを打ち込んで退治する、という提案に協力します。
と言ってもすることは、夜寝るときにほんの少し窓を開けておくだけ。
あとは僧侶がうまくやってくれるとのことですが……

夜。
雪子は何かに誘われるようにして外に出ていきました。
誘われた先には、ナメクジやらカエルやら蛇やらをぐつぐつと煮込んだ鍋が置かれていました。
雪子は本性をむき出しにしてそれに食らいつきます!!
が、それこそが僧侶の秘策。
中にはしびれ薬が入っていまして、雪子は苦しみだし……
僧侶は矢じりを手に、戦いを挑むのでした。

しばらくして、誰かが入ってきた気配を感じるよし子。
ですが帰ってきたのは僧侶ではなく、雪子……!!
恐怖に震えながら翌朝を迎えると、テレビではあの僧侶が野犬か何かに食い殺されたらしいというニュースが報道されています。
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失敗したんだ。
体中から吹き出す脂汗……
姉の顔には矢じりを受けたものなのか、片目が隠れるほどの大きな物貰いのような傷が残っています。
これでおそらく雪子は、自分がバケモノであることがばれたことを知ったでしょう。
となれば、自分たちに牙が向けられるのはもう間近でしょう……!!
おびえるよし子ですが、そこに雪子の担任であった島先生が尋ねてきます。
問題の多かった雪子に懇意にしてくれ、熱心に指導してくれた彼が、記憶喪失のようになっている雪子のために知人のカウンセラーを紹介してあげようとやってきてくれたのでした。
この先生なら、姉のことを信じてくれるかもしれない。
先生に聞いてほしいことがあるんです、実は姉のことで……と、言いかけたその時、島先生の顔色が変わります。
後ろを振り返ると、そこにはいつの間にか出かける準備を済ませた雪子の姿が……!
その不気味なたたずまいに戸惑うよし子と島先生。
島先生はすぐ気を取り直し、雪子に行こうと促すのでした。
雪子と目を合わせないように、顔を伏せてやり過ごすよし子。
ですがすれ違うその瞬間に、以前のような姉の声が聞こえたのではないですか!
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さよなら、よし子。
……一瞬耳を疑ったよし子。
千年百足となったはずの姉が、なぜそんな普通のことを……それも突然、別れの言葉を告げたのでしょうか?
その真相は……!!


というわけで、昭和の匂い漂う、古き良きホラー作品で幕を開ける本作。
こういったスタンダードないわゆる怪奇漫画から、滑稽さも兼ね備えたホラー、悪趣味(褒め言葉です!)極まりない話、どこまでもくだらないギャグ調のホラー、読後感さわやかなものから最悪なものまで各種とりそろっております!!
440Pの大ボリューム、余すことなく詰め込まれた叫びと嘆きと、血と臓物。
ホラー漫画好きの身ならずとも。スタンダードなドラマ運びで安心して怖がれるお話から、ゾッとするどんでん返しが待つ話、思いもよらぬ展開を迎える物語まで様々なホラーの形が収められている本作は楽しめること間違いなし!!
グロや、ホラーと切っても切れない関係にあるエロス描写が苦手でなければ満足違いなしですよ!!
その直球変化球織り交ぜた様々なホラーを描くというストーリーテリング能力のみならず、丁寧に描き込まれた画の魅力も外せないところ。
女性は美しく、アレな男性はアレな感じたっぷりに、怪物はとことん気味悪く。
呪先生の世界により一層没入できる、絵力も必見ですよ!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!