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今回紹介いたしますのはこちら。

「人造人間の怪 呪みちる初期傑作選1」 呪みちる先生 
トラッシュ・アップさんより刊行です。

さて、本作は呪みちる先生の98年~03年に発表された作品を集めた短編集です。
この単行本、01年に発行された2冊の短編集、「青空の悪魔円盤」「押入れのウーリー」に収録された作品ををメインに、単行本初収録作品を加えて数冊に分けて発行する予定の1冊目。
そのもととなった短編集の表題作を2本とも収録し、インパクト十分の内容となっている本作ですが、今回はその中でもとりわけ奇妙な読後感が楽しめる「集合時間は午前二時」を紹介したいと思います!



闇夜に自転車を走らせる少女、よし子。
今日から3泊4日の臨海学校に出かけることになっていまして、以前からとても楽しみにしていた……はずでした。
ですがなぜだか、家を出てから彼女を嫌な胸騒ぎが襲い続けるのです。
その胸騒ぎを抑えながら夜道をはしていたよし子ですが、行く手に何かがあることに気が付きました。
ゆらりと揺れるその何か……
自転車のライトに映し出されたそれは、
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全身が焼けただれたような赤子がこちらに手を伸ばし姿だったのです!!
思わず急ブレーキを踏み転倒してしまうよし子。
その赤子はもうすでに姿を消していたのですが、彼女の胸騒ぎは強くなるばかり。
そんなところに、金髪の少女が自転車でやってきました。
同じクラスのエーブさん。
よし子は彼女に助け起こされます。
ですがよし子の心には安堵の気持ちは湧いてこないのです。
先ほどの赤子の亡霊だけではありません。
ここに来る途中、街の中を通ったにもかかわらず、人っ子一人、車一台すれ違いませんでした。
24時間明るいはずのコンビニもまっくらで……ぬぐいきれない違和感を感じてしまうのです。
エーブは気のせいだ、いつもと同じだとよし子をなだめます。
ですがよし子は絶対に今夜はおかしい、キャンプなんていかない、帰ると言い張るのです。
が、そこに他の仲間たちも通りがかってみんなでよし子を励ましてくれたのです。
男子はよし子の自転車の故障を確かめてくれ、女子たちはよし子に肩を貸してくれます。
結局自転車は治らなかったものの、エーブが自転車の後ろに乗せてくれ、荷物は他の人が運んでくれることに。
みんななんてやさしくていい人なのだろう。
クラスの仲間たちと一緒にいると心が温かくなる、まるで生まれる前からの親友のようだ。
仲間たちのやさしさに安らぎを感じながら、集合場所についたよし子。
ですがここで、臨海学校へ行くというのに水着を忘れてしまったことに気が付きました。
とってこなくてはと慌てふためくよし子ですが、クラスメイト達はもう遅い、間に合わなくなる、出発だとよし子を引き留めます。
上を見上げてみると……空には月の光を受けて輝く、巨大な飛行船が浮かんでいるのに気が付きます。
美しいでしょう、私たちはあれに乗っていくのよ。
そう静かに語るエーブ。
バスで行くのだと思っていたよし子ですが、バスなんかで行けるところではないというエーブの声を聞き、よし子はそういえばそうだった気がする、と思い直します。
臨海学校なんかじゃない、私はこれに乗ってもっともっといいところへ行くんじゃないか。
クラスメイト達にならって、タラップを登り始めるよし子。
ですがその直後のことです。
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いくな!
そんな声とともに、あのただれた赤子の亡霊がしがみついてきたのです!!
叫び声を上げる間もなくその亡霊は続けます。
乗ってはいけない、周りをよく見ろ、これはあやかしだ!!
ハッとして振り向くと、そこにはエーブがいて、あとが使えてるわよと囁いてきます。
エーブ……エーブって……だれ?
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そう気が付いた瞬間、エーブの顔は醜い化け物のようであったことにも気が付きます!
化け物!!
そう叫んだ瞬間、エーブやクラスメイト達は「くそったれ」「もう少しだったのに」と口ぐちに吐き捨て、悍ましい姿に変貌。
そしてこれまた奇怪な本性を現した飛行船に吸い込まれ、そのまま姿を消したのでした……

気が付くとよし子は飛行船もエーブも何もない原っぱに立っていました。
あれは何だったのか?
死神?幽霊?あやかし……?
そんなものがこの世にいるわけがない、夢遊病か何かで夢を見ながら自転車であそこへ行ったんだ、夢の中のことだったんだ。
そう自分に言い聞かせながら家に帰るころには、すっかり朝になっていました。
ですがそれをそのまま親に伝えても、信じてくれるはずもありません。
黙って一晩家をあけるなんて、どれだけ心配したと思ってるんだ、どこへ泊ったのかやましいことがないなら言えるだろう、とものすごい勢いで怒鳴りつけられるのです。
……信じてもらえるわけがない、そう思いながらもよし子はやむなく、両親へありのままのことを伝えたのですが……
両親から帰ってきたのは……思いもよらない言葉で……!!
昨夜の夢ともうつつともつかない恐ろしい出来事。
それよりも、よし子はその両親のとった態度のほうが恐ろしくてなりません。
その言葉とは……!!


というわけで、恐怖の後に再び違った角度の恐怖腑が味わえる本作を収録した今巻。
この他にも、実に様々な恐怖が味わえる全10編の短編が収録されています。
呪先生のこの名義でのデビュー作となる「時計屋敷の少女」。
二転三転する物語から目が離せない表題作「人造人間の怪」。
有名な都市伝説に先生独自のスパイスを加えた「夢とちがう」。
少年が自分にしか見えないUFOに翻弄され、無残の運命をたどる「青空の悪魔円盤」……
「初期傑作選」という表題に恥じない、どれをとっても恐ろしく、気味悪く、時として悪趣味でエロスだったりもする、見る者を圧倒する作品ばかり!!
気味が悪い、という言葉がしっくりくる、丁寧で流麗ながら、汚く下品な独特の世界に引き込まれることでしょう!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!